ニュースのポイント
日本銀行のマイナス金利政策による低金利で、従来の銀行ビジネスが揺らいでいます。人口も減っていくなか、銀行はこれからどんな成長モデルを描いていくのか。4月1日に三井住友銀行のトップに就いた高島誠頭取(59)=写真=が朝日新聞のインタビューに答えました。銀行志望者は必読です。(編集長・木之本敬介)今日取り上げるのは、金融・経済面(16面)の「聞きたい 銀行の成長モデルは?/海外の収益強化に活路/三井住友銀行頭取・高島誠氏」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
マイナス金利政策については何度も書いてきましたが、簡単に説明します。私たちが銀行に預金すると金利がつくように、民間銀行は「銀行の銀行」である日銀にお金を預けています。ここでも金利がつきますが、2016年2月から日銀は新規預け入れの一部に「0.1%」のマイナス金利を適用しました。つまり、日銀に預けると銀行は損をする仕組みです。日銀が描いたのは「マイナス金利導入→銀行は日銀に預けずに企業や個人への貸し出しや投資を増やす→企業の設備投資や個人の消費が増える→景気が良くなる」という好循環のシナリオです。
銀行ビジネスは、個人や法人から預金してもらったお金を貸し出して、預金金利と貸出金利の差の利ざやでもうけるのが基本です。ところが、マイナス金利に連動して銀行が企業などに貸し出す金利も下がったため、利ざやが小さくなって多くの銀行は収益が減り、経営が苦しくなってしまったのです。(マイナス金利について詳しくは、「面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ/日銀の『異次元の金融緩和』と『マイナス金利』」や「業界研究ニュース/マイナス金利に苦しむ銀行」を読んでください)。
高島氏がインタビューで「ただお金を貸して金利を頂くだけでは厳しい」と答えているのはこのためです。全国銀行協会会長の小山田隆・三菱東京UFJ銀行頭取も3日の朝日新聞の記事で「利ざやの回復や収益の反転は期待しがたい。銀行自身のビジネスモデルを見直すタイミングだ」と話しています。
どんなビジネスモデルが考えられるのでしょうか。高島氏は二つの具体例を挙げました。
①グローバル化で海外進出する企業の支援
②中小企業の事業継承の支援
です。
①の海外分野について高島氏は「アジアを中心にしつつ、欧米も強化する。これから3年間のうちに、収益の海外比率は5割を超えるだろう」と語っています。
日本の人口は減っていきますが、アジアではまだまだ人口が増え、経済成長も続きますからビジネスチャンスはたくさんあります。英国の欧州連合(EU)離脱という不確定要素がある欧州についても「政治的な懸念もあるが、大きなチャンスがある」と言い、ロンドン以外にドイツ・フランクフルトやアイルランド・ダブリンなどに新しい拠点を設けることを検討していると明かしました。
高島氏によると、中小企業のオーナーは高齢化が進んでいるのですが、後継者がいずに困っている会社が多くあります。事業の継承には専門的な知識が必要なため、ここに銀行のビジネスチャンスがあるわけです。そこで高島氏は、証券、信託などのグループ会社と連携して、不動産や相続など多面的な提案ができる枠組みを整えて、中小企業のニーズに対応すると言います。
国外に活路を求められるのは海外支店も多い三井住友銀のようなメガバンクだけでしょうが、中小企業支援の事業は地方銀行の得意分野でもあります。地銀を志望する人は、中小企業支援のビジネスモデルについて考えてみましょう。
インタビューの後半で高島氏は、働き方と社風について語っています。企業トップのインタビュー記事からは、事業の方向性のほか、こうした社の雰囲気や社風も感じ取れることがあります。参考にしてください。
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2024/10/11 更新
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