ニュースのポイント
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「ビットコイン 身近に? ビックカメラ一部店舗で導入へ 決済手段小売りや飲食でも 価格乱高下リスク大」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(画像は、ビックカメラでの店内表示=ビットフライヤー提供)
ビットコインは、円やドルに代わる通貨になるのでしょうか。もちろんすぐにはありえませんが、将来そうなる可能性を否定することはできません。通貨には、3つの機能があるとされています。「価値の尺度」「価値の保存」「交換の手段」です。「価値の保存」はビットコインを貯めて将来も使えると信じることができればその機能はあると言えます。「交換の手段」は今でもありますが、使える店が広がれば広がるほどその機能は高まります。「価値の尺度」の機能はまだありません。円やドルといった既存の通貨が決めた価値をその時々の交換レートでビットコインに変えていると考えられます。ただこれも、将来ビットコインのほうがたくさん流通するようになれば、ビットコインがモノの価値を決め、既存の通貨がそれに追随する格好になるかもしれません。
既存の通貨を使った機能としては、そのほかにも銀行が預金と貸し出しを繰り返すことで通貨の量を増やす「信用創造」や中央銀行が流通する通貨を増やしたり減らしたりすることで経済をコントロールする「金融政策」などもあります。今はもちろんビットコインにこうした機能はありません。ただ、ビットコインの流通量が増えれば、専用の銀行ができて預金や貸し出しを通じた「信用創造」はできるでしょう。
一方で、ビットコインを使った「金融政策」は不可能です。ビットコインは、中央銀行にあたる発行権者がいないからです。利用者たちがネットでつながり、そのつながりによって監視されて動いている仕組みです。しかも、そのつながりは世界に広がっています。日本銀行もアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)もどこもコントロールできません。
ビットコインの問題を突き詰めて考えると、国の存在する意味にまで行きつきます。通貨の発行は、国の大きな機能です。EU(ヨーロッパ連合)は国の権限を弱めて連合のまとまりを強めようとして共通通貨ユーロを発行しました。これにより、個別の国は自国の経済をコントロールすることが難しくなりました。各国が独自の通貨を発行するから、独自の経済が形成されるのです。将来、円やドルが使われなくなり、ビットコインが当たり前の時代になると、世界の共通通貨ができることになります。国境の意味はますます薄れます。もちろん、そのほうがいい世の中になるという考えもできますが、大変化であることは間違いありません。
かつて通貨は、金と交換できることで価値の裏付けがありました。「金本位制」といいます。今の通貨は金の裏付けがなくなり、国の信用によって価値が認められています。ビットコインは、金の裏付けも国の信用の裏付けもありません。それでも広がる一方なのは、ネット社会によって新しい信用の形が生まれつつあるということかもしれません。
とりとめもなく頭の体操の結果をつづりましたが、みなさんも考えてみてください。世界にビットコインという通貨しかなくなった時の社会を。新しい技術や社会の動きが出てきたときには、あまり細かいところに入り込まずに大きな枠組みで頭の体操をしたほうが、理解が進みます。試してください。
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2025/02/18 更新
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