2017年04月07日

世界が注目!米中首脳会談 国際情勢をチェックしよう

テーマ:国際

ニュースのポイント

 アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席の初めての首脳会談が、アメリカ・フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘で開かれます。世界の2大超大国の初顔合わせというだけで要注目ですが、今回は北朝鮮問題と貿易問題という切迫した具体的な問題もあり、世界が固唾(かたず)をのんで注目しています。21世紀の世界はこの2大国を中心に動くことは間違いなく、国際情勢を理解するためにもアメリカと中国の関係から目を離さないようにしましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「米中会談 首脳に温度差/トランプ氏、結果重視/習氏、外交での失点警戒」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

和やかか厳しいか

 1月にトランプ氏が大統領に就任して約80日。各国首脳との初顔合わせが行われていますが、いよいよ習主席との会談が始まります。トランプ氏は就任前、中国が国是としている「一つの中国論」に対して、台湾の主張に寄り添って疑問を呈する発言をしていました。また、中国は意図的に為替相場を操作する国だとして、「安い元を使って輸出を不公正に増やしている」という主張もしていました。トランプ大統領は主張をあっさり変える人でもありますので、会談でどんな主張をするかは不透明です。まずは、会談が和やかな雰囲気で行われるのか、厳しい雰囲気で行われるのか、そこが注目です。

開戦か非戦かを決める可能性

 具体的な問題としては、まず北朝鮮です。ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮に対して、アメリカは危険なものを感じています。トランプ大統領は「先制攻撃もありえる」という意味の発言をしています。もちろん、先制攻撃をすれば、北朝鮮が反撃することは間違いなく、そうなると韓国や日本が被害を受け、戦争に巻き込まれる恐れもあります。そんな最悪のシナリオを避けるには、中国が積極的に北朝鮮問題にかかわる必要があります。外交的に強い圧力をかけたり、経済的に強い制裁を与えたりすることで、北朝鮮に自制させるのです。トランプ大統領は習主席にこうした関与を強く求めるはずです。会談は、開戦か非戦かを決める重要なものになる可能性があります。
(図表は、2017年3月6日朝日新聞朝刊に掲載された、北朝鮮の核・ミサイルをめぐる最近の動きです)

貿易は今回だけでは解決せず

 もう一つの具体的な問題は貿易です。アメリカの貿易赤字の半分近くは中国に対する赤字です。アメリカは中国から通信機器、電気製品、繊維製品、日用雑貨などを大量に輸入しています。こうした不均衡がアメリカの労働者の仕事を奪っているというのがトランプ大統領の主張です。こうしたことから、トランプ大統領は習主席に元を高くすることやアメリカに投資することなどを求めるものとみられます。中国は、すでにアメリカに多額の投資をしていることや元を逆に高く誘導しようとしていることなどを説明するものとみられます。両社の主張はすれ違っており、この会談だけで解決するとは思えません。

きな臭さが漂う

 トランプ大統領は、就任以来たくさんの話題は提供していますが、実績はあまり上げていません。支持率は、就任当初から同時期の歴代大統領に比べて低く、現在はさらに下がっています。こうした時期の米中会談ですので、トランプ大統領は得点を挙げたいと思っているはずです。中国にアメリカの要望をのませようと懸命になるでしょう。ただ、中国が期待されるような返事をしない場合、次の行動が必要になります。戦争によって支持率を上げようという誘惑にかられることもあり得ます。その場合、標的としては、化学兵器の使用が強く疑われているシリアのアサド政権と北朝鮮が考えられます。ここまで書いたところで、シリアの空軍基地などにアメリカがミサイル50発を撃ち込んだというニュース速報が飛び込んできました。そんなきな臭さが会談前から漂い始めています。


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