ニュースのポイント
米国でドナルド・トランプ大統領が就任したことについて、政権批判映画で有名な米国の映画監督オリバー・ストーンさん(写真)が、朝日新聞のインタビューで「あながち悪くない」と語りました。ヒラリー・クリントン氏が当選するよりも米国による他国への介入主義が弱まり大きな戦争が起きる可能性は低くなったと言い、期待を込めて「プラスの変化を起こせるよう応援しよう」も述べました。トランプ氏の過激な言動に対しては否定的な見方が強いなか、意外な評価です。世の中にはいろいろな意見があります。多様な見方を知って視野を広げてください。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、オピニオン面(15面)の「インタビュー・トランプ政権への期待/映画監督オリバー・ストーンさん/介入主義を捨て戦争への道避ける プラスの変化応援/堕落しきった米国の情報機関 本質を知る必要」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
オリバー・ストーン監督って?
ストーン監督は、ベトナム戦争を描いた1986年公開の「プラトーン」、1989年の「7月4日に生まれて」の両作品でアカデミー監督賞を受賞した有名な監督です。その他の代表作に「ウォール街」(1987年)、「JFK」(1991年)などがあります。自身がベトナム戦争の帰還兵で、米国による原爆投下や戦争に批判的な作品が多い社会派監督として知られ、米政府を批判する発言も繰り返してきました。
多くの著名人が「反トランプ」
みなさん知ってのとおり、トランプ大統領は選挙中から過激で差別的、対立をあおるような発言を繰り返してきました。大統領に就任した今も、米国の各地で「反トランプ」デモ(写真)が行われる異例の事態で、多くの米ハリウッドの著名俳優や歌手が「反トランプ」を公言しています。米国の世論調査で、就任直前の支持率が40%と歴史的に低いことも報じられています。
ストーン氏もかつてはトランプ氏に厳しい発言をし、選挙結果についてもショックだったと米国のメディアに語っていました。それだけに、トランプ氏に期待する今日のインタビューには少し驚かされました。
監督のトランプ氏への期待は?
インタビュー記事から、ストーン監督のトランプ大統領に期待する発言の要旨をまとめます。
◆ヒラリー・クリントン氏は米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよいと信じていると思う。ロシアを敵視して攻撃的でもある。彼女が大統領になっていたら世界中で戦争や爆撃が増え、軍事費の浪費に陥っていただろう。第3次大戦の可能性さえあった。
◆トランプ氏は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げており、他国の悪をやっつけに行こうなどと言わない。
◆トランプ政権が他国から米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させるならすばらしい。これまで米国は自国経済に対処せず多くが貧困層に。自国民を大事にしていない。
◆トランプ氏はビジネスマン。貿易を好む限り、ビジネスマンは戦争をよしとしない。
(写真は、大統領就任演説をするトランプ氏)
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オバマ前大統領(写真)は「核なき世界」で核廃絶の理想主義を掲げてきました。これに対し、トランプ氏は日本や韓国に核武装を促すような発言をし、「世界の核に関する良識が戻るまで、米国は核能力を大いに強化・拡大する必要がある」とツイッターでつぶやきました。オバマ氏の
国際協調主義に対し、トランプ氏は「米国第一」の
孤立主義を強調し、オバマ氏とは正反対の路線に見えます。やや「好戦的」なイメージすらありました。
ですから、オバマ氏と近いクリントン氏が大統領になっていたほうが戦争の危険が高かったのでは、というストーン氏の主張はちょっと意外な内容でした。これからトランプ氏が、現実の政策でストーン氏の期待に応えるような政策を打ち出すかどうかはまだわかりません。でも意外だっただけに、ストーン氏の発言はこれまで私が気づかなかった新たな視点を与えてくれました。「へー、なるほど、こういう見方もあるんだ」という感じですね。知っただけで得した気分です。
朝日新聞のオピニオン面には日々、様々な立場の専門家、識者の意見が載ります。そこには、みなさんが物事を考えるときの材料やヒントがたくさん詰まっています。その意見に賛成でも反対でも構いません。多様な意見に接して、自分はどう考えるのか、ひとごとではなく自分に身近な問題として考える習慣をつけてください。これからの面接ではどんなテーマについて聞かれるかわかりません。その訓練、準備にもなりますよ。
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