2016年10月21日

結果が見えてきた米大統領選、今後の展開は?

テーマ:国際

ニュースのポイント

 アメリカのトップを決める大統領選で、候補者テレビ討論会の最終回がありました。劣勢に立つ共和党のトランプ氏(70)が民主党のクリントン前国務長官(68)を攻めましたが、決定打に欠け、起死回生につながりませんでした。

 CNNテレビが討論会直後に行った世論調査では、クリントン氏が討論会で勝ったと見る人は52%で、トランプ氏は39%。ニューヨーク・タイムズがまとめた調査では、クリントン氏が勝つ確率は92%となっています。どうやら、米大統領にはクリントン氏が選ばれそうな情勢になってきました。
(朝日新聞社教育コーディネーター 一色清)

 今日取り上げるのは、1面の「クリントン氏、最終版優勢 討論会終了 トランプ氏、攻撃不発」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。


(写真は、討論会を見る会で、画面に出るクリントン氏にブーイングするトランプ氏の支持者の様子です)

有力メディアのトランプ不支持が影響

 ここにきて、クリントン氏の優勢がはっきりしてきたのは、女性問題などトランプ氏の人間性に関わるスキャンダルが明るみに出てきたことが大きそうです。

 背景には、アメリカの有力メディアなどが、トランプ氏がリーダーになるのを危ういと見て、不支持に回っていることがあります。トランプ氏の女性蔑視を感じさせる会話の音声が公になって広がったり、「セクハラを受けた」という女性たちが名乗り出たりしているのも、トランプ大統領を阻止したい人々やメディアの思いが背景にあるはずです。

トランプ氏躍進の背景

 逆にいえば、メディアなどが危機感を強めるほどトランプ氏が大統領のいすに近づいたことこそ、現在のアメリカが抱えている問題を浮き彫りにしています。

 トランプ氏の支持基盤の中心は、白人の男性労働者です。多くの人が分析していますが、白人男性の労働者と言えば、少し前までアメリカ社会の中核でした。彼らのために政治が回っているという感じもありました。

 しかし、時代は多様性(ダイバーシティ)を認める方向に進んでいます。黒人、ヒスパニック、女性、性的少数者などの権利が強まり、白人男性からすれば逆差別的な感情が生まれています。トランプ氏の「メキシコに壁をつくらせる」とか「日本、韓国、ドイツは自分で国を守れ」などの発言が彼らの被害者意識に響いているようです。

若者も格差にうっくつ

 アメリカが抱えている問題は、白人男性労働者だけではありません。たとえば、若者もうっくつした思いを抱いています。

 アメリカの大学は学費が高いことで有名で、社会に出るまでに日本円で1000万円近い借金を抱える人も珍しくありません。ウォール街でお金を右から左に流している人が、億万長者になり、多くの若者や労働者の何百倍もの収入を得るという理不尽がまかりとおっています。

 「金持ちの子が金持ちになる社会」は、アメリカンドリームの否定です。民主党の候補者選びでクリントン氏に迫ったサンダース氏は、こうした格差社会に怒る若者たちの支持を集めました。

 4年前の大統領選では「ティーパーティー」と呼ばれる、自己責任を主張する集団が注目を集めました。今回は影が薄いのですが、アメリカの現状への不満がたまっている点では、白人男性労働者や格差に怒る若者と根は同じだと思います。

4年後に問題噴出か?

 クリントン氏が当選すれば、世界はどうなるのでしょうか。クリントン氏は、オバマ大統領の路線から大きく外れることはなさそうです。アメリカ社会は比較的安定するのではないかと思われますが、それはアメリカが抱える問題が肥大化していくことを示します。

 クリントン氏は高齢でもありますので、問題は4年後の大統領選で噴出し、大きな転機になるかもしれません。世界の動向の中でアメリカの動向は最も大事です。グローバル化は好むと好まざるとに関わらず、進みます。就活生はこの大統領選を大きな関心を持って見ておきましょう。



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