ニュースのポイント
結婚したら夫婦は同じ姓になるという民法750条の規定は、「男女の平等」や「個人の尊厳」を定めた憲法に違反しない、という判断が最高裁で出されました。結婚するとき、どちらの姓を選ぶかは当事者に委ねられており、性差別には当たらないという判断です。
日本では、夫婦の96%が夫の姓を名乗っています。私は「4%」の少数派。結婚するとき、「姓は変えたくない」という私の気持ちを夫が尊重してくれ、事実婚になると子どもが不利益を受けることもあり、夫が私の姓になりました。その話を周囲にすると、「そんなに名門なの?」(まさか!)「一人娘なの?」(次女です)「じゃ、なんで?」と突っ込まれます。そんなとき、妻が夫の姓にすることは「当たり前」、夫が妻の姓にするのは、よほどの事情がある「特別」なこととみられているのだなあ、と痛感します。仕事では通称を使用している夫は、海外出張でパスポートを使うときなどに戸籍名との違いに不便さも感じながらも、「自分たちで選択した(決めた)ことだから」と納得しているようです。(副編集長・奥村 晶)
今日取り上げるのは、1面の「夫婦同姓規定 合憲/最高裁『社会に定着』/選択的別姓 国会論議促す」です。2面(総合面)の「時々刻々/同姓規定 15人中5人『違憲』」、14面「社説」、15面「耕論」、39面(社会面)の「『結婚後の姓』思い悩む若者」や、「合憲『悔し涙あふれた』」なども関連記事です。
記事の内容は――「夫婦は同姓」「女性は離婚して6カ月間は再婚禁止」とする民法の規定が憲法に違反しないかについて、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)が初の憲法判断を示した。いずれも国への賠償請求は退けたが、夫婦同姓については「合憲」、再婚禁止規定については100日を超える期間の部分を「違憲」とした。夫婦同姓の制度について判決は「社会に定着しており、家族の姓を一つに定めることには合理性がある」とした。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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みなさんは最高裁の大法廷と小法廷の違いがわかりますか? 日本は三審制で、裁判において確定までに上訴することができる裁判所が2階層あり、裁判の当事者が希望する場合、合計3回までの審理を受けることができます。一般的に地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所と上がっていきますので、「最高裁」はしばしば「司法の最後のとりで」などと言われます。通常は裁判官が5人の「小法廷」で判断されますが、今回の2つの裁判については長官を含む裁判官15人で審理する「大法廷」に回されました。
大法廷に回す、司法用語では「大法廷回付」といいますが、これは初めての憲法判断や判例の変更を行う場合に行われます。つまり、大法廷=社会にとって大きな影響を与える可能性の高い重要な裁判だと覚えておくといいでしょう。
大法廷の15人の裁判官のうち、現在、女性は3人、残りは男性です。女性裁判官は全員、夫婦の96%が夫の姓を名乗るという不平等が起きている現実を踏まえ、「夫婦が別の氏を称することを認めない点で合理性を欠く」と指摘し、「違憲」と判断しました。男性裁判官のうち2人も「違憲」、残り10人の男性裁判官が「合憲」としました。多数意見では「通称使用で不都合が一定緩和されている」と合理性を認めています。
原告側の弁護団長は「(大法廷の裁判官15人のうち)女性裁判官3人は全員、違憲と判断した。性差別を問う裁判では、最高裁の女性裁判官が3割にも満たないようなこの状況が、残念な結果を生み出したと思う」とも話しています。
こういった人それぞれ意見の分かれるテーマは、グループディスカッション(GD)などの「お題」になりやすいです。企業の採用担当者によると、GDで評価が低い学生は「全く発言しない学生」と「安易に多数決をとろうとする学生」なんだそうです。意見が分かれたときほど、議論を尽くし、少数派の意見をいかに採り入れていくか、そのコミュニケーション能力、調整力を担当者は見ています。
「発言する」ために、まず自分はどう思うのかを論理的に組み立てて人に説明する練習をしておきましょう。そして、違う意見の人に対し、どう歩み寄り、結論を見いだしていくか。一面で大きく扱われるようなニュースの場合、新聞の中に判断材料がいくつも登場します。中でも15面(オピニオン面)の「耕論」は、他者のさまざまな意見に触れられる良い機会となります。ぜひプロテニス選手のクルム伊達公子さん、元最高裁判事の泉徳治さん、中央大学教授の山田昌弘さんの意見を読んでみてほしいと思います。
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