ニュースのポイント
消費税の「軽減税率(けいげんぜいりつ)」の話し合いが決着しました。2017年4月に消費税率を10%に引き上げる際、食べものと、お酒を除く飲みものの税率を今のまま8%に据え置きます。私たち消費者にとって日々の暮らしに関わる身近な仕組みですが、就活生のみなさんは、さまざまな業界への影響も考えるようにしましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「軽減税率 線引き決着/出前・持ち帰り 8%適用/店内飲食は原則外食 10%」です。総合面(2、3、4、7面)、オピニオン面(14面)、社会面(37面)にも関連記事があります。
記事の内容は――自民、公明両党は15日、軽減税率の対象になる「酒類をのぞく食品全般」と、対象にならない「外食」の線引きを了承した。飲食店内で食べる場合を外食と定義し、テイクアウト(持ち帰り)や出前は外食にあたらないとして軽減税率を適用する。週2回以上発行する新聞のうち定期購読する場合も対象とする。両党は16日に与党税制改正大綱を正式に決定する。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
軽減税率については、10月22日の今日の朝刊「3分でわかる!消費税の『軽減税率』」でやさしく解説しているので、読んでみてくださいね。ざっと復習します。
軽減税率は、食料品など暮らしに欠かせない品物に課す消費税率を低く抑える制度です。消費税率が20%前後と高い欧州で採り入れられていて、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、医薬品などが対象です。日本の消費税は今まですべてのものに一律8%がかかっていましたが、2017年4月に10%に上げるときに、軽減税率を初めて採り入れることにしました。消費税は誰でも同じ税率なので所得が少ない人がより負担を重く感じる「逆進性(ぎゃくしんせい)」があります。そこで食料品などに限って8%に据え置き、税率を「軽減」することで低所得者の負担感をやわらげるのが狙いです。
国の政策として決める前に、政権与党の自民党と公明党が何を軽減税率の対象にするかを、この2カ月ほど話し合ってきました。その協議がようやく決着したわけです。
決まった主な内容は上の図を見てください。「酒類をのぞく食品全般」を対象にして、「外食」は対象外にすることになりましたが、その境目がややこしいことになります。
牛丼店やハンバーガー店の店内で食べると10%ですが、テイクアウトは外食にあたらないとして8%のままです。そば屋の出前、ピザの宅配も8%。コンビニで持ち帰りができる弁当やおかずを買い、店内のイートインコーナーで食べても8%です。コーヒーを喫茶店で飲めば10%ですが、コンビニで買えば8%、ソフトクリームも同じです。ハンバーガー店では、同じ商品を買っても、店内飲食用にトレーに載せてもらうと10%で、持ち帰り用に包んでもらえば8%ですから、持ち帰ると言ってそのまま店内で食べる客が増えそうですね。フードコートで返却する食器に盛られる食べものは10%ですから、返却不要で持ち帰れる容器で提供するお店が増えるかもしれません。「庶民の味方」とも言われる安い牛丼店で食べれば10%ですが、高級な和牛やキャビアをスーパーで買って帰れば8%ですから、釈然としない思いも残ります。
関連する業界にはどんな影響があるでしょうか。食品メーカーは基本的にすべての商品が8%に据え置かれます。小売りと外食産業は明暗が分かれました。コンビニやスーパーは大半の食べものが8%のままなのに対し、店内で食べる一般の飲食店は10%になりますから、「コンビニ優位」の決着とも言われています。店内での飲食もテイクアウトもできるファストフード店はちょっと複雑といったところでしょうか。
最後に財源の話です。すべてのものの消費税を10%に上げると税収は5.4兆円増えますが、軽減税率導入で税収は1兆円分減ります。社会保障政策などを予定どおり実行するためには、その分をどこかで確保しなければなりません。4000億円分は予定していた低所得者向けの施策をやめることで確保しますが、残り6000億円分の財源のめどは立っていません。たばこ増税なども議論にのぼっています。政府・与党は2016年度末までに財源を決めると言っていますが、本格的な議論は来年夏の参院選の後になるといわれています。増税の話は選挙に不利に働くからです。こういう話こそ選挙の争点にすべきテーマなのに、ずるいですよね。
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