2015年12月15日

歴史的合意!温暖化対策「パリ協定」のポイントとビジネスチャンス

テーマ:環境・エネルギー

ニュースのポイント

 地球温暖化対策の新ルール「パリ協定」が、世界196カ国・地域によるCOP(コップ)21で採択されました。先進国も途上国もすべての国・地域が削減努力をすることをうたった歴史的な合意です。ポイントを押さえましょう。温暖化対策は、企業にとって新たなビジネスチャンスでもあります。パリ協定を機に、省エネや環境技術開発の視点で温暖化対策ビジネスについて考えるのは、大事な企業研究ですよ。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「視点/実質排出ゼロ社会 新技術が導く/温暖化対策 パリ協定採択」です。総合面(2面)「時時刻刻/島国 交渉リード/日本、実効性に課題」、同「いちからわかる! 温暖化対策『パリ協定』どこが画期的?」、経済面(9面)「省エネ 日本に商機/COP21合意 企業、海外に意欲」、オピニオン面「社説・危機感共有の第一歩だ」も関連記事です。
 記事の内容は――国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、2020年以降の地球温暖化対策の国際枠組みを定めた「パリ協定」を採択した。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書に代わり、途上国を含むすべての国が削減に加わる。「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」目標も掲げた。米ホワイトハウスは、パリ協定合意について「エネルギー関連の投資を相当拡大することになるだろう」との声明を発表。欧米の経済界からは歓迎のツイートが相次いだ。風力発電は18年前の50倍に、太陽光発電は原発の設備容量の半分までに成長した。爆発的な普及に伴ってコストは急激に下がり、途上国でも火力発電を下回るようになってきた。多くの国で経済成長と二酸化炭素(CO₂)排出は連動しなくなり始めた。昨年、世界経済は3%成長したのに、CO₂排出量は横ばいだった。今年の排出量は下がるとみられている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 パリ協定とは、ひとことで言えば「2020年以降の温暖化対策の枠組みを定めた国同士の約束」です。2020年までの取り組みを定めた京都議定書(1997年採択)を引き継ぐもので、骨子は上の表の四つです。

 京都議定書は温室効果ガスの削減義務が先進国だけだったうえ、米国が参加せず、日本も枠組みから抜けて実効性に欠けました。これを反省し、経済発展で温室効果ガスをたくさん出すようになった中国、インドを含め、すべての国・地域が削減に努力することで合意したのがパリ協定です。「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標は、排出を実質ゼロにすることを意味します。世界はこれから、石炭や石油などの化石燃料に頼らない社会を目指すことになります。

 日本の削減目標は、2030年度の温室効果ガス排出量を「2013年度比26%減」です。「2050年には80%減らす」という長期目標も閣議決定していますが、実行計画はこれからです。しかも、この26%減は総電力量の2割超を原子力発電でまかなうことが前提で、安全のために原則40年と定められている運転期間をかなりの原発で延長しないと実現できないハードルが高い数字です。政府は再生可能エネルギーと省エネの推進も掲げ、来年春に「エネルギー・環境イノベーション戦略」をまとめる予定です。

 経済面の「省エネ 日本に商機」の記事では、パリ協定で省エネや環境技術開発に取り組む日本企業にチャンスが広がると指摘しています。ざっと紹介すると――COP21の期間中、日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」を、ホンダは来年3月にリース販売を始める燃料電池車(FCV)をアピール。パリでのイベントに参加した富士通は、スパコンでの大規模な分析、スマホを使った河川水位の監視パッケージなど、気象や災害を予測する依頼が増えると予想。三菱重工業と日立製作所は、協力して開発した新技術「石炭ガス化複合発電」が新興国で主流の旧式よりCO₂排出量が2割以上少ないことから、世界への売り込みを狙う――といったところです。

 この記事の最後に登場する「エコプロダクツ展」にも注目してください。700超の企業・団体が環境技術を披露した展示会で、東京で12日まで開かれていました。記事では、住宅やビルの窓に取り付けて冷暖房効果を高め省エネにつながる旭硝子の複層ガラス、水を入れると発電する古河電池の家庭向け非常用電池を取り上げています。エコプロダクツ展のホームページでは、多くの参加企業のCO₂排出削減技術や新製品を見ることができます。

 COP21の基本については、12月1日の今日の朝刊「COP21開幕!地球温暖化の『基本のき』」でも書いています。読んでみてください。

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