2015年11月24日

企業が求める「グローバル人材」とは?

テーマ:就活

ニュースのポイント

 人口減少で多くの業界で国内市場が縮小するなか、外国に進出したり海外への投資で稼いだりする企業が増えています。かつては、海外勤務といえば商社や大手メーカーが代表的でしたが、今は金融、サービス、IT、下請けの中小部品メーカーまで、あらゆる業種が海外に進出しています。グローバルに活躍したいと思っている人だけでなく、興味がない人も海外と関わる可能性が高い時代です。企業が求める「グローバル人材」ってどんな人でしょうか?(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、特集面(18面)の「憧れの仕事 世界が舞台/海外勤務 20代に聞く」です。
 記事の内容は――
◆セブン&アイ・ホールディングス(HD) 西優輔さん(25) パリ駐在員事務所で働く。ファッションに関心があり、大学では国際経営を学んだ。2012年にそごう・西武に入り、西武池袋本店の売り場などを経験後、HDに出向し、昨年12月に渡仏。将来は海外で活躍するバイヤーになるのが夢で、現地の商品や流行などマーケットをリサーチする毎日だ。好奇心が強く学生時代に20カ国以上を訪ねた。後輩の学生には「海外に行くチャンスがあれば、遠慮せずに飛び込め」とアドバイス。「日本に紹介したい商品、日本で必要とされる商品がある限り、世界で仕事をしたい」
◆日清食品HD 立嶋健人さん(28) 財務経理部勤務。入社3年目の2013年5月から約1年間、若手社員の海外実習制度を利用してロサンゼルス近郊のアメリカ日清で働いた。高校時代を英国で過ごし、帰国後は大学で経営学や会計を学び「世界を舞台に活躍して自分の幅を広げたい」との思いが募った。そこで、カップヌードルが80の国や地域で親しまれるなど海外展開に力を入れる日清食品HDへの就職を決めた。米国ではチームの大半が外国人。「互いに敬い、違いを認めたうえでゴールを共有することが大切」「グローバル人材とは、単に英語を話すだけでなく、世界の考え方や環境の変化に対応して戦える人」と話す。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 週刊誌アエラ(11月9日号)が「グローバル人材」を特集しました。65社アンケートで、採用時に重視する要件として「語学力」を挙げた企業は43社。「コミュニケーション能力」(54社)、「主体性・積極性」(52社)、「チャレンジ精神」(50社)を下回りました。「TOEIC ○○点以上」などと応募条件に掲げる企業もありますが、語学力だけで採用する企業はありません。多くの採用担当者は「あるに越したことはない」と言います。楽天のように、内定してから入社までに一定点数に上げることを求める企業もありますし、入社後の研修で身につけさせる企業が多いようです。

 グローバル人材になるために語学力よりも大切な「コミュニケーション能力」って何でしょうか。アエラの記事で富士ゼロックスの丸山孝幸・教育部部長はグローバル人材を「どこでも、誰とでも働ける人」と定義。ヤマト運輸グローバル事業推進部の荒川剛さんは「現地の文化や習慣を理解し相手の目線に合わせてローカル化を進められる人。そのために重要なのは英語力よりも根気強くコミュニケーションをとれる力やバイタリティーです」と語っています。

 アエラには、国内市場だけを相手にしていた「ドメスティック」人材から「グローバル人材」に進化した社員も登場。手肌と地球に優しい「ヤシノミ洗剤」やアルコール手指消毒剤などをつくるサラヤ(大阪市東住吉区)の海外事業本部の社員は「こんな仕事がしたいという思いが先にあって、そのためなら世界中どこへでも行きますというのが本当のグローバル人材じゃないでしょうか」と言います。今日の記事の西さんと似ていますね。やりたい目標が明確な人は壁を乗り越えられるということでしょう。

 採用担当者インタビュー「人事のホンネ」で日立製作所の大竹由希子さんは「グローバル人材といっても世界中を股にかけて仕事している人はそれほど多くない。むしろ一つのローカル市場に専心して仕事をしていても、グローバルな視野や海外市場の情報を意識して持っているのがグローバル人材」と語りました。学生に考えてほしいことについてはこうアドバイスしています。

 「グローバルの課題です。日立は事業範囲がすごく広い。例えばモルディブで水処理をしていますが、そこに関わっていないとひとごとになってしまうし、自分ならそんなことを一人でできるのだろうか、と感じてしまう。でも、それができるという感覚を持っていないと大きな仕事はできない。『自分だったらこういう大きな課題にどう関われるか』を考えてほしい。大きなことができる必要はなく、自分のできる範囲で関われることを何かイメージできるといい。現実的なところから地に足をつけて考えられれば、入社してからも仕事ができると思います。『世界に影響力のある会社で働きたい』と言う学生もいるが、自分がそれに具体的にどう関われるのかをイメージできるよう、世の中の課題を把握できているといい。そのためには、世の中のトレンドを押さえる。新聞もツールのひとつだと思います」

 大切なのは情報と思考です。日々のニュースに接するよう心がけて世の中の出来事に関心をもち、身近な問題として考えること。「グローバル人材」になるためにも、新聞記事から世の中への関心を広げてください。

 今日の記事では、朝日新聞社が教育ベンチャーのIGSと提携して始めるグローバル人材の評価・育成事業「GROW(グロウ)」についても紹介しています。学生の能力を評価してグローバル人材への成長を支援し、企業とマッチングさせる新サービス。来年初め、今の3年生の就活解禁前にスタートする予定です。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。

アーカイブ

テーマ別

月別