
■選考フロー
――2016年卒採用の選考の流れはどうなりますか。
経団連の指針を守り、3月に説明会やPRを始めます。学生にはリクルーターとコミュニケーションをとってもらったりして、8月に合格を出します。就活時期を後ろ倒ししたのは「学生の勉強時間確保」ということですから、「囲い込み」や拘束みたいなことは考えていません。特に技術系の学生にとって、夏は研究発表などで忙しい時期です。大学の先生からは「このタイミング、結構厳しいな」という意見をいただいているので、大学の意向もヒアリングしながら個別に対応させていただきます。4月に面接をしていたこれまでよりは研究内容が固まった時期の面接になるのでいい面もありますが、学生は勉強と両立させなければいけないので大変でしょうね。
――推薦枠の学生の採用選考はどう進むのでしょう? 2015年卒採用を例に教えてください。
4月以降に2回面接をしました。技術系の場合はまず研究内容と、その研究に対してどういったアプローチをしているのか、研究内容を深く理解しているのかを確認する質問をします。集団面接ではなく、学生1人に社員が2人か3人の個人面接です。技術系でいえばプレエントリーは12月くらいから、正式エントリーは3月くらいで、5月の連休前にほぼ500人の枠が埋まりました。
――2016卒採用は、その4月が8月にずれるわけですね。8月の本採用開始までの間、学生とどう接触しますか。
リクルーターが大学のバランスをみながら学生にコンタクトをとることになります。リクルーターは結構多くて千人以上はいます。日立は人を大事にする会社、人があっての技術だと考えているので、リクルーター以外でも、いろいろな社員が採用に関して意見を言う会社です。
――事務系の選考はどんな流れですか。
同じく8月から面接だと思います。文系にもリクルーターがいますが、研究室などで大学とつながりがある技術系と違い、ゼミやサークルの後輩とコンタクトをとったり、質問があれば答えたりというスタイルですね。基本的に日立は囲い込みはしないので、リクルーターが拘束するようなことはしていません。
■求める人材像
――どんな人材を求めていますか。
ホームページにも載せていますが、①柔軟な頭で、物事の全体像を捉えられる(思い込みで視野を狭くしない)②あらゆる人に心を開き、心を開いてもらえる(自分の殻に閉じこもらない)③常に自分の意志を持ち、それを明確に示せる(他者に遠慮・尻込みしない)④困難に立ち向かい、最後までやりとげられる(壁にぶつかっても意欲を失わない)の4点です。日立で活躍している社員にヒアリングし、人間像を整理して作りました。採用に際してはこれら4点の裏側にある部分として、チャレンジ精神や柔軟性、自分を成長させたいという意欲を見させてもらっています。
――学生の海外志向は強いですか。
事務系はグローバルに活躍したい人が多いのですが、技術系は英語に苦手意識がある学生もいます。TOEICの点数で足切りはしませんが、技術系だとグローバルに、どんどん外に出ていく経験を学生のときにしている人が少ないと思います。
そんな経験を補うために、入社後には日立製作所だけでなく日立グループで毎年1000人ぐらい海外に送り出す「若手海外派遣プログラム」をやっています。NPO団体の「留職」プログラムに参加したり、1カ月くらいソフトウエアの設計に携わってもらったりします。
――インターンシップについて教えてください。
今年の夏休みは、技術系を中心に180人くらいに参加してもらいました。2~3週間のプログラムを100くらい用意して、製品の設計とか開発支援、エスカレーターとかエレベーターの開発設計など、日立の技術をしっかり経験してもらいました。冬のインターンも検討しています。そのまま採用や面接につながることはありませんが、日立を就職先に考えるきっかけ、動機づけになる機会になるので、昨年より数を増やしたい。1000人超の応募があり、書類選考と面接で選考します。全員は受け入れられないので落とさざるを得ないんですが、優秀じゃないから落とす、というわけではありません。学生にはそこを理解してほしいですね。事務系のインターンは小規模で数人程度です。
■ES・面接
――エントリーシート(ES)を見せていただけますか。
技術系の項目は日立への志望動機、グローバルでどのような活躍をしたいか、留学経験、卒業論文または大学院での論文、学会・学術誌での発表題目、情報処理資格の有無となっています。志望動機や自己PRは200字程度、裏面に研究内容を1000字程度。全部WEB上で記入してもらいます。事務系は志望動機、職種、分野を選んだ理由……、技術系も含めて、中身は比較的オーソドックスだと思います。
――とくに重視しているポイントは?
技術系は研究分野です。また、技術系・事務系ともに「グローバル」についてどう思っているか。英語ができるできないにかかわらず海外でやっていく素養、意思があるかを見ます。一方で最近は多くの学生が「海外に行きたいです」と言うので、柔軟性をもっているかも確認します。国内で海外とやりとりすることも当然あるので、日立から提示された仕事に柔軟に対応していくことができるのかも見る。一見、矛盾しているようですが、グローバル的な発想やバイタリティーは求めるけれども、日本を含めてどこでもやっていける人がほしい。
――日立でグローバルな仕事をしている人はどのくらいいるのでしょう?
駐在もあるし、日本にいながら海外出張やテレビ会議を頻繁にやる部署もあります。人事部門でも海外出張があるし、日立でずっと働く中では必ず何かしら海外との関係が出てくると思います。
――「ありがちな志望動機」ってどんな内容ですか。
技術系は自分の研究分野に関係するところで受けてくれるケースが多いですね。事務系だと、留学先や旅先でその国のインフラの不便さを感じて、途上国のインフラ整備に携わりたいという人が多い。例えば「日本の電車の運行管理ってすばらしい。1分と狂わない。そういうインフラを整備したい」という動機をよく聞きますが、そういう時には「交通だけでなく、水も電気も食べ物もインフラとして重要。その中でなぜ交通なのか」という部分を深掘りして聞きます。そこで彼らなりのしっかりした考えがあれば、そういったありがちな理由でも合格する人がいますが、ちょっと浅い場合は厳しいですね。
――面接で合格するポイントは?
ダイバーシティーをすごく意識していて、いろんな人に来てほしいので、あえてこういう人が合格というポイントは設けていません。ただ、話が一貫していて論理性があるか、チームワークをとれる人か、コミュニケーション能力はあるかはしっかり見させてもらいます。
――内定者が競合するのはどんな企業ですか。
技術系は総合電機系ですね。事務系はバラエティに富んでいて、商社や金融系を受けている方もいます。
――新聞を読んでいる学生とそうでない学生で違いを感じることはありますか。
私は面接で「今日、新聞で気になったことはありましたか」ということは聞きませんが、やり取りの中で時事情報をわかっている学生がいれば評価につながります。日立の採用ホームページなどからの情報だけでなく、新聞などから業界環境や他社の動向も調べていることが伝われば、もちろん評価ポイントになります。
――技術系でも?
研究だけしかしていない人だとお客様とずれていくという面があると思います。だから、ちゃんと社会の一員としての感覚があるというのは、逆に大事だと思いますね。