人事のホンネ

ぴあ株式会社

2016シーズン 【第5回 ぴあ】
エンタメの総合商社 貪欲に打ち込んできた「攻めの人材」求む

ぴあ株式会社 HR創造局 キャリアデザイングループ長 小林千陽(こばやし・ちあき)さん

2014年11月12日

■採用実績
 ――採用実績を教えてください。
 2014年4月の入社は13人で男性6人、女性7人でした。2015年新卒採用の内定者は11人で男性6人、女性5人です。過去の実績として理系の学生もいますし、もちろん大学院修了者も歓迎です。職種は総合職の一括採用で春採用のみです。

 ――エントリーの動向は?
 プレエントリーが8000人弱。本エントリーは2500から3000人弱でしょうか。このような傾向は景気の影響を被ることもなく、毎年大きくは変わりません。

 ――最近の学生の印象はどうですか。
 のんびりしていますね。ポテンシャルはあるのに、自分の中で整理がつかないまま「エイヤッ」でスタートするので見ていてハラハラすることがあります。一方で、学生が活動してじっくり企業を見たり、先輩の話を聞いたりできる期間も短くなっている。「学生が」というだけでなく、我々もその前提でいっしょに整理をつけていく姿勢でないといけないと思っています。

■WEBリポートとES
 ――2015年新卒採用の流れを教えてください。
 2013年12月1日に採用広報スタート。合同説明会、学内セミナーに参加しながら、プレエントリーを2月末まで受け付けました。ぴあの場合、簡単なWEBリポートを提出してもらうことで本エントリーとしています。WEBリポート選考を通過した人にクローズドセミナーにお越しいただきます。そこで会社の概要や社員の声を聞いてもらって、本当に応募するかどうか意志を固めていただき、その場で手書きのエントリーシート(ES)を書いてもらいます。

 ――WEBリポートはESとは違うんですね?
 はい。2015年新卒採用のWEBリポートは質問3項目に答えてもらいました。1項目の文字数は200文字くらいなので高いハードルではありませんが、志望度が高くないと障壁になるようで、提出しない人もいます。

 ――セミナーで書いてもらうESはどんな内容ですか。
 詳しくは言えませんが、学生時代に一番真剣に取り組んだことや困難だったこと、志望理由などを書いてもらいます。一般的な内容です。常日ごろ自分で考えている人、感受性のある人は、その場でもパッと書けると思います

 ――その場で書かせる狙いは?
 誰かが添削することがなく恣意的な内容が入らない。何かをまねしたり、誰かのアドバイスを受けたりできない中で、自分の気持ち一つで書かなくてはならない。これが一番の狙いです。

 ――でも、本気で受ける人は周到な準備をして臨むのでは?
 ESを書くときには資料を手元に出しても良いことにしています。会社についてやOB訪問で先輩に聞いたことなど、自分が作った資料であれば見ていただくことができます。ホームページをプリントアウトしてきて見る人もいるし、いろいろ書き留めたノートを一生懸命見ている人もいる。「なんでこの会社を受けるのか」をまとめ、その文章をアレンジしながら書く人も。自分で考え、準備したことは大いに生かしてほしい。それも、熱意のひとつですから。だから、その場でスマホなどで検索することは禁止しています。

「ワーク選考」に特徴 2016採用は学生が参加しやすい時期探る

■求める人材
 ――どういう人材を求めているのでしょう?
 ぴあは経営状況が悪化し回復を目指していた数年を乗り越えて、ようやく成長モードに入りました。これまでと求める人材のベースは変わらないので、守りをしっかりできるのはもちろんですが、攻めもできる人が必要です。与えられた課題を100点満点で返すのではなく、ここをもっとこうしたら良くなると考えられる人。この辺でいいと止まらないで、もう一歩先に進めてみようと考える人です。

 ――これからの新たな事業展開には、「攻めの人材」が必要ということですか。
 採用だけでなく人材育成全体にかかわる話ですが、弊社が大事にしているクリエーティビティー、理念である「遊び心」の部分や、お客様に対するユーザビリティーについて「そもそもクリエーティビティーとかユーザビリティーって何だろう」と話す中で出てきたのが、攻めの人材です。ただまとめるだけではなく、発想を飛躍させたり、いろんな人に話を聞き自分でもいろいろ考えて、その中から何かを導き出すのがクリエーティビティーなんじゃないか。こうしたらもっとお客様に喜ばれるとか、本人すら気づいていないニーズや面白さを先んじて提供していくユーザビリティーも、クリエーティビティーと源は同じなのではないかと。学生時代にもそんな考え方でいろんなことにチャレンジしている人がいる。そういうポテンシャルをもった学生が入ってくれればと考えています。

 ――そんな攻めの人材を採用できましたか。
 はい。何かに打ち込んでいる、へこたれずガッツがあり、貪欲(どんよく)に目指すことを追求して学生生活を送っている人たちを採用できたと考えています。今後が楽しみです。

■面接
 ――面接にはどんな特徴はありますか。
 最初は「ワーク選考」。事前にテーマを出して、作ってきていただいた資料でプレゼンテーションしてもらう。短い期間でどこまで一生懸命、面白がりながら取り組めるかを見ています。3月末から4月初めまでのワーク選考に参加したのは300人くらいですね。

 ――その後は普通の面接ですか。
 1次面接までの間にSPIを受けてもらい、1次から3次までは個人面接です。かつてはグループ面接を行っていましたが、一人ひとりがどういう人か、できるだけ引き出す形で見たい。緊張をほぐしたり、その人の得意分野の話をしたりしながら聞いていくと、人となりがわかる良いエピソードが出てきたりします。だから、1人に30分かけてじっくりと見ています。
 最初すごく緊張していた子がリラックスして話せるようになるのは15分以降。逆に作り込んできた人が素を出してくるのも15分ごろ。そんな実感があります。2次は、本部長クラス2人と人事の計3人で見ます。最終は社長と取締役2人の計3名。内々定を出したのは5月中旬です。

■2016採用スケジュール
 ――2016年新卒採用から、経団連指針で就活スタート時期がずれ込みますが。
 どうなるんでしょうね(笑)。今までの4月1日選考スタートが8月1日にずれるので、我々もスケジュールを後ろ倒しすることなると思います。ただ、学生が参加しやすいことが最優先。例えば7月は大学の前期テストの期間で、そのために選考に参加できないということであれば何のために遅らせたのかということになる。学生にとって最適な時期はいつなのか、他社の動きはどうなるのか、様子を見ながら考えようと思っています。

 ――エンタメ情報の提供やチケット販売はかつて紙媒体や電話がメーンでしたが、今はWEBがメーンの舞台です。IT専門の社員の採用はしないのですか。
 実は我々はIT依存度の高いビジネスをしていますし、新しいツールも出てきているので、ITに強い、専門性をもった人材を採用して育てていきたいと思っています。ITを専門的に学んできた学生の専門職採用を考えることもありますが、正社員が260人しかいない会社なので、専門職的にひとつのことをやっていく、というキャリアがなかなか想定しにくい。専門性を生かすにしても、現場での営業やWEB担当など複数の部署を経験していく中で、初めてユーザビリティーや求められるものがリアルにわかったりする。若いうちに様々な経験を積んでから、自分のキャリアを決めても遅くないという考えも持っています。ということで、今のところはまだ総合職一本です。

 ――IT専門の部署もあるんですよね?
 あります。近年では、新入社員を最初からIT系の部署に配属することも行っています。

 ――インターンシップは実施していますか。
 はい、1回15人程度で3日間。ぴあの説明をするだけでなく、学生に企画していただくのがメーンの内容です。去年は夏と秋に計4回行いました。インターンを経験した学生が本エントリーする割合は90%を超えており、今年は内々定者11名中4名がインターン参加者でした。
 インターンには、もともとエンタメ志向はなく、ぴあについて「名前は知っています」という程度の人もいます。「企画するのが面白そう」「エンターテインメントという身近な商材の企画ができる」と応募してくれる人は多い。参加して、ぴあという会社やビジネスの話をしているうちに、だんだん「もっとこういうことができたら面白そう」とか「こういうことをやりたいな」と思って志望するようになる人も多いですね。

アンテナ張って情報収集 新聞読んで

■ES
 ――ありがちなESはどんな内容ですか。
 志望動機に「人々を喜ばせる仕事をしたい」とか、「人々の生活に感動を与える仕事をしたい」と漠然と書かれてあるもの。人を喜ばせようと思ってない企業はないですよね。どんな業種の企業でも、みんな人々の生活の中に喜びとか、「これ面白いな、便利だな」という感動を与えようとしている。では、「あなたが提供したい感動とか喜びはどういうものですか?」とたずねると、多くの学生は固まってしまう。どんな形でも、その人なりの持論があればいい。
 たとえば、全くちがう業種の企業と弊社を受けている学生には「なぜ、どういう考えでこの2社を受けているの?」と問います。やっていることも提供しているものも全然違うのに、学生の言葉で語られると、“なるほどね、君はそういう考え方であの会社とうちの会社に共通点を見いだしているんだ”と思えることがある。納得できる考え方がその人の中にあることが大切です。

 ――時事問題などの試験はしていないのですか。
 テストは実施していませんが、面接で聞くことはあります。「今朝の新聞読んだ? 今朝の1面で一番印象的だったことは何? それについてちょっと聞かせて」とか、「最近何か気になるニュースってある?」と。考え方はいろいろでOKだと思っています。ただ、仕事とはいろんなことにアンテナを張って情報を収集し、どこにチャンスがあるかわからない中でやっていくものですから、ひとつの情報源として新聞は読んでいてほしいと思います。さらに、自分に必要な部分だけを読むのではなく、興味を持ったことに対して自分がどう思うかというアウトプットがきちんとできるといい。どこで情報収集しているのかも聞きますね。

■どんな会社?
 ――ぴあという会社名はみんな知っていますが、実際はどんな会社なんですか。
 みなさんのもっているイメージとは大きく違うのではないでしょうか。多くの人が、チケットを販売しているだけのイメージだと思います。実際には、エンターテインメントにどういう付加価値を提供できるか、あるいはライブエンターテインメントを活性化させるために何ができるかをいつも考えている会社です。プロモーションを行って情報を知らせたり、エンタメに参加しやすくするサービスや商品、イベントをつくったり、ホール運営のお手伝いをしたり。ライブエンターテインメントに参加したい人と参加してほしいと思う人、両者をつなげるビジネスを行っている会社。つまり「エンタメの総合商社」なんです。

 ――学生には、ぴあの何を知ってほしいですか。
 ユーザーには見えない部分ですね。他の様々な企業や団体とのBtoB(Business to Business)のビジネスが多くあります。BtoC( Business to Consumer)もチケット販売だけでなくて、チケットにかける保険を導入したり、リセール(転売)を業界で初めてスタートさせたり。ユーザーが求めているであろうことを実現する仕組みを企画する。そのためにはどの会社と一緒にやろうかと考える。こんなことをする仕事だという話を学生にはしています。

 ――2020年東京五輪では、何か関わることがありますか?
 まだ何も決まっていませんが、ぴあも何かお手伝いできればいいですね。これまでの様々な国際大会に携わってきたノウハウと知恵を結集して、6年後、東京を、日本を盛り上げたいですね。

 ――ぴあを受けに来る学生は、ほかにどんな業界を受けていますか。
 広告代理店や、最近はIT系の会社にも広がりました。さらに、芸能プロダクションや映画会社などイベントそのものをつくっている会社や放送会社ですね。

「縁の下の力持ち」 地道で泥臭い仕事

■やりがいと厳しさ
 ――はたから見ると楽しそうで派手な仕事に見えますが、苦労も多いのでしょうね。
 エンターテインメントというと華やかな仕事とみられることもありますが、地道に泥臭くコツコツやらなくてはいけないことがたくさんあります。情報一つ間違えると大変なトラブルになり、お客様にご迷惑をおかけするため外に出る情報には細心の注意を払っています。また、業界の常識を変えるような新しい企画を提案する際には、様々な調整をしなくてはいけない。調整や地道な活動が非常に多い仕事です。
 仕事で会場に行くと、エンターテインメントを楽しむ一人ひとりが、自分たちの仕事によって集まっているのだということを見ることができるので、そこで苦労が相殺されます。それを見るまで、イベントの直前まで、緊張感をもってきちんと地道に進める、そういう仕事です。

 ――小林さんご自身の就活について聞かせてください。
 もともと違う業界をめざしていたのですが、うまくいかず就活途中で挫折。1カ月くらい自分は何をやりたかったのかを探しました。その間、好きな芝居を見に行ったりコンサートを見に行ったりするうちにふと、演者としてエンタメをつくることはできないけどそれを支える縁の下の力持ちにはなれるんじゃないか、そこになりたいと思ったんです。就活をやり直し、「エンターテインメントの縁の下の力持ち」を今、やっています(笑)。いま考えれば「そこに入りたい」ということだけ熱意が高くてもだめだったんですね。「そこに入ってからしたいことできること」への想いがあるかないかが大事だったんだなと。

 ――小林さんが印象に残っている仕事について聞かせてください。
 ある大学の学内セミナーにうかがった際に、会社説明終了後、質問の列とは違うところで待っていた女子学生が私のところに来て、「どうしてもお礼がしたかった」と言うんです。その日の会社説明の中ではぴあのソリューションビジネスの事例として、あるイベントを企画したことを紹介しました。その学生はまさにそのイベントにお父様と2人で来たんだそうです。父親と2人で出かけるのは小さい時以来で、父親もすごく喜んで、お嫁に行く時は今日のことを話すんだろうねって2人で話しながら帰ったと。「その思い出をつくってくれたのがぴあだったと今日知りました。本当にありがとうございました」って言ってくれました。私が直接つくったイベントではありませんが、会社に戻って担当社員に伝えたらすごく喜んで……。
 こういうことがあるから私たちの仕事ってやりがいや報われる瞬間があるなと、すごく感じた瞬間でした。

みなさんに一言!

 様々な情報を耳にして、迷うことも多いと思いますが、○×という結果だけではなくて、自分自身が社風やビジネスを受け入れられる企業と良い出会いをしてほしいと思います。面接でずっと落ち続けると自分にバツをつけられていると感じますよね。

 でも、そうではない。まだ自分に合う会社と出会っていないだけなんです。そういう会社と出会おうとする活動をしているかどうか。就活は一つの出会いです。いい出会いを追求してください。

ぴあ株式会社

【レジャー・アミューズメント】

 ぴあは、みなさまがレジャー・エンタテインメントを楽しむための情報やサービスをさまざまな形で提供し、”ひとりひとりが生き生きと”した生活を送っていただけるよう様々なサポートをしてまいりました。これからも、21世紀の”心の時代”に求められるインフラである「感動のライフライン」構築に向けて、コンシューマー(お客様)・コンテンツホルダー(権利者)・興行主催者の三方面に対して、より付加価値のあるサービスの提供やブランドの構築を目指しています。