2015年11月25日

三菱重工だけじゃない…ロケットの夢かなえる会社を探そう!

テーマ:科学技術

ニュースのポイント

 国産のH2Aロケットによる初の商業衛星打ち上げが成功しました(写真)。衛星ビジネスはこれから、日本の関連企業にとって期待の分野の一つです。ロケットや宇宙は夢がかき立てられる世界だけに、関わりのある仕事をしたいと思っている人もいるに違いありません。H2Aの中心は三菱重工業ですが、ほかにも多くの企業が宇宙に関わっています。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「商業衛星打ち上げ成功/H2A改良 海外から受注」です。
 記事の内容は――H2Aロケット29号機が24日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。搭載していたカナダの企業の通信放送衛星を予定の軌道に投入。国産ロケットによる初の商業衛星打ち上げが成功した。国際的に商業衛星の需要が高まる中、海外と競争を繰り広げる三菱重工業が初めて受注。この成功で今後の受注に弾みがつきそうだ。従来は衛星を高度数百キロで切り離していたが、同社は静止軌道に近い約3万4000キロまでロケットで衛星を運ぶ新技術を採用。衛星側の燃料負担が少なくなった分、機器や衛星の寿命を延ばすための燃料を積めるため、商業衛星市場で欧米などと同じ土俵に立って勝負できることを示した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 通信衛星や観測衛星など、宇宙をもっと利用したいという声は世界で高まっています。日本政府が1月につくった宇宙基本計画は、宇宙関連機器産業の売り上げ規模を今後10年間の累計で5兆円とする目標を掲げました。今は日本政府などの官需(かんじゅ)が中心で、年3000億円ほどの売り上げですから、目標達成はいかに海外や民間の需要を増やせるかにかかっています。

 世界の衛星打ち上げ市場は、欧州のアリアンスペース(本社フランス)が首位を走り、残るパイを米国やロシア、中国などと日本が奪い合う構図です。民需のポイントは打ち上げにかかる費用ですが、図(2013年5月29日の朝日新聞朝刊掲載)にあるようにH2Aは100億円とまだ高いのが現状。アリアンの新型ロケットは「低価格」を売りに開発中で、2020年度に初打ち上げをめざす日本の次期主力ロケット「H3」もH2Aの半額をめざします。

 今回の打ち上げ成功を受けて安倍首相が発表したコメントにこんなくだりがありました。
 「ロケットは、大企業からオンリーワンの技術を持つ中小企業まで、多くの企業の先端技術を結集して製造される。今回の開発でも、優れた技術を持つ中小企業が、バルブや断熱フィルムなどで活躍している」

 実際にはどんな会社が関わっているのでしょう。TBS系列で話題のドラマ「下町ロケット」では、三菱重工がモデルと思われる「帝国重工」がロケットをつくりますが、小さな部品バルブシステムだけは高い技術をもつ東京の下町の中小企業「佃製作所」のものを使うことになり、これをめぐってドラマが展開されました。

 宇宙開発はすそ野の広い総合産業です。人工衛星の製造や運用、ロケットの製造や打ち上げ、地上設備製造、部品製造、素材製造、ソフトウェア開発など多岐にわたるため、実際の開発・運用にはたくさんの企業が関わっています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のホームページ(HP)にある「日本の宇宙産業」によると、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」では、約650社が関わりました。

 JAXAのHPから、ロケットや衛星を担当している主要企業を抜き出してみます。
【H2Aロケット】三菱重工(システムとりまとめ・打ち上げサービス事業)、IHI、IHIエアロスペース、NEC、川崎重工業、日本航空電子工業、三菱スペース・ソフトウェア、三菱プレシジョン
【小惑星探査機「はやぶさ」】NEC(衛星システムとりまとめ)、IHIエアロスペース、住友重機械工業、日油技研工業、日本航空電子工業、日本飛行機、藤倉航装、富士通、古河電池、三菱重工、三菱電機、明星電気(その他99社の日本企業が開発・運用に関わった)

 ほかにも、陸域観測衛星「だいち」や水循環変動観測衛星「しずく」、国際宇宙ステーションの「きぼう」に関わった企業が掲載され、「宇宙産業を支える企業」のページには会社の現場ルポとインタビューも載っています。重複する会社が多いので上記以外の会社だけ列挙します。
 ソラン(現TIS)、宇宙技術開発、新日鉄ソリューションズ、エー・イー・エス、日立製作所、有人宇宙システム、住友精密工業、OKI田中サーキット、メイラ、京セラ、原田精機、イーグル工業、TAKシステム イニシアティブ、ハーモニック・ドライブ・システムズ、ミネビア、NECネットワークプロダクツ、浜松ホトニクス、シンフォニア テクノロジー、岩谷産業、岡崎製作所、東明工業、東海バネ工業、多摩川精機

 さらに、「宇宙利用ビジネス最前線」のコーナーには、放送から教育、宇宙旅行まで、さらに多様な会社が登場します。HPに載っていない関連企業もたくさんあります。こうした企業の多くは自社HPなどで実績をアピールしています。約3000社の採用情報を掲載している「あさがくナビ2016」で「宇宙」をキーワードに検索すると22社、「ロケット」では7件がヒットしました。宇宙開発に携わりたいという夢を持っている人は、有名ではない企業も視野に自分で探してみましょう。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。

アーカイブ

テーマ別

月別