ニュースのポイント
日本企業による海外企業の合併や買収(
M&A=Mergers and Acquisitions)が急増して、初めて年10兆円を超えました。人口が減っていく国内市場では大きな成長は望めないため、海外の成長を取り込もうという動きです。損害保険会社も生命保険会社も、メガバンクや総合商社、メーカーも、競うように海外でのM&Aを進めています。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「海外へのM&A 年10兆円を突破/日本企業、国内先細りで」です。
記事の内容は――2015年の日本企業による海外企業のM&Aが11月9日現在で初めて年間10兆円を超えた。14年通年の約1.7倍の勢いで、9年ぶりに過去最高を更新した(M&A助言会社レコフ調べ)。人口減で国内市場の先細りが見込まれるなか、企業は業績改善で豊富になった手元資金を使い、海外の成長市場を取り込もうとしている。地域別では、北米が4兆527億円と4割を占め、欧州の2兆7617億円、アジアの1兆9872億円と続いた。目立つのは主に国内の顧客を対象にしていた生命保険会社や損害保険会社の動き。損保最大手の東京海上ホールディングスは米中堅保険会社、明治安田生命保険も米中堅生保の買収を発表、買収金額上位10社のうち4社を生損保が占めた。伊藤忠商事はタイの財閥企業と組み、中国最大の国有企業グループ「中国中信集団」の中核企業の株式を取得する。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
2014年の日本企業による海外企業のM&Aの件数は557件で過去最多でした。2015年は金額も大きく伸び、過去最高だった2006年の8兆6090億円を上回りました。財務省によると、14年度に企業がため込んでいる内部留保は約403兆円で、2009年より約103兆円増えました。安倍政権は国内の景気を良くして雇用を増やすため、企業に国内で積極的に投資するように求めています。しかし、国内企業同士のM&Aは低調で、レコフの調べでは2015年9日現在で3兆1029億円でした。
企業は資金に余裕ができると、M&Aなどの投資でさらに事業を拡大しようとします。ただ、企業は必ずしも政府の思惑どおりには動かず、海外に積極投資している構図です。なぜだかわかりますか? 日本は少子高齢化が進み、これからも人口減少が続きます。縮小する市場にお金を投じるよりも、成長市場に投じたほうが果実を得られる可能性が高いからです。だから、各企業は巨大市場の米国や、高い成長が見込めるアジアの企業のM&Aに積極的なのです。
東京海上ホールディングスなど大手損保、生保、メガバンクなど金融機関の海外展開については、6月11日の今日の朝刊「東京海上が大型買収 金融機関の海外展開、なぜ?」でも書きました。こちらも読んでみてください。
金融機関だけではありません。昨年は、サントリーホールディングス(HD)が米蒸留酒大手「 ビーム社」に総額160億ドル(約1兆6500億円)を投じた大型買収が話題になりました。あなたが目指す業界、会社の海外でのM&Aの実績を調べてみましょう。
こうした企業の動きを押さえるには、日本の人口減少、新興国の人口増加や高い成長率、中間層の増加といった世の中の大きな流れや背景を理解しておくことが大切ですよ。
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