ニュースのポイント
中国(中華人民共和国)と台湾(中華民国)のトップが7日に初めて会談します。1949年に中国と台湾が分断されてから66年。歴史的な会談と騒がれていますが、いったい何が歴史的なのでしょう? 今日は、日本にも深くかかわる中台関係の「基本のき」と背景を学びましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、総合面(2面)の「時時刻刻/中台首脳、総統選にらむ/7日会談 分断後初」です。同じ面の「いちからわかる! 中国と台湾の首脳会談 なぜ『歴史的』なのか/内戦以来、互いに『中国の代表』を主張して譲らなかった」もあります。
記事の内容は――中国の習近平(シーチンピン)国家主席と台湾の馬英九(マーインチウ)総統が7日に初会談する。歴史に新たな1ページを刻む一大事だが、馬総統の任期は来年5月まで。1月の総統選では台湾独立志向の民進党の政権奪回機運が高まる。電撃的な開催は、台湾をつなぎとめたい中国と、選挙で巻き返したい馬政権の思惑(おもわく)が一致した形だ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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台湾には、中国大陸をルーツとする人が多く、言葉や文化も共通点が多くありますが、長年対立してきました。まずは今日の記事などをもとに歴史を整理します。
【中台の分断】1945年の終戦後、中国では蔣介石(しょうかいせき)が率いる国民党と、毛沢東(もうたくとう)らの共産党の内戦が起きた。日本の植民地支配が解かれた台湾に1949年、内戦に敗れた国民党が逃れ、中国に共産党の「中華人民共和国」、台湾に国民党の「中華民国」が並び立つ状態に。
【中台対立~関係強化】双方が「中国の代表」を主張し、国際機関や外国にどちらを正統と認めさせるかの争いが続いた。1995~96年には中国軍が演習と称して台湾海峡に実弾を撃ち込む「台湾海峡危機」も起きた。2000~08年の台湾・民進党政権のときには、中国が台湾独立の動きを警戒し中台関係は極度に悪化。2008年に総統になった馬氏は、経済大国になった中国との関係強化は台湾経済の発展に不可欠として、関係強化に取り組み経済交流を拡大してきた。
【台湾の世論】第2次大戦前に中国から台湾に渡った人やその子孫を「本省人(ほんしょうじん)」、戦後、国民党政権とともに台湾に移った人や子孫を「外省人(がいしょうじん)」と呼ぶ。人口の8割は本省人だが、1980年代の民主化以前の有力政治家の多くが外省人だった。馬氏も外省人だが、2008年の選挙では出身による対立を超えた「全民総統」を打ち出し勝利。しかし中国との経済関係強化の恩恵が一部の企業に集中して不公平感が強まり、2014年3月、行き過ぎた対中傾斜への不安などから学生が立法院(国会)を23日間にわたって占拠する「ひまわり学生運動」が起きるなど、馬政権の親中路線への批判が噴出した。台湾世論の多くは中台の統一は嫌う一方、「台湾独立」を掲げて対中関係を壊したくはないという現状維持を志向しているといわれる。
【台湾の思惑】2016年1月の台湾総統選は、世論調査で野党・民進党の蔡英文(ツァイインウェン)主席が大幅リード。支持率低迷に苦しむ馬氏は首脳会談で中台関係の安定を強調して、与党・国民党の支持回復を目指す考えとみられる。ただ、長い分断と民主化が進み、台湾では「台湾は中国の一部ではない」と考える人が増え、馬氏個人の業績づくりとの批判も強い。
【中国の思惑】「中台統一」は中国指導部の悲願。「中華民族の偉大な復興」を目標に掲げる習主席にとっても欠かせない。馬氏と握手して「中華民族の連帯」を唱えれば目標実現への期待を高められる。台湾総統選は2015年だけでなく2020年も民進党が勝つとの予想があり、馬氏の在任中の首脳会談実現に動いた可能性も。
【国際社会の中での台湾】1895年、日清戦争の下関条約により台湾は中国から日本に割譲され、日本は1945年まで台湾を統治した。戦後は台湾と国交を持っていたが、1972年の日中国交正常化の際に断交。今では多くの国が中国を優先して台湾と国交をもっていない。たとえば、ロンドン五輪には「204の国と地域」が参加したが、台湾はこの「地域」の一つという扱いになっている。
中国も台湾も、日本にとってはお隣でとても関係の深い国・地域です。近年、急増している訪日外国人旅行者でみると、2014年の国・地域別トップは台湾人、2015年は中国人がトップになりました。中国にも台湾にも多くの日本企業が進出しています。中台関係は、あなたにとってもひとごとではありませんよ。
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