ニュースのポイント
日本郵政グループの3社が、きょう
東京証券取引所(東証)に株式を
上場しました。140年以上続いた「
官営」から、株主に利益追求を求められる上場会社への大きな転換です。加えて、年間売上高14兆円、従業員25万人の巨大集団の動向は、銀行や生命保険など民間のライバル業界・企業にも大きな影響を与えます。何が変わり、どんな課題があるのか、やさしく解説します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(4面)の「郵政3社 描けぬ将来像/きょう上場/郵便局網『重荷』か『武器』か/政権と株主、相反する圧力/再び政争の具にも」です。
記事の内容は――日本郵政グループの日本郵政と、その傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が4日、東証に上場する。それぞれの株式の11%を売り出す。1998年のNTTドコモ(7.4兆円)に次ぐ大型上場。上場後も、政府は日本郵政株を約3年ごとに売り出す方針。全国約2万4000の郵便局網を維持しながら、どう利益を増やしていくかが課題だが、道筋と将来像は描き切れていない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
きょう上場された日本郵政株の
初値は1631円、ゆうちょ銀は1680円、ゆうちょ生命は2929円でした。売り出し価格はそれぞれ1400円、1450円、2200円だったので上回りました。それだけ買いたい人が多かったということです。
今日の記事などから、郵政民営化の経緯や課題を整理します。
【経緯】郵政事業はもともと国の事業だったが、2003年に政府が全額出資する特殊法人「日本郵政公社」に。民間企業になったほうが上手に経営できるとして、2005年の小泉純一郎首相のときに民営化することが決定。2007年には株式会社に移行し、郵便、貯金、保険などに分社化され日本郵政グループが発足した。ただし日本郵政の株はすべて政府が持ち、ゆうちょ銀とかんぽ生命の株は日本郵政がすべて持っていた。いよいよ、この株を誰でも買えるように上場する段階まで進んだ。たくさんの株主がチェックすることで、効率的に運営しようという考え方だ。政府は株を売って得た収入を、東日本大震災の復興予算に使う方針。
【郵政の重荷】電子メールでのやりとりが定着し、郵便を利用する手紙やはがきは減っている。全国に2万4000ある郵便局の郵便事業は全国の8割の地域で赤字だが、「国民生活に必要不可欠」として各市町村に一つ以上の郵便局を置くことが法律で定められているため、一般の会社のように勝手に閉じることはできない。株主に赤字地域からの撤退を求められても応じられない中で25万人の社員の雇用と、過疎地のサービス維持を両立させなければならない。
【郵政の強み】郵政グループ各社の経営陣は「郵便局網は貴重な資産」と話す。大手コンビニを上回る店の数と、長い歴史でつちかった信用力は「武器」になるからだ。貯金を預かるゆうちょ銀と、保険を手がけるかんぽ生命は、今も郵便局で9割以上の貯金や新規契約を集めているが、3社は「共存共栄」を強めて利益を増やせるとみる。かんぽ生命は7月、がん保険の販売を委託する郵便局を2倍の2万局に拡大。ゆうちょ銀は来年2月から大手証券などと協力してつくる独自の投資信託を郵便局で売り出す。
【個別課題】
◆ゆうちょ銀の預金限度額引き上げ
ゆうちょ銀は1人当たり1000万円の預金限度額が設定されている。自民党の郵政事業に関する特命委員会は、この限度額を2000万円、3000万円と段階定期に上げ、将来は撤廃するよう提言。
◆かんぽ生命の保険契約の限度額引き上げ
かんぽ生命の保険契約には1300万円の限度額がある。自民党の特命委は2000万円に上げるよう提言している。
◆ゆうちょ銀は、今は原則として禁止されている住宅ローンや企業向け融資への参入を金融庁に申請中。
ゆうちょ銀の貯金残高は3月末で計177兆円。メガバンクトップの三菱UFJ銀行の124兆円を大きく上回ります。しかも、上場したといっても今後も政府は日本郵政の多くの株を持ち続ける「半官半民」。貯金限度額引き上げについて、全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は「政府関与が残り、民間との間で公正な競争条件が確保されない中で引き上げるのは郵政民営化の目的に逆行する」と発言。生保業界も反発しています。
総合職、一般職など、大量採用する日本郵政への就職を考えている人だけでなく、銀行、生保、さらに宅配業界に関心がある人も、今後の郵政関係のニュースに注目してください。証券会社志望の人も、「大型上場」の株式市場への影響という面から、郵政3社上場を考えてみましょう。
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