2015年11月06日

誰がなっても「初」づくし? 米大統領選の「基本のき」学ぼう(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:国際

 アメリカ合衆国(米国)の大統領選は、世界の行方に大きな影響があります。もちろん日本の行方にも、です。選挙は来年11月8日ですが、今は民主党、共和党の二大政党の候補者選びが佳境に入っています。民主党は前国務長官のヒラリー・クリントン氏と最左派のバーニー・サンダース氏が競り合い、共和党は不動産王のドナルド・トランプ氏と元神経外科医のベン・カーソン氏の争いになっています。誰がなってもかなりユニークでリスキーな大統領の誕生になりそうな感じです。来年夏あたりの就活シーズン真っ盛りには米大統領選の話題がさらに盛り上がっていることでしょう。今から、ニュースをフォローしておくことを勧めます。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、国際面(11面)の「ブッシュ氏↓最低4%/支持率、「第2集団」にも遅れ/米大統領選共和党」です。
 記事の内容は――次期大統領選の共和党候補に立候補しているジェフ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)の支持率が下げ止まらない。当初は首位を走っていた同氏だが、4日に発表された世論調査で出馬表明以来最低の4%を記録し、先頭から「第3集団」に後退。陣営は危機感を募らせている。米クィニピアック大が発表した世論調査では不動産王のドナルド・トランプ氏と元神経外科医ベン・カーソン氏への支持が上位で拮抗。「第2集団」にはマルコ・ルビオ、テッド・クルーズ両上院議員が並んだ。出馬表明前からトップを維持していたブッシュ氏だが、トランプ氏の人気上昇に伴い、支持が下降。今回初めて「第2集団」にも10ポイント近く差をつけられ、4%に落ち込んだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 就活では、社会の動きをしっかり捉えているかということも見られます。筆記試験や作文のあるところはもちろん、面接だけのところでも突然時事問題をふられることはよくあります。テーマとして、生々しい国内の政治問題については企業側も避けようとしがちですが、米大統領選なら自国のことではないので聞きやすいテーマになります。どれくらい社会の動きをつかんでいるかということのほか、どういう社会が望ましいと考えているかなどもうかがえるため、私が面接するなら「誰が有力だと思いますか。その理由は何ですか」くらいは聞きたいところです。

 本選挙までまだ一年もある段階ですが、今回の大統領選挙はどうも、世界を大きく変えそうな気配があります。今のところ有力な民主党の二人、共和党の二人の誰がなっても、「初」の文字がつきそうです。ヒラリー・クリントン氏なら「初の女性大統領」、バーニー・サンダース氏はいわば「初の民主社会主義大統領」、ドナルド・トランプ氏かベン・カーソン氏がなった場合は「初の政治経験なし大統領」となります。

 さらに政治姿勢としても、ヒラリー氏以外の3氏はこれまでの大統領とはかなり違います。サンダース氏は民主社会主義者と自認しているとおり、「強欲なウォールストリート」には敵意をむき出しにしていて、格差の是正に力を入れる考えです。いわゆるリベラル最左派です。トランプ氏は、移民は「職を奪い犯罪を持ち込む」としてメキシコ国境に壁を造るとまで言っています。国際関係でもかなりタカ派の考えの持ち主だと見られます。戦争の臭いがします。カーソン氏は穏やかな黒人の紳士ですが、オバマ大統領の医療政策を痛烈に批判したり、同性愛について保守的な考えを表明したりしています。

 こんな大事な大統領選ですので、米大統領選の基本もおさえておきましょう。
① 4年で2期8年までしかできない
 今回、オバマ大統領が出ないのは、このルールにより出られないからです。大統領はいったん選ばれれば2期目を目指す選挙には勝つことが多いので、8年をまかせる覚悟が必要となります。
② 民主党と共和党の一騎打ちになる
米は典型的な2大政党制。民主党と共和党以外の政党に属している人や無所属の人が大統領になる可能性はほとんどありません。最近は民主党と共和党の大統領が8年ごとに交代しています。
③ メディアによるイメージ戦略が勝敗を分ける
 米は広大な国土を持つ新しい国です。ですから、日本のように地縁血縁のつながりは強くありません。「代々入れる人は決まっている」とか「友人に頼まれたから入れる」といった投票行動は一般的ではありません。テレビやネットで、討論会を見たり聞いたりすることで決めることが多いため、イメージ戦略が大事になってくるわけです。
④ 選挙人を選ぶ間接選挙
 米の大統領選はちょっと変わったやり方です。立候補者は、大統領候補と副大統領候補のペアになります。全米535人の選挙人がいて、米に50ある州に割り当てられています。選挙人は、どのペアに投票するかを誓約しています。ですから一般の有権者はその誓約を信じて選挙人の投票をします。各州では、得票数の多いペアが選挙人を総取りできます。
 全米で獲得した選挙人の数の多い候補ペアが大統領、副大統領になるわけです。

 基本はこの辺にしておきます。この一年、朝日新聞や朝日新聞デジタルで大統領選をチェックしていけば、大統領選だけでなく米の政治、経済、社会から世界の問題まで幅広い知識が得られると思います。就活だけでなく、社会に出ても役立つ知識になると思いますよ。

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