そもそもTPPってなんなのか。まず復習です。
TPPはTrans-Pacific Partnershipの略。太平洋を囲む国々が、農産品や工業製品を輸入するときにかける税金（関税）を互いになくしたり、人やお金が行き来しやすくしたりするルールをつくって、経済を活発にしようとする枠組みです。交渉は2010年３月に始まり、日本は2013年７月から参加。関税は撤廃が原則ですが、一部「例外」が認められ、最後は関税を決める２国間協議に時間がかかりました。参加国は、日米のほかオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、チリ、ペルーの12カ国。世界の国内総生産（GDP）の４割近くを占め、約８億人を抱える巨大経済圏が誕生します。
日本への影響を大まかに言うと、自動車など工業製品を輸出する企業にとってはメリットが大きい一方、国内の農業にはデメリットとなる、という構図です。就活生のみなさんに押さえてほしいのは、TPPの大きな経済的な効果と、みなさんが目指す各業界への影響の２点です。国内農業への影響も大事なテーマですが、この点はまたの機会に。
安倍首相は今日の記者会見で「TPPは私たちの生活を豊かにしてくれます」と成果を強調しました。TPPが発効すると、日本から参加11カ国への輸出は貿易額、品目ともに99.9％の関税が10年以内に撤廃されます。関税がすぐに撤廃された場合の経済効果として、政府は10年後に輸出が年2.6兆円増え、GDPが年3.2兆円増えるとはじいています。ただ、すぐに撤廃されないものもあり、政府はあらためて試算を出す方針です。
TPPは貿易だけでなく、投資やサービス、知的財産や電子商取引など、幅広い分野でルールが共通化されるのが特徴です。業界への主な影響は表を見てください。
自動車業界にとっては、完成品や部品の関税が撤廃される方向なので、基本的に追い風です。ただ、自動車メーカーも部品メーカーも、すでに現地生産を進めているため、すぐに大きな恩恵はないと見られています。
バイオ医薬品を開発した企業が独占的に販売できる期間は「実質８年以上」で現状と同じです。日本の製薬企業にとっては、新興国で独占販売できる期間が延びるメリットがあります。
海外に投資する環境は良くなって、ベトナムやマレーシアでは、規制が緩和され、日本の銀行やコンビニが出店しやすくなります。
一方、輸入品も10年以内に95％の関税が撤廃されるため、食品メーカー、外食産業、流通業界は、国内の消費者に米国やオーストラリアの安い農産物を提供できるようになります。国内の食品関連のビジネスにもインパクトを与えそうです。
食品が安くなるという身近な話題でもあり「消費者目線」で見がちだと思いますが、就活生は企業にとってどうなのかを考える「ビジネス目線」でTPPの今後に注目する必要があります。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去１年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です（通常月額3800円）。
2024/04/16 更新
※就活割に申し込むと、月額2000円（通常3800円）で朝日新聞デジタルが読めます。
1
2
3
4
5
6
7
 |
新卒採用ポータルサイト「あさがくナビ」への求人情報掲載はこちら |
|---|---|
| 新卒採用合同セミナー「就職博」への出展詳細はこちら |
Copyright © The Asahi Shimbun Company All Rights Reserved.
