ニュースのポイント
世界同時株安が続いています。中国の株式市場の急落に始まり、ヨーロッパ、アメリカ、そして日本と、株式市場が開く順に地球を何周もして連鎖しています。日本企業の業績、安倍政権の経済政策
アベノミクスにも大きな影響を及ぼしそうな事態です。カギを握るのは中国経済。何が起きているのか、仕組みをわかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「NY株 一時1000ドル安/その後買い戻し/やまぬ世界株安/円急騰、一時116円台」です。総合面(2面)の「時時刻刻・中国減速 市場恐々」と「いちからわかる! 世界株安のきっかけ 上海総合株価指数とは?」も載っています。
記事の内容は――中国経済の先行きなどを懸念した世界的な株安は週明けの24日も止まらず、東京株式市場では
日経平均株価が前週末から895円も急落した。米ニューヨーク市場でも
ダウ工業株平均が一時、前週末終値に比べ1000ドル超下落した。米メディアによると取引時間中の下落幅としては過去最大級。終値でみた過去最大の下げ幅は、
リーマン・ショック直後の777ドル(2008年9月)だ。アジアや欧州各国の株式市場も軒並み下落した。
外国為替市場も大きく動き、リスクを避けようと、比較的安全な資産とされる円を買う動きが強まり、円相場は一時、今年1月半ば以来約7カ月ぶりの1ドル=116円台まで円高が進んだ。円高は日本からの輸出の採算を悪化させるため、日本の実体経済に悪影響を及ぼす可能性がある。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
昨日の「ニュース★あらもーど」でも取り上げましたが、2008年に起きて「世界同時不況」につながったリーマン・ショック以来の「世界経済の転換点」となる可能性も出てきました。「震源地」は中国です。中国では、不動産市況の低迷をきっかけに産業界全体が減速し、最近発表された7月の経済統計で生産、投資、消費の指標が軒並み下落していることがわかり、中国経済失速の懸念が強まりました。
世界経済での中国経済の存在感がそれだけ大きいということです。
日本貿易振興会(ジェトロ)によると、欧州連合(EU)、アメリカ、東南アジア諸国連合(ASEAN)の2014年の対中輸出額は、リーマン・ショックのあった2008年と比べて約1.5~1.7倍に増加。日本からの輸出は日中関係の悪化などでピークより減っていますが、それでもアメリカに次ぐ2番目の輸出相手国です。輸出と輸入を合わせた貿易総額では、中国は2013年からアメリカを抜いて世界最大の国になりました。中国政府によると「中国は128カ国にとって最大の貿易相手国」だそうですから、その影響力の大きさがわかります。
今日のオピニオン面では、経済学者の猪木武徳(たけのり)さんが「中国は世界経済の主役に躍り出ました。いまや、中国経済がうまくいかなくなって得をする国は一つもありません」と述べたうえで、今の中国が、経済がうまくいかなくなった戦前の日本に似ているとして、中国の「軍事的膨張」を心配しています。
このまま中国経済が悪化すると、世界経済、日本の経済はどうなるのでしょう? 構図を整理します。
【世界への影響】
◆
中国経済悪化→中国向けの輸出が落ち込む→
①日本を含む先進国や新興国の中国への輸出が減って経済が悪化
②原油や金属資源の中国での消費が減って価格が下がり資源国経済が悪化
【日本への影響】
アベノミクスは、
◆
円を市場に多く流通させ(日銀による金融緩和)円の価値を下げて円安にする→円安になると海外で日本の製品が割安になって売れるため日本企業の業績が上がる→日本企業が賃金を上げる→日本国内の消費が増える→さらに日本企業の業績が上がる
という「経済の好循環」を目指しています。このため、今回の世界株安で円高が急速に進むと、アベノミクスが逆回転をはじめて、
◆
円高→輸出企業の業績悪化→賃上げの動きストップ→消費低迷
となりかねないと心配されています。
今の4年生の就活は「売り手市場」で学生にとって有利な状況ですが、もしかすると来年の就活の状況は一変しているかもしれません。世界経済の大きな枠組みを理解したうえで、注視してください。
中国経済悪化の影響については、8月5日の今日の朝刊「中国がくしゃみすると…日本企業は?」でも書きました。まだの人はこちらも読んでくださいね。
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