2015年07月17日

ピース又吉さん芥川賞! 個性をアピールしよう(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:文化

ニュースのポイント

 お笑い芸人の又吉直樹さんが、芥川賞をとりました。芥川賞は、主に純文学の新人に与えられる賞で、過去に石原慎太郎さん、大江健三郎さん、村上龍さんなどもとった有名な賞です。又吉さんはお笑いの世界を本業としながら作家としても活動を始めようとしています。二足のわらじと言えば、会社勤めをしながら小説を書いて芥川賞をとった人もいます。会社に入ることは趣味をあきらめることではなく、両方充実させることができるという前向きな考え方をしたほうがいいと思います。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、1面の「ピース又吉さん芥川賞」です。
 記事の内容は――第153回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれた。芥川賞には、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(35=写真)の「火花」と羽田圭介さん(29)の「スクラップ・アンド・ビルド」が選ばれた。直木賞は東山彰良さん(46)の「流」に決まった。お笑い芸人の芥川賞受賞は初めて。副賞は各100万円。贈呈式は8月下旬、東京都内で開かれる。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 又吉さんのように二足のわらじを履いている作家に磯崎憲一郎さん(50)がいます。「終の住処」で又吉さんより6年早く芥川賞を受賞しました。その時、磯崎さんは三井物産の人材開発室次長でした。その後、人材開発室長となり、現在は、広報部長です。小説は40歳前に書き始めました。その後、小説家として毎年のように作品を発表しており、芥川賞以外にもいくつもの文学賞をとっています。今年も新潮社から「電車道」という小説を出しています。

 私は2年ほど前、雑誌の企画で磯崎さんと対談しました。磯崎さんが、三井物産の採用責任者だったときです。「磯崎さんは、どういう学生をとりたいと思っているのですか」という問いに対する磯崎さんの答えは明確でした。「個性のある学生に来てもらいたいと思っています。そうした個性のあるいろいろな人材がいることで多様な人間の集団を作っていきたいのです」。つまり、この分野では人に負けないというところを持っていたり、人とはかなり違う経験をしてきていたり、一風変わったアイデアがひらめいたりするような人たちというイメージです。作家でもある磯崎さんがいうと、説得力がありました。
 
 ライフネット生命の出口治明会長(67)は、大変な読書家でご本人もたくさんの本を書いています。特に世界史の知識は学者顔負けで、「仕事に効く教養としての『世界史』」(祥伝社、2014年)などを出しています。出口さんの採用に対する考え方もユニークです。ライフネット生命では30歳未満を新卒としています。別に直前に卒業していなくても、30歳未満なら新卒として受験できます。出口さんのインタビューなどを読むと、「回り道や寄り道をして色んな経験を積んでいることが重要です。他人と違うことを考え、なおかつそのアイデアを実行に移す能力が仕事では最も大切ですから」と言っています。

 日本の会社は多様な人材を求めています。優等生タイプだけでなく、とんがっている異才も求められているのです。小説を書いている、音楽活動をしている、スポーツに打ち込んでいる、ボランティアに一生懸命、漫画やゲームが大好き、何でもいいのですが、就活ではそういうことを隠す必要はありません。自分の個性をどんどんアピールしてください。。そして、「会社に入っても続けるの」と面接で聞かれたら、「続けるつもりです」と胸を張って答えたほうがいいでしょう。

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