2017年11月17日

横浜でライブ会場ラッシュなぜ?エンタメ業界の事情と狙い【今週のイチ押しニュース】

テーマ:文化

 横浜市のみなとみらい(MM)地区に大規模な音楽アリーナの建設が次々に決まっています。背景には、この10年間でCDなどの音楽ソフトの売り上げが半分近くに減る一方、コンサートの市場規模は2倍に成長するという音楽・エンターテインメント業界の激変があります。「CDからライブへ」の動きは、所有重視の「モノ消費」から体験重視の「コト消費」へのニーズの変化でもあります。音楽ファンにはとっても気になるニュースですが、今日は就活でも人気の音楽やエンタメ業界の事情を「ビジネス目線」で探ってみましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、新たに進出が決まった2万人規模の音楽専用アリーナのイメージ=ケン・コーポレーション提供)

「音楽のテーマパークに」

 今回、MM地区にできることが決まったのは、不動産会社ケン・コーポレーション(本社・東京都港区)がつくる2万人収容の音楽専用のアリーナ。ホテル棟、オフィス棟、展示施設棟も併設し、2021年度に完成する予定です。音楽会場としては世界最大級の規模で、トップクラスのアーティストのコンサートを常時開催することを想定しています。横浜は夜楽しめる場が少ないと指摘されることから、いつでも楽しめる「音楽のテーマパーク」として訪日外国人客も呼び込む狙いもあるそうです。
(写真は、みなとみらい地区の全景=2017年1月)

みなとみらいに5ホール集中

 MM地区では2020年春に、ライブハウスの「Zepp」が2000人規模のライブ会場を、「ぴあ」も1万人規模の音楽専用アリーナをオープンさせる予定です(写真はアリーナのイメージ=ぴあ提供)。ほかにも既存のホールがあり、以下の5会場が集中します(◆はすでにある施設)。

◇2万人規模の音楽専用アリーナ(ケン・コーポレーション、2021年度完成予定)
◇1万人収容の音楽専用アリーナ(ぴあ、2020年春開業予定)
◆5000人収容の「パシフィコ横浜国立大ホール」
◆2000人収容の「横浜みなとみらいホール大ホール」(クラシック音楽向け)
◇立席2000人規模のライブハウス型ホール「KT Zepp Yokohama(仮称)」(コーエーテクモゲームスとZeppホールネットワークの共同事業、2020年春開業予定)

 それぞれ特徴があるため、進出する各社は相乗効果で「みなとみらい全体を音楽の街に」と意気込んでいますが、そんなに需要はあるのでしょうか?

CD半減、ライブ倍増

 音楽・エンタメ市場は、この10年間で激変しました。国内のCDの生産実績は、2007年には約3272億円でしたが、アップルやLINEの音楽配信サービスが急速に普及し、2016年は約1749億円と半分近くに減りました(日本レコード協会調べ)。一方で、音楽ライブの市場規模は、2007年の1450億円から2015年には3405億円と2倍以上に急増(ぴあなどの「ライブ・エンタテインメント白書」)。ところが、2016年は3372億円と前年より減ってしまいました。

 実は、恒常的なライブ会場不足に加え、2016年は横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナなどの大規模会場の改修が重なったのが原因とみられています。白書は「公演回数は増加しているものの、アリーナクラス会場での公演が減少した影響を受けて、1公演あたり動員数が低下」したと分析。会場さえあれば、ライブ市場はまだまだ伸びると読みです。

 2020年には東京五輪・パラリンピックの影響で、首都圏の会場不足はさらに深刻化するといわれています。2万人アリーナは間に合いませんが、MM地区の会場新設ラッシュはこれを見込んだ動きでもあるわけです。

過去10年のCD生産実績(日本レコード協会)
2017ライブ・エンタテインメント白書サマリー版

志望業界の「コト消費」考えよう

 今回の新設ラッシュについて、ぴあの担当者は「物を買って所有する『モノ消費』から、体験や思い出を買う『コト消費』に消費者の好みが移っていることが、音楽市場に現れている」と話しています。

「コト消費」は、音楽・エンタメに限らず、訪日客向けの観光や旅行関係、百貨店などの小売業をはじめ、消費者相手の幅広い業界に広がっているニーズです。エンタメ志望ではない人も、自分の志望業界の「コト消費」の可能性についても考えてみてください。

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