2015年03月31日

ACミラン・本田選手に学ぶ 語学力で内定する?

テーマ:就活

ニュースのポイント

 朝日新聞社の採用担当部長だったとき、学生から「英語が苦手です。語学力はどのくらい必要ですか?」という質問をよく受けました。グローバル化の時代ですから、どの企業も語学力のある学生を求めています。では、英語ができればすぐに内定が取れるのでしょうか? サッカーの本田圭佑選手が登場するベネッセのCMから考えます。(写真はACミラン入団会見)

 今日取り上げるのは、番組解説面(26面)の「はてなTV/セリフは本田選手が考えた?」です。
 ドラマやCMに関する読者の疑問に答えるコーナーです。記事の内容は――イタリアのACミランで活躍中の本田選手が子どもたちと歩きながら「あきらめなければ、負けはしない」「未来を見よう。夢はずっと照らしてくれるから」とイタリア語で語るCM。「すべては努力次第だ」と英語で語るバージョンも。ベネッセコーポ-レーションによると「セリフは、本田選手の体験に裏打ちされた意見を聞いて台本に取り入れた」。スタッフによると「(本田選手は)サッカーの技術だけではなく、コミュニケーション手段としての言葉の技術の大切さを強調していました」。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 本田選手がイタリア語や英語で堂々と語る姿が印象的なCMですね。昨年初めのACミランの入団記者会見では、少したどたどしさはあるものの受け答えをすべて英語で通し、自信に満ちた表情でユーモアも交えて語る様子が話題に。ロシア1部リーグで活躍後、多額の年俸で移籍した本田選手には「グローバル人材の鑑(かがみ)」との称賛の声まであがりました。

 記事にもあるように、コミュニケーションの手段として語学力は極めて重要です。TOEICで一定の点数を受験の条件にしている会社もありますし、楽天や日産自動車のように英語での社内会議が当たり前の企業も増えています。高い語学力は就活で強力な武器になるのは間違いありません。

 では、語学力さえあれば楽勝か? 「人事のホンネ」で三井物産の中野真寿さんはこう言っています。
 「英語は必要ですが、流暢(りゅうちょう)に話せなくたって通じるものは通じるし、片言しか話せなくても『こいつと仕事がしたい。肩組みたい』と思わせる人間力ってあるじゃないですか。だからうちは英語だけでは落とさない。実際、TOEICの得点が初級レベルとか、英語が苦手な人でも入社しています。入ってから大変ですが、入社後はみんな当社のボーダーラインをクリアするレベルに達しています。そういうことだと思うんですよ。いくらTOEICの得点が満点だろうが、どんなに履歴書がすばらしくても、それだけでは判断しない、ということです」

 当たり前ですが、本田選手も英語やイタリア語が上手だからではなく、サッカーが上手だから世界最高峰のチームに呼ばれました。小学校の卒業文集に書いた「セリエAで背番号10」という夢を実現するために、英語の勉強をしていたそうです。イタリア語は本格的にはACミランに入団し、必要だから勉強したのだと思います。

 冒頭の学生の問いに、私もこう答えていました。「基準はありません。仮に同じレベルの学生が二人いたとして、一方が語学に秀でていたらかなり有利ですね。ただ外国語が抜群にできるけれど人柄はいま一つの学生と、極めて優秀で人柄もよいが語学力は人並みという学生がいてどちらかを採用するなら、後者を採って海外特派員にする前に語学留学させますね」。それでも、朝日新聞社の筆記試験には毎回英語の問題も出題しています(朝日新聞社の採用ホーム-ページで公開しています)。一定レベルの語学力はないと困りますから。

 結論は、語学力はあるに越したことはないし、高いレベルを求める企業もあるが、語学力だけで採用する会社はない、ということです。苦手な人は、自信を持ってアピールできる別の長所を磨きましょう。

※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。ぜひ登録してください。

アーカイブ

テーマ別

月別