2015年02月06日

原油安 損する商社、得する航空…業界で明暗

テーマ:環境・エネルギー

ニュースのポイント

 原油安の影響が広がっています。昨夏の半値以下という急落だけに企業の業績を直撃しており、業界によって明暗がはっきり分かれています。商社や石油元売りにはマイナスとなる一方、航空業界をはじめ幅広い業界にはプラスです。最新のニュースで業界、企業研究を深めてください。

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「原油安 業種で明暗/商社、投資に苦戦・航空は恩恵」です。
 記事の内容は――原油など資源の値下がりが企業の業績を揺さぶっている。商社や石油の元売りは、資源への投資や在庫の評価損が1兆3000億円に達する。伊藤忠商事は、米国での石油とガスの開発取りやめが相次ぎ、損失の合計は130億円に。大手商社5社の資源安に伴う損失は計5000億円近い。石油元売り会社5社の在庫の評価損は計8000億円。工作機械は、資源開発のために岩盤を掘るドリルなどをつくる機械の受注にブレーキがかかり始めた。一方、恩恵は燃料費が減る航空業界をはじめ幅広い業種の企業や家計に及び、日本経済全体にはプラスになりそうだ。日本航空(JAL)は純利益の見通しを引き上げた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 原油安の原因は、簡単に言うと――米国のシェールガス生産で供給が増えた一方、中国や欧州経済の減速で需要は低迷、それなのに石油輸出国機構(OPEC)が減産しないと決めた、といったところです。詳しくは、「原油安、どうして?どうなる?国際経済を知ろう」(2014年12月17日、今日の朝刊)を読んでみてください。

 原油安がマイナスの業界、プラスの業界を整理します。
【マイナス】
・記事で紹介した商社、石油元売りのほか、油田などエネルギー開発や生産設備、装置一式の設計や資材調達、施工を手がけるプラントエンジニアリング

【プラス】
・燃料のコストが下がる航空、海運、陸運(鉄道、トラック輸送)業界、旅行業界
・原油に連動して、発電などの原料となる液化天然ガス(LNG)の調達コストが下がる電気、ガス業界
・石油からつくるプラスチック、合成繊維、合成洗剤、タイヤなどをつくる化学業界やゴム業界、ガラス業界など
・舗装材の原料であるアスファルト価格が下がる建設業界
・輸送コストが下がる様々な小売業、サービス業

 原油安に連動して、LNGや鉄鉱石、石炭、銅などの資源も値下がりしています。輸送費や電気料金が安くなると、原油を直接使わない企業にもプラス効果があります。生産コストの半分が輸送費や化学肥料といわれる小麦やトウモロコシなどの穀物価格にも影響するので、食料品全体が下がるかもしれません。多くの企業の収益が押し上げられると同時に、家計も楽になって消費が増えるなど、長期的には日本の経済に良い影響を与えるとの見方が有力です。一方で、輸入価格を上げる円安傾向も続いているため単純ではありませんが、日本経済に及ぼすプラス効果を「年間数兆円」とはじく民間調査機関もあります。志望する業界にどんな影響があるのか、それぞれ考えてみてください。

 今週の「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」は、いずれも原油安を特集しています。読むと勉強になりますよ。

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