あきのエンジェルルーム 略歴

2014年11月13日

ダイバーシティ(女性登用)は「やめられない、とまらない」♡Vol.11

 いつも心にエンジェルを。

 「やめられない、とまらない、かっぱえびせん♪」
 昔なつかしのCMソング、みなさんはご存じですか? 今回のエンジェル企業は、ポテトチップスなどでおなじみ、スナック菓子会社のカルビーです。
 カルビーは「ワークライフバランス(WLB)」という言葉を使いません。従業員の生活、「ライフ」こそ重視すべき、というスタンスを明確にしたいということで「ライフワークバランス(LWB)」という言葉を使っています。考え方からしてエンジェルですね(笑)。
 
 創業は1949年、老舗のイメージがありますが、東証1部に上場したのは2011年。意外と最近です。その前後からカルビーは劇的に変化してきました。その原動力となったのが、2009年、いわゆる「プロ経営者」として会長兼CEO(最高経営責任者)に就任した松本晃さんの存在です。 
 松本会長は京大農学部出身で最初は伊藤忠商事に就職します。1993年に外資系医療機器メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンに転職、日本法人の社長、最高顧問を歴任。そしてグローバル戦略を充実させたいカルビーに招かれました。
 期待された通り、中国でのスナック菓子市場の拡大など、さまざまな手を打つ一方で、松本会長は、2010年に社内に「ダイバーシティ委員会」を発足させ、女性管理職を増やすための努力をしてきました。2009年の会長就任当時、カルビーの従業員の男女比率はほぼ半々、しかし、女性管理職の割合は6%未満でした。
 当時、松本会長は「この会社は1世紀くらい遅れているね」と言っていたそうです。そこから、カルビーのダイバーシティが一気に進みました。
 人事総務部部長で、ダイバーシティ委員会委員長でもある高橋文子さんによると、カルビーはそれ以前から、育休制度など、子育てしながら仕事を続ける環境はそれなりに整っていたそうです。しかも、業績や売り上げにガツガツする社員は少なく、いい商品さえ作っていれば満足という、わりとのんびりした社風だったせいか、ママ社員への風当たりもなく、働きやすい雰囲気だったそうです。するとダイバーシティを推進して、何が一番変わったのでしょう。

 「それまでは育休や時短の制度はあっても、その制度を使ったら、管理職なんてできるはずはないと女性自身が思い込んでいたところがありました。今回、会長の考えで、『女王蜂』は作らない、女性を抜擢するときは複数同時に、というのを徹底したんです。たとえば、男性役員ばかりのなかに女性役員が1人というのでは、本人は孤独でしょうし、失敗が許されない雰囲気にもなりますが、一度に3、4人の女性を役員や部長に上げることで、仕事の出来不出来は、性別ではなく個人の力量の差に過ぎないことが、会社全体で共有できるようになった。それが大きかったですね」(高橋さん)
 確かに、男性管理職でも20人いればそのうちの何人かは失敗もするでしょう。でも、もしたった1人抜擢された女性管理職が失敗したとき、「だから女性は…」となるとしたら、不公平ですよね。

 半年前、松本会長があるイベントで、「日本で最初の2030企業になりたい」と宣言。2020年を待たず、どの企業よりも早く、女性管理職が30%を超える企業として名乗りを挙げたいと話されていました。
 カルビーのダイバーシティは「女性」だけに限りません。健常者と障害者、日本人と外国人、さまざまな壁を取り払おうと努力しています。役員もトルコ人の女性、中国人の男性など、まさに「多種多様」です。
(左写真はとってもオープンな役員室)

 松本会長は、日本の企業で女性の登用が進まないのは、「(女性を登用して)業績が悪化した際に批判されるリスクをトップが取ろうとしないから」だと分析していました。
 つい先日も「男性の役員ばかりの会社の業績が悪くても、だから男性はダメなんだ……という話にならないのに、女性の役員をたくさん登用して、業績が悪くなったら、女性のせいだなんて、よく言えるよなあ」と話していたそうです。深~く共感します。
 同社がダイバーシティを推進しはじめて5年目ですが、2013年には2児のママ社員(40代)が退社16時という時短勤務をしながら、執行役員に就任しました。「週に48時間働けば、退社は15時でも16時でもいい、きちんと結果を出せればいい」と言われ、実際に限られた時間で、初年度の目標を達成したそうです。
 会社全体でみても、2010年4月には5.9%だった課長職以上の女性管理職比率は、2014年4月には、14.3%にまで増えました。2015年4月には16%を超える見込みだそうです。しかも、課長より本部長クラスでの女性比率のほうが高く、実に25%、4人に1人が女性です。

 ちなみに松本会長が就任してからのカルビーの業績ですが、就任後4年間で、売上高3割増、純利益270%増という快進撃を続けています。 
 2014年3月には東証と経産省が選ぶ、女性活用に積極的かつ、財務面でも健全な「なでしこ銘柄」になり、7月には経済広報センターが選ぶ「企業広報賞」(優れた広報活動に取り組む企業や経営者に贈る賞)の「経営者賞」に松本会長が選ばれています。
 松本会長がいなくなったら元の木阿弥……とならぬよう、カルビー社員のみなさんの「地盤固め」に期待したいと思います。

 職業柄、株は買えないので、帰りのコンビニで、かっぱえびせん買って応援します。