あきのエンジェルルーム 略歴

2016年05月26日

正社員、なるより続けるほうが大変? ♡Vol.69

 いつも心にエンジェルを。

 先日、都内で開かれた女性活躍を推進するセミナーに行ってきました。その中でとても興味深かったのが、転職や再雇用などにビジネスチャンスがある、つまり女性のキャリアがいったん途切れたときにこそ需要がある、人材サービス会社の社長でさえも、女性が正社員の立場で働き続けることの大切さを力説していたことです。

 主婦や中途退職者の再就職に強い人材会社ビースタイル(東京都新宿区)の三原邦彦社長は「今はもう女性が寿退社する時代ではない。結婚しても出産しても働き続けるのが当たり前。女性がゆるく働いていては会社がもたない。会社側も女性が成果を上げることを本気で期待しているが、まだその経済効果がわかっていない企業もある。そこが課題だ」と話していました。 
 三原社長は男性、女性にかかわらず働く世代を、DO世代(45歳以上)、HOW世代(35~45歳)、WHAT世代(25~35歳)と名付け、若いWHAT世代が、「働き方」改革の立役者になっていくだろうと期待しています。
 三原社長によると、DO世代はいわゆる長時間労働世代で、仕事のやり方は上司の指示や先例にならってがむしゃらに働き、それなりの成果が出たので、自分の働き方をなかなか見直せないといいます。HOW世代は、そういった滅私奉公的な働き方に疑問を持ち始めた世代、そしてWHAT世代こそが、長時間労働や精神論、人間関係、仕事量に縛られない働き方ができる世代だというのです。
 
 ポイントは「成果にならないこと、効果を見込めないことはやらない」と割り切れるかどうか。平たくいえば上司から指示されたことでも「こんなことやる意味あるんですか」と言い返せるかどうか。想像するとなんとなく人間関係にひびが入りそうですよね。そんな発言をしても「にらまれない」だけの実績はもちろん必要ですが、これが言えないと、その会社はDO世代の独壇場になってしまい、成長は見込めないというわけです。DO世代は退職も近いですし、そのまま逃げ切れるかもしれませんが、会社員人生がまだまだ続くWHAT世代には今いる会社が成長するか衰退するかは非常に大事な問題ですよね。

 実はDO世代が、意思決定などに幅を利かせている古い体質の会社では、優秀な社員、主に女性社員が20代後半、だいたい27歳くらいで転職市場に出て来るのだそうです。つまり今の職場環境ではキャリアアップが見込めないとあきらめてしまうのですね。これは、新卒でこの女性が就職した企業にとっても、せっかく優秀な人材を採用したのにその果実を得ないまま失うという大きなロスです。一方の女性にとっても、正社員だった前職より好条件の再就職先をさがすのは至難の業。あえて得をした人をさがすとすると、この優秀な女性を、本来の値打ちよりお安く雇用できた再就職先かもしれませんが、この企業が必ずしも彼女の能力を生かせるとも限りません。再び短期間で転職、ということもありえます。そうなると、企業にも成果が残らず、働く女性のほうもキャリアアップどころか、気付いたころには履歴書には社名がズラリ、ということになりかねません。次の転職では「あきっぽい性格なのかな」「うちでも仕事の内容を覚えたころに辞めてしまうかも」「契約ならいいけど、正社員ではちょっと……」という風に、ますます労働条件が悪化することは目に見えています。
 いま、サラリーマンの平均年収は1人あたり415万円です(出典:国税庁「平成26年分民間給与実態統計調査結果」)。でも、男女で分けて考えると、男性は514万円、女性は272万円と倍近い開きがあります。正社員だとやや差が縮まって男性が532万円、女性359万円、非正規だと、男性で222万、女性で148万円です。

 この連載でよく読まれているバックナンバー「大手の派遣より、中小の正社員ってホントかな? ♡Vol.12」にも、正社員のメリットについて触れていますので、よかったら読んでくださいね。

 正社員として同じ企業に入った同期社員(総合職の場合)の初任給は男女で変わりません。「つまり男性だけ出世して女性は出世しないから、同じ正社員での給与の差が開くのね」と思う人もいるかもしれません。それも少しはありますが、実際には、せっかく正社員として女性社員が入社しても、年収が上がる中高年になるまでに辞めてしまい、会社に在籍するのは年収の上がる前の若い女性ばかりになり、女性の正社員の平均年収は低いままなのです。
 先日、大卒女性の就職率が、過去最高の98.0%になったというニュースがありましたね。これはあくまでも就職希望者が就職できた割合で、就職以外の進路を選んだ人も加えると、実際に就職したのは卒業生全員の7割ちょっと、ということになります。
 学歴を分けず、全女性で考えた場合でも、出産するまで仕事を持っている女性は全体の約7割です。仕事を持っている女性を100%とすると、そのうちの62%が出産を機に退職しています(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」)。
 
 なぜ、女性は仕事と家庭の両立が難しいのかについてはさんざんこの連載で書いていますから省略します。大変なのは重々承知ですが、それでも、「正社員という立場を安易に捨ててはいけない!」と声を大にして言わせてもらいます。再就職市場では、年収300万円以上の定職につける女性は、就職を希望する女性の10%未満といわれています。

 もし、初任給で年収300万円程度の企業で働き続けていれば、40代、50代のころには、年収500万も夢ではありません(あくまでも終身雇用の慣行などが続けばですが)。産休、育休を使って、なんとかキャリアを途切れさせない工夫をしてほしいと思います。

 次回、そのためにはどんな工夫をすればいいか、そのヒントについてご紹介します。