あきのエンジェルルーム 略歴

2016年06月09日

就活も社会人生活も「全力投球」は期間限定? ♡Vol.70

 いつも心にエンジェルを。

 6月1日は採用選考解禁日でしたね。最近はインターンなども含め、就活が長期化しているといわれますが、がんばらなければいけない時期はせいぜい1年。「就活という限られた期間すらがんばれない人に仕事を任せようとは思わない」という採用担当者もいます。ゴールが見えてきた人、まだ闇の中にいる人、明けない夜はありません。もうひとがんばりです。
 前回は、正社員というポジションを手放すリスクについて書きました。とはいえ、結婚、出産などライフイベントがてんこもりの女性にとって、働き続けるというのも、そう簡単ではありません。

 出産など、ライフイベントの「前」と「後」で全く同じ働き方ができる女性社員は、夫が主夫だったり、祖父母が近くに住んでいたり、という環境に恵まれた人だけ、一握りです。たとえ福利厚生が整っていて、しっかり育休を取り、時短勤務などを使って両立できたとしても、心の中では会社や同僚に対し、自分だけ先に帰ることに申し訳なさを感じたり、子どもに寂しい思いをさせているのではないかと罪悪感を持ったり、憂いなくというわけにはいかないものです。

 そんな「負のスパイラル」を断ち切るヒントを一つ紹介します。前回登場した人材サービス、ビースタイル三原邦彦社長の名言です。
 そんな「負のスパイラル」を断ち切るヒントを一つ紹介します。前回登場した人材サービス、ビースタイル三原邦彦社長の名言です。

「がむしゃらは26歳まで、27歳以降は仕事に『全力投球』はやめて、仕事以外に余力を残せる働き方を始めてください」

 エーッ、手抜きしろってこと? いえいえ、そうではありません。

 みなさんはおそらく、就職したら仕事に全力で取り組もうと思っていますよね? もちろんそれはとても大事なことなのですが、がむしゃらに働いて成果を出すという働き方に慣れてしまうと、結婚や出産で、時間に制約ができたとき、自分の仕事ぶりに、自分自身が満足できなくなります。もちろん、会社勤めをしている以上、子育てにも全力投球とはいかないでしょう。すると、体力的に疲弊するのはもちろんのこと、精神的に「どっちも中途半端じゃん!」というフラストレーションがたまってしまいます。100%、120%の力で仕事をがんばってきた女性はなおさら、そこでキャリアへの展望を失い、退職してしまいがちなのです。
 三原社長の場合、トライアスロンをたとえに使って女性たちに説明するそうです。オリンピックの種目にもなっていますし、みなさんもトライアスロンは知っていますよね。スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(ランニング)の3種目を連続して行い、そのタイムを競う競技で、「鉄人レース」とも言われる過酷な競技です。

 たとえば仕事をラン、家事を自転車、子育てを水泳としましょう。ランにだけ全力で取り組んでいた人が練習もコースの下調べもなしに自転車を完走できるでしょうか? 水泳はどうでしょう? プールであれば多少は泳げる人でも、予想外のことが次々起きるような海(子育て)で泳ぎ切れるでしょうか? ほとんどの人は溺れるか、リタイアするでしょう。日本の働く女性の多くは、独身時代はラン(仕事)に全力投球して、マラソンならなんとかなるかも?程度の状況で、何のシミュレーションもなく鉄人レースに挑戦しているようなものだというのです。
 ではどうすればいいのか。

 簡単です。大きなライフイベントのない時期、自分のために時間が使える時期でも、その時間をすべて会社に差し出さないことです。独身時代のうちに時短といわないまでも、せめて定時退社でしっかり成果を出せる働き方を確立するのです。あえて確保した余力(自由時間)は、映画や読書など趣味に使うもよし、会社以外の人間関係を充実させるために地域活動やボランティアに取り組むもよし、ただボーッとしたっていいのです。そうすればライフイベントが入っても、仕事の時間を削るのではなく、余力の部分で対応することができます。しかも、短い時間で成果を出せる働き方のコツはすでにつかんでいますから、時短勤務などを選んだとしても罪悪感を持つことも少なくなるでしょう。

 しかしながら、新入社員がいきなり自分の時間を大切にしたい、と言って通用する会社はなかなかありません。だからこそ、入社して3年は仕事を覚えるためにがむしゃらに働いて、実績をつくれ、ということです。三原社長はいいます。「この時期は働けば働いただけ成果も上がる、つまり仕事量と成果が自然と比例する時期。でも、4年目以降も同じ働き方をしていては、その働き方がデフォルト(初期値)になってしまい、ライフイベントへの備えができません」

 なるほどですね。
 女性活躍推進が進む背景で書きましたが、日本の労働力人口は何の施策も打たなければ減り続けます。総務省統計局「労働力調査」によると、2000年には約6770万人いた労働力人口は、2030年の推計では、6180万まで減ると推測されています。業界や企業の規模によって一概にはいえませんが、ざっくり計算すれば100人でやっていた仕事を91人でやらないといけないわけです。今でも長時間労働で苦しんでいる人がいっぱいいるのに、1人あたり1割増しの労働量が求められるとしたら大変ですよね。

 だから「女性活躍」なのです。女性の優秀さがわかった、男女平等の時代だから、というのではなく、要するに働く人が足りないだけなのです。移民やAI(人工知能)で労働力を補うという意見もありますが、まず言葉や文化の壁もなく、先行投資のあまり要らない女性から、というのが企業のホンネ。だから眠っている労働力として女性が注目されているのです。中でも主婦や出産退職した女性の再就職であれば、男性より一般的に「安価」で雇えますから、企業からすればいいことずくめなのです。

 どうです。「働かせてもらっている」のではなく、「働いてやっている」と、ちょっと強気な気持ちになれませんか。

 あ、でも就活の段階では「上から目線」はやめましょうね。