あきのエンジェルルーム 略歴

2015年04月16日

男女の平均勤続年数の差を気にしすぎない! ♡Vol.32

 いつも心にエンジェルを。
 
 女性を大切にする会社の見分け方の一つに、男女の平均勤続年数の差という指標があります。つまり、女性の勤続年数が男性に比べて極端に短い場合、女性社員が結婚退社、出産退社するのが「普通」という会社の可能性が高いからです。

 しかし、そうでなくても、勤続年数の差が出てくるケースがあります。男性主流の会社から生まれ変わろうと、女性の新規採用に急激に積極的になったという場合です。ロールモデルは少ないけれど、女性登用の熱意はあるという、いわば過渡期の会社です。
 今回は住宅建設業界としては唯一、2013年、2015年と2度も、「なでしこ銘柄」に選定されている積水ハウスを紹介します。なでしこ銘柄は、上場企業のなかから東京証券取引所と経済産業省が、女性活躍推進に工夫があり、財務内容も健全という企業を選んでいます。(上写真は同社のゼロエネルギー住宅「グリーンファーストゼロ」)
 同社の従業員数は1万5750人、そのうち約18%が女性です。これまでほとんどいなかった営業系の女性総合職採用をスタートしたのは2005年度から。女性採用の歴史が浅いぶん、平均勤続年数は男性が16.88年、女性が9.53年とまだまだ差があります。ここ数年間、積極的に女子を採用したため、若い女性社員が多く、平均すると勤続年数が低く出るわけなのです。積水ハウスでは、新卒採用する際、女性比率を営業系20%、技術系30%を目安にしています。優秀な人を選んでいるうち、技術系の新卒女性社員が4割近くになる年もあるそうです。
 同社では2006年3月、「女性活躍の推進」「多様な人材の活用」「多様な働き方、ワークライフバランスの支援」を三つの柱とした「人材サステナビリティ」を宣言しました。サステナビリティは直訳すると「持続可能性」、この場合は、利益だけでなく社会的責任を果たす企業は、将来においても事業を存続できる可能性が高くなる、というような意味です。

 2006年は企業にダイバーシティやサステナビリティという価値観が浸透しはじめた年。背景には団塊世代が定年で大量に退職する時期を控え、これまでの壮年男性中心の企業構造が変容を迫られていたことがありました。
 
 同年8月には同社経営企画部に「女性活躍推進グループ」が誕生しました。グループリーダーで、ダイバーシティ推進室長でもある伊藤みどりさん(左写真)はいいます。
 「それまで住宅営業というと、打ち合わせなどで夜遅くなる、扱うお金が大きいなどの理由から、『女性には難しい』という思い込みがありました。でも思い切って採用してみたら、女性営業はお客様のニーズに寄り添い、大きな商談をまとめてくる。成果を出す女性社員をどう支援していくかが次の課題でした」
 店舗単位でみると、女性社員はまだまだ1、2人の少数派です。そういう女性たちを孤独にさせないために2007年から、全国から女性営業社員を集めた「全国女性営業交流会」(右写真)を年1回のペースで開催するようになりました。全国16事業本部長が参加し、成績優秀者を表彰し、女性社員の活躍事例を発表、社長からのコメントなども出します。
 「男性上司にも参加してもらうことがポイントで、自分の直属の女性部下は活躍していなくても、他の部署で活躍している女性社員がいることがわかる。“女性は全部ダメ”ではなくて、個人差に過ぎず、もしかしたら自分のマネジメントにも問題があるのかも、と『気づき』を持ってもらえるのです」と伊藤さん。

 ロールモデルになりそうな優秀な女性社員が両立に限界を感じ、退職してしまうと、「あの人が無理なら私なんて絶対無理」と若手女性社員のモチベーションが一気に下がってしまいます。そんな事態を防ぐため、結婚後、育児終了までの間、個人の状況に合わせて定休日・所定勤務時間の変更、配偶者の転勤による勤務地変更などに可能なかぎり対応しています。お仕着せではなく、いわばオーダーメイドの制度で女性のロールモデルを支えています。
 制度のほうも育休は最長3年間、短時間勤務、勤務時間の繰り上げ繰り下げも可能です。男女かかわりなく、好評なのは「時間年休」制度です。有給休暇というと、一日単位、あるいは半日単位という企業が多いのですが、同社は1時間単位で休暇が取れます。銀行や病院、学校行事など2時間程度の離席で事足りるような私用に時間年休を使うことで、無駄なく有給が活用できます。

 室長の伊藤さん自身は1974年に入社しました。一般職、総合職というコース別採用すらない時代です。女性社員は補助業務が主で、ほとんどの同期女性は「寿退社」していくなか、結婚、出産を経て、働き続けていた入社10年目、当時の上司から「営業をやってみないか」と提案され、生命保険の営業レディのように、企業をまわって住宅の受注を募る営業に挑戦しました。さらに社宅に出入りする許可を企業にもらい、社宅へ営業に行くスタイルを築きます。社宅にいる妻たちのニーズを吸い上げることで面白いように契約が取れたそう。そして社員とアルバイトの女性5人で社宅営業チームを結成、そのリーダーを任されるようになりました。(写真は同社の住まいづくりのヒント満載「住ムフムラボ」)

 「住宅営業はモデルルームに来た人に対応するのが主流だった時代です。男性社員が、“効率が悪い”と思い込んでいた“御用聞き”スタイルに挑戦してみたら、驚くほど成果が上がりまして。考えてみれば、そもそも住まいづくりには、家事動線、洗濯物を干すバルコニーの位置、炊飯器の置き場所一つとっても女性の目線が欠かせません。最近は、時間の制約があってもいいから、子育て経験のある女性社員を設計担当につけてほしいとおっしゃるお客様もいます」(伊藤さん)。
 2015年4月に入社した同社の新人は621人、そのうち266人、4割以上が女性です。同社の女性の平均勤続年数はしばらくは下がっていく一方ですが、数字だけで「女性が働き続けにくい会社」と判断せず、しっかり企業の目指す方向性をチェックしましょう。

 同期の女性が多いというのもなかなか心強いものですよ。