2014年06月26日

水素と酸素で走る!トヨタ「究極のエコカー」発売へ

テーマ:経済

ニュースのポイント

 トヨタ自動車が、「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車(FCV)を世界で初めて発売します。価格は高級車並みの700万円。燃料を補給する水素ステーションの整備など課題も多くありますが、次世代の車で主導権を握ろうと一歩踏み出しました。政府も支援します。日産などが力を入れる電気自動車(EV)との競争も注目です。

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「燃料電池車700万円で発売/水素・酸素で走行 CO₂輩出ゼロ/トヨタ、今年度内に/政府、普及へ購入補助」です。

 記事の内容は――トヨタは、水素と酸素を動力源にして走るFCVを発売すると発表した。水素ステーションの整備が見込める東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏を中心に、早ければ年内にも売り出す。FCVは、フロント部から酸素を取り込み、燃料の水素と反応させて電気をつくり車を動かす。二酸化炭素は出さず、走るときに出るのは水だけ。ハイブリッド(HV)車でエコカー市場の主導権を握ったトヨタは、FCVを次世代エコカーの本命と位置づける。

 政府も購入補助制度をつくって本格普及に乗り出し、水素ステーションを2015年に100カ所、2015年には1000カ所以上に増やしたい考え。政府は、2025年以降には海外市場でも日本メーカーが主導権を握れると期待する。ホンダも2015年中、日産自動車も2017年には市販に踏み切る構えだが、日産は先行する電気自動車(EV)普及を優先させる姿勢だ。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 FCVは、Fuel Cell Vehicleの略。EVはElectric Vehicle、HVはHybrid Vehicleです。それぞれの特徴は図を見てください。FCVの強みは、CO₂排出ゼロに加え、燃料補給にかかる時間が短く、1回の補給で走れる距離が700キロと長いこと。この点では、EVに比べてずっと使いやすくなります。水素は豊富に存在するため日本国内で生成することができ、石油や液化天然ガス(LNG)のように輸入に頼る必要がありません。今日の経済面(8面)にイラク情勢の悪化によるガソリン価格高騰の記事が出ていますが、FCV利用者はこうしたことに悩まされることはなくなります。

 課題は、水素ステーションの整備と値段が高いこと。このため、政府は1カ所5億円ほどかかる水素ステーションの建設費を下げるため、安全基準などを見直すほか、購入者への補助金を出すわけです。記事にもあるように、政府がFCV普及に本腰を入れるのは、自動車が日本の経済を支える産業だからです。FCVが世界標準となって普及することで国内の経済成長につなげる狙いです。

 FCV開発には巨額の資金がかかるため、世界のメーカーが協力しています。トヨタは独BMWと、日産は独ダイムラー、米フォードと組み、ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携。国際競争、国際協調も複雑な様相です。一方で、ガソリン車の燃費も年々改善されており、中国、インドなど需要が拡大している新興国では、これからも低価格のガソリン車がまだまだ増えます。ヨーロッパでは、クリーンディーゼルエンジンの車が中心で、まだHVも普及していないという事情もあります。自動車業界に興味のある人は、日本だけでなく世界のメーカーの動きも見逃さないでください。

 今日の経済面(8面)には、「ミドリムシで走るバス/ユーグレナといすゞが開発へ」も載っています。ミドリムシを活用するベンチャー企業のユーグレナといすゞ自動車が、トラックやバス用のバイオディーゼル燃料を共同開発するという内容。こちらもエコな話題です。読んでみてください。

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