(写真・東京都内のビッグモーターの店舗=2023年8月)
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(写真・東京都内のビッグモーターの店舗=2023年8月)
調査報告書を公開せず
そもそもの問題は、顧客から事故車の修理を請け負った際、わざと車に傷をつけたり、不要な部品交換をしたりし、修理費を水増しして保険会社に請求した疑惑でした。今年の7月5日までに、弁護士など外部の専門家で構成する同社の特別調査委員会が「不正請求があった」という調査報告書をまとめ、ビッグモーターは5日に公式ウェブサイトで「外部専門家の助言を得ながら再発防止に取り組み企業体質の改善に努める」といった声明を出しています。しかし、ビッグモーターはこの段階で調査報告書を公開しませんでした。
朝日新聞をはじめとするマスメディアが特別調査委員会などを独自取材し、不正の具体的な内容や、「ゴルフボールを靴下に入れて振り回して車をたたく」「ドライバーで車体にひっかき傷をつける」といった社員の証言、過度なノルマの存在が次々と明らかになっていきました。ビッグモーターの創業者である社長(当時)が会見を開いたのは、ようやく7月25日になってから。自らと長男である副社長の辞任をその日に発表し、不正の背景には「ガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令や社会規範の順守)を機能させる組織をつくらなかった」という、自らの「職務怠慢があった」と語りましたが、不正に対する組織的な関与は否定しました。
内部告発はあったが……
ビッグモーターは不正に関して当初、「現場の知識不足」が原因としてあくまで過失と説明していました。また朝日新聞の記事によれば、ビッグモーターは当初、損保各社に報告書の抜粋版しか見せず、不正が広がった経緯や、経営体制に関する内容は伏せていたといいます。各社の強い求めに応じてビッグモーター側が報告書の全容を開示したところ、内部告発に対する社長らの対応が初めて明らかになりました。
(写真・ビッグモーターの店舗に立ち入り検査に入る運輸支局員=2023年7月)
自分たちでは改められなかった
ここからはっきりわかることは、ビッグモーターは自分たちだけでは自分たちの姿勢を改めることはできなかった、ということです。ビッグモーターの創業者は社長辞任の会見で、調査報告書を受け取る今年6月まで不正を知らなかったと言っています。昨年にあった親族の内部告発については先に書いたように工場長との個人的な確執が原因と思い込み、「深く追究しなかった」と弁明しました。ビッグモーターの不正請求疑惑はすでに調査委員会ができていた昨年夏の段階で経済誌などが取り上げていましたが、同社はそれに対しても反応をみせず、社風は改まりませんでした。
利益の前にガバナンスが軽視される?
不祥事は、ただ「起こさないようにしよう!」とかけ声をかけても起こります。とりわけ不祥事によって利益が上がる場合、「きれいごとを言うより利益が大事!」という会社の風土があると、ガバナンスは絵に描いた餅になります。株式を市場に上場している「上場会社」の場合、事業の内容などを公開する義務があります。また、社外取締役を2人以上選ぶ、株主と対話し株主の懸念に関心を払うなどの行動指針「コーポレートガバナンス・コード」が策定されています。一方、ビッグモーターのような非上場企業の場合、このような義務や行動指針はありません。日本の会社は、99%以上が非上場企業です。
(写真・コーポレートガバナンス・コードを定めた東京証券取引所)
積極的なOB・OG訪問でセンスを磨こう
非上場企業は株主の意向を配慮しなくていいぶん、すばやい意思決定が可能になったり、目先の利益にとらわれない経営ができたりするというメリットもあります。一方で、ガバナンスについては締め付けがないぶん、自分たちで自分たちを律する意識がない限りガバナンス違反が起こる可能性も十分あると認識したほうがよいでしょう。会社訪問の際には、社長や上司の意見を過剰に尊重するよう求める風土はないか、顧客や取引先の意見を大切にする雰囲気はあるかといった点を注意してみましょう 。
また、非上場企業だけでなく上場企業もガバナンスが形骸化し現場に浸透していないケースはいくらでもあります。簡単にそういう会社を見抜くことは難しいですが、できるだけOB・OG訪問の機会をつくり、実際に働いている社員さんが日々どのような考えで仕事をしているか直接触れて感じることで「ここの会社はちょっと自分に合わないかも……」と感じ取ることはできるかもしれません。会社に入ると、その会社のやっていることがガバナンスに反していても正しいと思ってしまうことはよくあります。就活生のうちにガバナンスについて理解し、いろいろな会社の人と接することで、「これはおかしいのでは?」と感じることができるセンスを磨くことは大切だと感じます。
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