2016年02月17日

「マイナス金利」の影響…いいの? 悪いの?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日本銀行の「マイナス金利政策」が16日に始まりました。長く続くデフレを脱却して経済成長につなげる狙いですが、大きな流れとしては日本の経済成長にはよくない「円高・株安」が続いています。銀行の経営悪化の可能性など、マイナス金利にはさまざまな副作用も指摘されています。マイナス金利の影響と、日本経済にとっていいのか、良くないのかを考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「マイナス金利 日銀開始/金融機関 運用難に直面/生保・保険料値上げも/ゆうちょ銀・国債依存減/地銀・収益悪化の恐れ」です。オピニオン面(17面)の「耕論/マイナス金利の功罪」も関連記事です。
 記事の内容は――日銀が国内で初めてのマイナス金利政策を16日始めた。金融機関が日銀に預けるお金の一部に年0.1%のマイナス金利をかける。景気回復や物価上昇につながるかはまだ分からないが、金融市場の金利は下がり、金融機関は運用難に苦しみそうだ。利用者へのサービス低下につながるおそれもある。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
 

就活アドバイス

 マイナス金利については、2月4日の今日の朝刊「『マイナス金利』3つのポイント…なに?なぜ?どうなる?」で基本的な仕組みや目的、メリット・デメリットを整理しました。日銀がマイナス金利導入を発表した直後には、一時「円安・株高」になりましたが、その後は、原油安、中国の景気減速に加え、好景気が続いていた米国の経済に陰りが見えてきたこともあり、「円高・株安」が一気に進みました。マイナス金利発表から実際に実施されるまでの間に、期待された効果は消えてしまったかのようです。

 金融業界には、すでに大きな影響が出ています。今日の記事からピックアップします。
【生命保険会社】生保は総資産の4割を国債が占める。国債は国が借金をするときに出す債券。主力はお金が国債の保有者に戻ってくるまでの期間が長い長期国債だが、マイナス金利導入決定後、国債の利回りは下がり続け、新たに発行する満期10年の国債の流通利回りが9日に初めてマイナスになった。生保各社は、契約者に約束する運用利回りを引き下げて、一部の商品の保険料値上げを検討せざるを得ない状況だ。

【ゆうちょ銀行】ゆうちょ銀行も、運用資産205兆円の4割超を国債が占め、金利の低下は大きく経営に響く。このため、国債での運用を減らして、株式などを買い増す。不動産ファンド、未公開株ファンドなど新たな投資先も開拓する。ただ国債と違い、こうした投資はリスクが高く、失敗して大きな損失が出れば、ATM手数料などの引き上げにつながる可能性も。

【地方銀行】地方には優良な貸出先が少なく、地銀は国債の運用で収益を補ってきたため、金利低下で収益は悪化しそうだ。住宅ローンの金利引き下げは利用者には得だが、銀行のもうけは薄くなる。海外事業や証券子会社などの収益源を持つ大手行と比べ、国内中心の地銀はマイナス金利の影響を受けやすいと言われる。米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、マイナス金利導入で、大手行は本業のもうけが8%減るのに対し、地銀は15%減ると試算。支店の統廃合などが進むかもしれない。

 オピニオン面では金融のプロ2人が、マイナス金利の功罪を論じています。
日銀ウォッチャーのエコノミスト加藤出(いずる)さんは「長期金利までマイナスになると、金融機関の収益が苦しくなると多くの人が予想するので、銀行株が下落する」「銀行の収益が悪化していくと、中小企業への貸し出しの余力がなくなり、かえって融資が減る恐れもある」として、不安をふくらませてしまったと指摘。これに対し、日銀審議委員を務めた東京大学教授・植田和男さんは「今後、2~3回程度の追加利下げが可能と想定できる」として、日銀が中央銀行としての政策の余地を拡大したとして、評価しています。

 マイナス金利は昨日始まったばかり。これからも功罪両論のたくさんのニュースが流れます。金融業界だけでなく日本経済全体に大きな影響が及びますから、続報に注目してください。

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