ニュースのポイント
「
アインシュタイン最後の宿題」と呼ばれる「重力波」を、米国の研究チームが初めて観測したと発表しました。ノーベル賞確実とも言われる快挙です。100年越しの歴史的な成果ですから、今年最大級のニュースに違いありません。難解な物理学の話ですが、最低限のポイントだけは押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、科学面(27面)の「苦闘20年 ノイズ制した快挙/重量波とらえた施設LIGO/風・波・飛行機…対策は1万項目」です。
記事の内容は――アインシュタインが100年前に予言した「重力波」を米国の観測施設LIGO(ライゴ)がついにとらえた。重力波で伝わる時空のゆがみはごく小さく、アインシュタイン自身も観測は無理と考えていた。今回の成功は、20年以上にわたる地面や空気の振動など細かな「ノイズとの戦い」の勝利だった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「重力波」のニュースは正直に言って何度読んでも難しくてピンとこないのですが、これだけの大ニュースですから、どこで話題にのぼらないとも限りません。きちんと理解することはできなくても、以下の要点を知っていれば、話にはついていけると思います。
◆重力波って何? 宇宙の空間と時間がゆがんで起きる波のこと。重い星や
ブラックホールが合体したり動いたりすると、周りの空間が伸び縮みし、そのゆがみが水面の波紋のように広がる。アインシュタインが1916年に「
一般相対性理論」で、重さを持った物体の周りでは時空にゆがみが生じると予言していた。重力波はすべての物質を通り抜け、どこまでも到達する。あらゆる運動で生じるとされるが、きわめて微弱で通常は観測できないため、星の合体などで生じた大きな重力波をとらえようとしてきて、今回初めて実証された。
◆どうやって観測 L字形のトンネルの中央に置いた光源からレーザー光線を飛ばし、4キロ先の両端に置いた鏡に反射させて往復させた。重力波が来ると、空間の伸び縮みは方向によって異なるため、光線が戻るタイミングがずれる。そのわずかなずれを観測した。
◆何の役に立つ? 重力波を観測すれば、光や電波を使う望遠鏡では見えなかったブラックホール、
中性子星、二つの星が互いを回る
連星の動きや
超新星爆発など様々な天体現象をとらえることができるようになる。このため「重力波天文学」の幕開けとも言われる。
宇宙は138億年前に誕生したあと急膨張し火の玉になったが、この時点では光が閉じ込められたため初期の宇宙は光で観測できない。膨張するときに出た「原始重力波」は、今も宇宙に漂っていると考えられ、これを観測できれば「宇宙のはじまり」の姿にも迫れる。
◆日本の施設と国際協力 東京大学宇宙線研究所などのグループが、岐阜県の神岡鉱山の地下に観測施設「KAGRA(かぐら)」を建設している。昨秋ほぼ完成し2017年度から本格観測を始める。KAGRA計画の代表は、昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章・東大教授。
重力波がやって来た方向を知るには3カ所以上の施設で同時に観測する必要があり、国際協力が欠かせない。世界には、LIGO、KAGRAのほか、イタリアのVIRGO(バ-ゴ)などがある。
17日には、鹿児島県の種子島宇宙センターから日本のH2Aロケット30号機が打ち上げられました。軌道に投入され「ひとみ」と命名されたX線天文衛星も、ブラックホール観測などでの協力が期待されています。2015年11月25日の今日の朝刊「三菱重工だけじゃない…ロケットの夢かなえる会社を探そう!」では、三菱重工業をはじめ、ロケットや衛星の開発に関わっている企業について書きました。宇宙に関心が強い人は、KAGRAに関わっている企業についても調べてみてください。
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