ニュースのポイント
日本銀行の「マイナス金利政策」が16日に始まりました。長く続くデフレを脱却して経済成長につなげる狙いですが、大きな流れとしては日本の経済成長にはよくない「円高・株安」が続いています。銀行の経営悪化の可能性など、マイナス金利にはさまざまな副作用も指摘されています。マイナス金利の影響と、日本経済にとっていいのか、良くないのかを考えます。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「マイナス金利 日銀開始/金融機関 運用難に直面/生保・保険料値上げも/ゆうちょ銀・国債依存減/地銀・収益悪化の恐れ」です。オピニオン面(17面)の「耕論/マイナス金利の功罪」も関連記事です。
記事の内容は――日銀が国内で初めてのマイナス金利政策を16日始めた。金融機関が日銀に預けるお金の一部に年0.1%のマイナス金利をかける。景気回復や物価上昇につながるかはまだ分からないが、金融市場の金利は下がり、金融機関は運用難に苦しみそうだ。利用者へのサービス低下につながるおそれもある。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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マイナス金利については、2月4日の今日の朝刊「『マイナス金利』3つのポイント…なに?なぜ?どうなる?」で基本的な仕組みや目的、メリット・デメリットを整理しました。日銀がマイナス金利導入を発表した直後には、一時「円安・株高」になりましたが、その後は、原油安、中国の景気減速に加え、好景気が続いていた米国の経済に陰りが見えてきたこともあり、「円高・株安」が一気に進みました。マイナス金利発表から実際に実施されるまでの間に、期待された効果は消えてしまったかのようです。
金融業界には、すでに大きな影響が出ています。今日の記事からピックアップします。
【生命保険会社】生保は総資産の4割を
国債が占める。国債は国が借金をするときに出す債券。主力はお金が国債の保有者に戻ってくるまでの期間が長い
長期国債だが、マイナス金利導入決定後、国債の利回りは下がり続け、新たに発行する満期10年の国債の
流通利回りが9日に初めてマイナスになった。生保各社は、契約者に約束する運用利回りを引き下げて、一部の商品の保険料値上げを検討せざるを得ない状況だ。
【ゆうちょ銀行】ゆうちょ銀行も、運用資産205兆円の4割超を国債が占め、金利の低下は大きく経営に響く。このため、国債での運用を減らして、株式などを買い増す。不動産
ファンド、未公開株ファンドなど新たな投資先も開拓する。ただ国債と違い、こうした投資はリスクが高く、失敗して大きな損失が出れば、ATM手数料などの引き上げにつながる可能性も。
【地方銀行】地方には優良な貸出先が少なく、地銀は国債の運用で収益を補ってきたため、金利低下で収益は悪化しそうだ。住宅ローンの金利引き下げは利用者には得だが、銀行のもうけは薄くなる。海外事業や証券子会社などの収益源を持つ大手行と比べ、国内中心の地銀はマイナス金利の影響を受けやすいと言われる。米国の
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、マイナス金利導入で、大手行は本業のもうけが8%減るのに対し、地銀は15%減ると試算。支店の統廃合などが進むかもしれない。
オピニオン面では金融のプロ2人が、マイナス金利の功罪を論じています。
日銀ウォッチャーのエコノミスト加藤出(いずる)さんは「
長期金利までマイナスになると、金融機関の収益が苦しくなると多くの人が予想するので、銀行株が下落する」「銀行の収益が悪化していくと、中小企業への貸し出しの余力がなくなり、かえって融資が減る恐れもある」として、不安をふくらませてしまったと指摘。これに対し、日銀審議委員を務めた東京大学教授・植田和男さんは「今後、2~3回程度の追加利下げが可能と想定できる」として、日銀が中央銀行としての政策の余地を拡大したとして、評価しています。
マイナス金利は昨日始まったばかり。これからも功罪両論のたくさんのニュースが流れます。金融業界だけでなく日本経済全体に大きな影響が及びますから、続報に注目してください。
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