2016年02月19日

エアラインの業績に直結する、○○のさじ加減!?(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:経済

ニュースのポイント

 今年秋から、羽田空港を昼間に出発してアメリカに向かう航空便が10便も新設されることになりました。羽田空港は本格的な国際空港になって5年余りがたちますが、昼間の発着便ができることで、ビジネス客が多くドル箱路線と言われるアメリカ東海岸の都市と結ばれることになります。グローバル化によって国際線の需要はまだまだ増える見込みで、航空産業は成長産業だと考えられています。

 今日取り上げるのは、3面の「羽田―米国 昼10便新設/深夜・早朝2便に減/10月下旬にも/成田 客の流出を懸念」です。
 記事の内容は――日米両政府は18日、羽田空港からの米国便を増やすことで合意した。これまでなかった昼間(午前6時~午後11時)の発着便が認められ、今年秋には米東部のニューヨーク便などが実現する見通しだ。これまで深夜・早朝(原則午後11時~翌午前6時)に発着する8便だけだったのが、10月下旬にも、昼間10便、深夜・早朝2便となる。日本と米国の航空会社に半分ずつ配分する。ビジネス客らの利便性は上がるが、競合する成田空港には、重い課題がつきつけられる。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 羽田空港の国際化問題は、1978年の成田空港の開港までさかのぼります。それまで国際空港の機能は羽田が持っていましたが、成田開港を境に成田が国際線、羽田が国内線という棲み分けが決められました。でも、成田が都心から遠かったり、反対運動が激しく警備が厳重で使いづらかったりするため、羽田を再び国際空港にしてほしいという声が徐々に高まってきました。ただ、成田空港は3人の警察官の命を失う東峰十字路事件など激しい反対運動との戦いの末、開港したという経緯があり、成田空港の地盤沈下につながる羽田再国際化は簡単ではありませんでした。

 1990年代後半あたりから、東京都や全日空などが国土交通省や政治家に働きかけるなどして徐々に機運が盛り上がり、羽田拡張にともなって便数に大幅に余裕ができた2010年、再国際化が実現しました。でも、様々な制約は残りました。アメリカ便の発着が深夜・早朝に限られるのもその一つでした。深夜・早朝に出発すると、アメリカ東海岸にも深夜・早朝に到着するため、利用者に不便で、これまで路線がありませんでした。このため、昼間に発着する便を求める声がエアラインや利用者から出ていました。特に、アメリカ東海岸に向かう乗客にはビジネス客が多く、高い単価が見込めるためドル箱路線と言われます。そうしたことから要望は強く、日米政府が話しあって、ようやく認められることになったわけです。

 一方、これまで成田空港を利用していた乗客が羽田空港に流れることになり、成田空港や拠点としているエアラインには打撃です。国交省は、東南アジアから北米に向かう客や格安航空会社の取り込みで、羽田との役割分担を進める絵を描いています。

 こうした増便や離発着時間変更に政府が力を注ぐのは、国際線の旅客がこれからもっと増える見通しだからです。グローバル化はますます進み、国境を越えるヒトの動きはますます激しくなります。ビジネス客も観光客もたくさんの人が日本を出たり入ったりするようになります。だから、航空会社の発展の余地は大きいと言えます。就活生に人気があるのは、こうした成長性や国際性のせいでしょう。

 ただ、航空会社の特殊性も知っておく必要があります。政治家や官僚のさじ加減が経営に大きく響くということです。たとえば、ドル箱路線である米国路線12便の半分を日本のエアラインに配分する方針は国交省が決め、そのうち全日空に4便、日本航空に2便とする方針も国交省が決めています。こうした路線をはじめ、さまざまな運航上の決まりなど経営の根幹に関わることを官庁に握られているわけです。だから、自分たちの経営努力だけではどうにもならないことがたくさんあり、政治家や官庁との癒着も生まれやすくなります。華やかに見える業界も中に入ると意外に泥臭いもの。航空業界もそういうところがあると思います。

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