ニュースのポイント
安倍晋三首相が21日に衆議院を解散し、12月14日投開票の日程で総選挙を行うと表明しました。衆議院議員の任期は4年ですが、前回、民主党政権から自民・公明の連立政権に交代した総選挙からまだ2年。安倍首相はなぜ今解散し、国民に何を問うのでしょうか?
今日取り上げるのは、1面トップの「21日解散 首相表明/消費税先送り『信を問う』/アベノミクスも争点」です。ほかにも、2、3、4、7、8、14、38面に関連記事が載っています。
記事の内容は――安倍首相は来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを1年半先送りし、衆院を解散する。衆院総選挙は12月2日公示、14日投開票の日程。首相は記者会見で「税制こそ議会制民主主義。税制の大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきと考えた」と述べた。総選挙では、①増税先送り判断の是非 ②2017年4月に確実に10%に引き上げ ③経済政策アベノミクスの評価、について国民の判断を仰ぎたいと表明。1年半後の10%引き上げを確実に実施するため消費税法の景気条項を撤廃する考え。財政再建の旗は降ろさず、2020年度までに政策予算の赤字をゼロにする政府の目標も堅持する。集団的自衛権などの安全保障政策や原発再稼働について党の公約に書き込んで「堂々と戦っていきたい」と語った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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まずは政治の仕組みの復習です。日本の国会は衆議院(定数480人→0増5減の定数削減で今回の選挙から475人)と参議院(定数242人)の二院制です。衆議院議員の任期は4年間ですが、首相には任期途中でも解散して選挙をする権限があります。また内閣不信任案が可決された場合には、首相は10日以内に衆院を解散するか内閣総辞職しなければなりません。任期満了の場合も含め、衆院選は解散で全議員がクビになってすべての定数(480)を選び直すため、「総選挙」と呼ばれます。一方、参議院議員の任期は6年間で3年ごとに半分ずつ改選するので「通常選挙」といいます。
争点について考えます。安倍首相は、消費増税先送りの判断の是非の信を問うと言いました。ただ、景気悪化による先送りは消費税法を改正すれば認められるし、民主党や維新の党など、ほとんどの野党が先送りを認めています。民主党の海江田万里代表は「先送りを真っ向から否定する政党はない。争点になるはずがない」と指摘、「アベノミクスが成功していないから(増税を)延期せざるを得ない」と批判しました。アベノミクスの中身や成否の評価のほか、集団的自衛権などの安全保障政策、原発再稼働の是非については争点になりそうですが、首相が真っ先にあげた消費増税先送りは争点になりそうもありません。このため「大義なき解散」との批判も出ています。
では、安倍首相は今なぜ解散に踏み切るのでしょうか。解散は首相の「伝家の宝刀(でんかのほうとう)」「最後の切り札」。たいていは選挙で与党の議席を増やして政権を安定させる目的で行われます。自民・公明の与党は前回の総選挙で320議席以上の大勝利を納めたため、数の上では極めて安定しています。今以上に議席を増やすのは容易ではありませんが、これから先の2年間で議席を大きく減らさなくてすみそうなのはいつなのか、与党にとって有利なタイミングを探ってきました。
こんな事情が考えられます。
・消費税増税は不人気政策のため、その先送りを表明しての選挙は与党に有利
・今なら安倍政権は比較的高い支持率を保っている
・来年は原発再稼働や集団的自衛権行使容認に伴う法整備など反対論も強い課題が待っている
・まだ野党の選挙準備が整っていず、選挙区ごとの候補者調整も進んでいない
安倍首相は、これらを総合的に考えて「今でしょ!」と判断し、長期政権をへの道筋をつけようとしているのではないかとみられています。
とはいえ、総選挙では日本の進路、私たちの暮らしに直結する様々なテーマについて論戦が繰り広げられます。経済政策や労働政策のあり方は、企業の採用活動やみなさんの働き方にも大きく影響します。これからの就活の場面でも話題にのぼるでしょう。1カ月弱続く総選挙報道に注目してください。
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