ニュースのポイント
リニア中央新幹線が大阪まで開通すると、人口6000万人超、世界でも例をみない巨大都市圏が誕生し、新ビジネスも生まれる――こんな見方があります。新たな需要を生む一方、航空業界にとっては脅威。さまざまな業界にプラス、マイナス、さまざまインパクトを与えるのは間違いありません。一方で安全性や環境への配慮も絶対に欠かせません。
今日取り上げるのは、総合面(5面)の連載記事「教えて!リニア⑥ 経済効果は? 交通網への影響は?」です。
記事の内容は――JR名古屋駅前は高層ビル4棟が建設中で、企業がオフィスを移す動きが活発化。リニアの起点になる東京・品川駅周辺も、東京五輪が開かれる2020年に山手線の新駅を開業、オフィスなど国際的なビジネス拠点もつくる。三菱リサーチ&コンサルティングは、2045年に東京と大阪がリニアで結ばれれば人口6000万人超の巨大都市圏が形成されるとし、移動時間が短くなると、仕事や観光などで往来が活発になると展望。それが新ビジネスを生み、雇用や所得、消費の押し上げ効果も見込まれ、名古屋開業から50年間で累計10.7兆円、仮に大阪まで同時開通すれば16.8兆円の経済効果があるという。同社の主任研究員は「3大都市圏が互いの機能を補完すれば国際競争力も高まる」とみる。一方で、空路への影響も大きく、JR東海は東京―大阪間の移動に占める鉄道と航空機の割合は、今の「8対2」から「10対0」になると試算。拠点空港の競争状況も変わり、中部空港(愛知県常滑市)の利用状況に影響する可能性も指摘される。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
昨日、神戸市での大学生向け就職ガイダンス講演のため、東海道・山陽新幹線で往復しました。品川-新大阪間は最短で2時間18分。行きはパソコンで講演の準備をした後うとうと、帰りはビール片手に新聞を読みながらうとうと……。車内で仕事をこなしながら、少しのんびりして気分転換を図るにはちょうどよい時間です。東京-大阪は日帰りが当たり前ですが、計4時間半は車中で過ごすことになるので、しっかり「出張気分」は味わえます。将来、リニアが大阪まで開通すると品川―大阪はわずか67分。ちょっと郊外に出かける感覚でしょうか。少なくともうとうとする余裕はなくなりそうです。
東京から大阪まで1時間ちょっとで行けるとなると、今よりも気軽に往復する人が増えるのは間違いないでしょう。この往来が新しいビジネスを生み、雇用、所得、消費を押し上げるというのが三菱リサーチ&コンサルティングの見立てです。そんなにうまくいくのだろうかと感じる一方、3大都市圏の人口を合わせた図を見ていると、あながち大げさではないのかもしれないと思えてきます。
先日、東海道新幹線をつくった当時の国鉄職員や家族を描いたドラマがNHKで放映されました。資金面、技術面などからの反対論が根強く、難工事も相次ぐ中、夢を貫き通した姿は胸を打ちました。その努力がその後の高度成長の礎となったことを否定する人はいないでしょう。リニア新幹線も少し前までは「夢物語」のように思われていましたが、いよいよ年度内の着工が決まりました。巨額の資金、根強い反対論を押しての決断は、将来、「21世紀後半の日本の成長の礎となった」と評価されることになるのかもしれません。
ただし、東海道新幹線の高い評価はその安全性あってこそ。8割以上がトンネルを通るリニア新幹線も、事故・災害時の安全性の確保が大きな課題です。この前提なしに「成功」はあり得ません。今回のリニア連載では、こうした安全性だけでなく、環境への影響についても分析しています。今日の記事で様々な業界への影響を考えるとともに、他の回も読んでみてください。
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