ニュースのポイント
東海道新幹線がきょう10月1日、開業50年を迎えました。地球5万周分を走り計56億人が乗りました。列車事故での死者はゼロ。速くて、正確で、なにより安全第一に走り続けてきた新幹線は、日本を象徴する存在です。大動脈として経済を支え、社会構造まで変えてきたともいわれています。新幹線から日本の経済を考えてみましょう。
今日取り上げるのは、社会面(34面)の「『日本の大動脈』50年/東海道新幹線、続く進化/走行20億キロ・乗客56億人」です。1面コラム「天声人語」、オピニオン面(14面)の社説「新幹線50年 安全、さらなる高みへ」も新幹線について書いています。
記事の内容は――開業した1964年に約6万人だった1日の平均乗客数は、1974年には5倍以上の32万人超に。昨年は42万6000人と過去最高を更新した。1964年に4時間かかった東京-新大阪間の最短所要時間は現在2時間25分に、60本だった1日平均運行本数は323本、最高時速は210キロから270キロになった。課題は施設の老朽化だ。JR使いは昨年から10年計画でトンネルや鋼橋、コンクリート高架橋の大規模改修を始めた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
地方の大学などでの講演のため、月に数回は東海道新幹線を利用します。かつて名古屋に単身赴任していたときには、新幹線で自宅と会社をたびたび往復しましたが、ドアツードアで約2時間。「通勤もできるなあ」と考えたほど便利に使わせてもらいました。
新幹線はさらに進化を続けています。山陽新幹線(新大阪-博多)は最速で時速300キロ、東北新幹線(東京-新青森)は320キロで走ります。最初にできた東海道新幹線はカーブが多い路線のため、1992年の「のぞみ」登場以来270キロで頭打ちでしたが、カーブでの車体の傾きを調整して乗客にかかる遠心力をやわらげるシステムの高性能化で、来春から最高285キロにアップすることを決定。東京-新大阪間の最短時間は2~3分縮まるそうです。
新幹線網の整備で「日帰りエリア」が広がるとともに、東京への一極集中が進みました。地方との行き来が楽になったため、もともと地方を拠点にしていた企業が本社機能を東京に移す例が増え、支店や生産設備の統廃合も進んだと言われています。その結果、コストが下がって生産性が上がったとの説もあります。今では東京圏(1都3県)に約3600万人が住み、年間1.5兆ドル(165兆円)のGDP(国内総生産)を生み出す世界最大の都市圏になりました。日本全体では、人口が減っていきますが、東京圏は2025年になっても世界最大だと見込まれています。
一方、地方は東京圏に人を吸い取られ、細っていくのではと懸念する声もあります。来春、北陸新幹線が開通する金沢市を先日訪れました。金沢駅構内には多くのポスターが張り出されお祝いムードでしたが、ある大学関係者は「若い人たちが金沢を出て行ってしまうのではないか」と心配していました。新幹線は社会構造をも変える力をもっているのです。
交通インフラのあり方はあらゆる業界に影響します。新幹線網はこれから敦賀(福井県)や函館(北海道)に伸び、今秋には2027年開業を目指してリニア新幹線も着工されます。鉄道業界を目指す人はもちろん、ライバルとなるエアライン、インフラ系、旅行関係業界などの志望者は、新幹線の果たしてきた役割、これからの可能性を考えることが志望動機につながります。地方から東京や大阪の会社を目指すみなさんは、就活でたびたび新幹線に乗る機会があるでしょう。車中で一息ついたら、目指す業界に交通インフラが及ぼす影響に思いを馳せてみましょう。
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