2014年06月02日

「天安門」はネットでNG! 中国の今を知ろう

テーマ:国際

ニュースのポイント

 新3年生向けの「朝日学情ナビ2016」が昨日オープンしました。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では、いま就活中の4年生に加えて、3年生や大学院1年生のみなさんに向けても役に立つ情報を発信していきます。
 さて、中国で民主化を求めた学生らが弾圧された「天安門事件」から4日で25年になります。現代中国を知るには欠かせない歴史的大事件です。しかし中国国内では話題にすることすら許されないタブー。いま中国はどうなっているのでしょう。

 今日取り上げるのは、国際面(7面)の「中国、言論の規制強化/天安門25年 ネットの摘発拡大」です。同じ面に関連記事「民主化や自由 求めて行進/香港・東京でデモ」「消される言葉④ 校舎崩落 遺族の声圧殺」があります。
 記事の内容は――北京市公安当局は5月初旬、天安門事件をテーマにした私的な集会に参加したとして弁護士ら5人を摘発した。集会はメンバーの自宅で開かれ、写真がネットや一部の海外メディアに掲載されただけだが、公安当局は政治的な集会などへの取り締まりを強めるため、刑法の「故意に騒動を引き起こした罪」の解釈を拡大し、ネット空間を「公共の空間」として取り締まる方針に切り替えた模様だ。天安門事件から25年の節目が迫る中、新たな方針が適用されたとみられる。関係者やメディア報道などを総合すると、今春以降、摘発された改革派の知識人や活動家は全国で100人を超える模様だ。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 天安門は北京市中心部の観光名所・旧紫禁城(故宮)の正門で、毛沢東の大きな肖像画が掲げられた映像がテレビによく映りますよね。その前の広大なコンクリートの空間が天安門広場です。民主化を求めて広場を埋め尽くした学生を軍が弾圧したのが天安門事件です。現代史で学んだことがあるでしょう。1989年4月に死去した改革派指導者・胡耀邦(フーヤオパン/コヨウホウ)共産党元総書記の追悼集会をきっかけに、学生らが大規模な民主化要求運動を起こしました。当時の最高実力者・鄧小平(トンシアオピン/トウショウヘイ)氏ら指導部は「動乱」と位置づけ、6月3日夜から4日朝にかけて広場に軍部隊を投入して鎮圧。当局が公表した死者は319人ですが、実際の犠牲者数ははるかに多いと言われています。

 「5月35日」ってなんだかわかりますか? 中国で使われていた隠語で、「5月31日+4日」で天安門事件が起きた「6月4日」のことです。中国では天安門事件に関連する言葉はツイッターやネット上から政府当局によって削除されます。毎年6月4日が近づくと特に厳しくなり、近年「5月35日」や、8の2乗を表す言葉(答えが64=6月4日)も削除されるようになりました。中国で見られるNHK海外放送のニュースも、毎年「天安門事件○周年」の項目になると画面がプツッと切れて放送が中断します。当局が介入しているといわれています。

 今の習近平(シーチンピン/シュウキンペイ)国家主席の体制は、言論抑圧の姿勢を強めています。昨春、中国各地の大学には「七不講(七つの語るべからず)」と呼ばれる指示が出されました。「(人権などの)普遍的価値」「報道の自由」「(欧米式の)市民社会」「共産党の歴史的な過ち」「司法の独立」などを授業で取り上げてはならないとする厳しい言論統制です。これまで中国政府は「中国には報道の自由がある」「中国式の民主主義がある」などと主張してきましたが、そんな「建前」も捨ててしまったようです。

 この数年、中国は経済成長のスピードが落ち、貧富の格差は拡大、新疆ウイグル自治区で爆破事件が相次ぐなど、多くの問題を抱えています。不満が広がらないよう言論統制を強めていますが、影響は国内にとどまりません。尖閣問題など対日関係や、南シナ海でのベトナムとの争いなどで、国内の不満の矛先をそらすために強硬策をとっているという見方もあるのです。13億人という世界一の人口を抱え、いずれは米国を抜くといわれる世界2位の経済大国の動向は、日本の政治・経済に極めて大きな影響を与えます。みなさんがめざす業界・企業も常に注視しています。この数日、天安門事件関連のニュースがたくさん流れます。就活生も中国報道から目を離さないでください。

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