2014年05月30日

動き出すか 北朝鮮の日本人拉致問題

テーマ:国際

ニュースのポイント

 日本人拉致問題について北朝鮮が再調査を約束、全面解決へ向けて動き出す可能性が出てきました。拉致は国家による許し難い犯罪です。長年苦しめられてきた被害者とその家族にとって、真の救済となるのでしょうか。今日は拉致問題をおさらいします。

 今日取り上げるのは、1面トップの「拉致再調査 日朝合意/政府 開始後に制裁解除/北朝鮮、特別委設置へ/安倍外交 かじ取り正念場」です。関連記事が2、3、7、16、35面にあります。
 記事の内容は――安倍首相は日本人拉致被害者を再調査することで北朝鮮と合意したと発表した。北朝鮮は約3週間後に特別調査委員会を立ち上げ、拉致被害者と拉致された疑いのある特定失踪者の調査などを開始する。日本政府も北朝鮮に対する独自の制裁措置の解除を始める。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 いつものように中学校での部活動を終えた13歳の少女は、新潟市内の自宅近くで行方不明になりました。横田めぐみさんが拉致されてから、もう37年が経ちます。何の罪もない人の平和な日常生活を突然断ち切り、北朝鮮に連れ去って何十年も自由を奪い続ける……。北朝鮮による拉致は、史上例がないほどの国家による凶悪犯罪であり、国連でも北朝鮮による人権侵害の一つとして取り上げられています。

 日本政府が北朝鮮による拉致被害者と認定しているのは、左の表の17人。1970~80年代、日本海に面した海岸や海外で工作員に拉致され、船などで北朝鮮に連れて行かれました。日本で活動する工作員に日本語や日本の生活習慣などを教えられる人が必要だったためだと言われています。北朝鮮が拉致を認めたのは2002年9月。当時の小泉純一郎首相が訪朝し、日朝首脳会談で金正日総書記が「8人死亡、5人生存」と伝えました。同10月に被害者5人が帰国。2004年5月には、被害者の子5人が帰国しました。その後の日朝交渉で北朝鮮は、残る12人の拉致被害者のうち横田めぐみさんら8人は「死亡」、4人は「入国していない」とし、「拉致問題は解決済み」と主張してきました。

 これまでの態度に比べれば、今回の合意は大きな前進です。北朝鮮が誠意をもって対応し、すべての情報を開示することを期待したいと思います。ただし北朝鮮はこれまで、横田めぐみさんのものとして別人の遺骨を渡してきたり、2008年には再調査を約束したのに日本の首相交代を理由にとりやめると通告してきたり、日本側を何度も裏切ってきました。日本政府は、北朝鮮の調査の経過を見極めながら、いろいろ注文をつける必要がありそうです。

 加えて日本には、17人以外にも北朝鮮に拉致された可能性がある行方不明者がたくさんいます。警察庁によると、失踪の原因がはっきりせず、拉致の可能性が排除できない行方不明者は860人。調査団体「特定失踪者問題調査会」が拉致の可能性を調べている「特定失踪者」は470人います。このうち特に拉致の疑いが濃いとしている人が73人です。17人以外についての対応にも注目です。

 日本は北朝鮮が調査を始めた時点で、入国禁止など人的往来の規制、人道目的の北朝鮮籍船の入港禁止といった制裁措置を解除する方針です。北朝鮮には核・ミサイル開発問題があり、米国、韓国との連携も大事です。拉致は国民の関心がとても高く、日本人として知っておかなければならない問題だと思います。東アジアの情勢、将来を大きく左右する国際問題でもあります。グループディスカッションのテーマになったり、面接で話題になったりするかもしれません。この問題で小論文を書いてみることもお勧めします。これからの報道に注目してください。

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