2014年05月29日

新たな報道手法「データジャーナリズム」ってなんだ?

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 ネット上にあふれる膨大な情報を分析・視覚化する新しい報道手法「データジャーナリズム」が注目されています。どんな報道なんでしょうか。記者の仕事や報道のあり方は変わるのでしょうか。

 今日取り上げるのは、MITメディアラボ×朝日新聞シンポジウム2014特集面(22・23面)の「メディアが未来を変えるには~伝える技術、伝わる力~」です。
 記事の内容は――米マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボと朝日新聞社のシンポジウム「メディアが未来を変えるには」が開かれた。米国メディア編集者らが最新の取り組みを紹介し、新たな技術や表現手法の可能性、メディアの将来像を議論した。シンポ冒頭、朝日新聞社が3月に開いた「データジャーナリズム・ハッカソン」の報告会があり、データジャーナリズムについても議論になった。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 ネットなどの膨大なデジタル情報である「ビッグデータ」については聞いたことがありますよね。まだよく知らない人は、今日の朝刊「ビッグデータを活用せよ ビジネスから政治まで」(2013年7月3日)と、「ドラえもん紙面で『ビッグデータ』を学ぼう」(2014年3月25日)を読んでみてください。データジャーナリズムは、このビッグデータを分析し読者が見やすい形で伝える新しい報道です。ビッグデータの流通と同時に、パソコンの処理能力向上とグーグルなどが提供する高機能のツールによって、これまでは扱うことすらできなかった膨大なデータを分析し、ビジュアル面でもわかりやすく報じることができるようになりました。

 2012年に英紙ガーディアンなどによる米機密文書報道を例にあげると、アフガニスタン戦争関係が9万件以上、イラク戦争が約39万件、米外交公電約25万件という情報量でした。そのまま報じることはできませんし、全体像もわかりません。そこで同紙のWEBサイトは、戦闘や死者数、現場の膨大な記録をデータベース化してグーグルマップ上に表示。読者が直感的に理解できるようにして伝えたことで、データジャーナリズムの代表例と言われています。

 朝日新聞もデータジャーナリズムに熱心に取り組んでいます。世界で10億(ビリオン)を超す人々がソーシャルメディアで発信する世界を「ビリオメディア」と名付け、選挙報道や東日本大震災を中心にツイッターのつぶやきを分析する記事をたくさん掲載してきました。下のリンク先から見てみてください。フィギュアスケートの浅田真央さんを特集した「ラストダンス」も、データジャーナリズムのビジュアル重視の手法を使っています。

 データジャーナリズムで報道はどう変わるのでしょうか。すぐれた報道に贈られる米国のピュリッツァー賞を受賞したこともあるアリゾナ州立大の教授で元新聞記者のスティーブ・ドイグさんは、昨年の朝日新聞の連載記事「データジャーナリズムの世界」でこう語っています。「データジャーナリズムも従来の取り組みも、基本的にはそう違いはない。象徴的なエピソードで語ってきたニュースを、データで語らせるということだ」「(ジャーナリストは)最低限、マイクロソフトのエクセルの使い方と基本的な数学の知識は理解しておかないと、取材先にいいようにあしらわれてしまう」。そして、5年後、10年後に紙の新聞がなくなりiPadになっていたとしても「世界は激変していて、それを伝えるジャーナリズムの役割はますます重要になっている。外に出て情報を集め、分析し、文脈を与え、読者に説明する。そんな作業はテクノロジーでは代替できないんだから」。報道志望の人は、データジャーナリズム時代の記者のあり方について考えてみてください。

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