2014年03月13日

アベノミクスどうなる?大手企業続々ベア実施

テーマ:経済

ニュースのポイント

 大手企業が来年度の社員の給料を底上げするベースアップ(ベア)実施額を一斉に回答しました。リーマン・ショック以来ベアゼロが続いていましたが、業績が好調な自動車、電機を中心に、久々にベア実施で足並みがそろいました。安倍政権がめざす経済の好循環につながるかどうか。これからが正念場です。

 今日取り上げるのは、1面トップの「官製春闘 ベアの波/車・電機から外食まで 大手続々」です。ベアについては、総合面(2面)の「時時刻刻/大手渋々 安倍ベア演出/好業績、政権意向に乗る」、経済面(11面)の「ベア統一交渉 一長一短」でも詳しく解説しています。
 記事の内容は――企業業績が回復基調をたどるなか、景気回復を後押ししたい安倍政権が賃上げを強く求め企業が応じた。政権主導の「官製春闘」の色合いだ。自動車業界ではトヨタが現行の方式となってからは最高額となる平均月額2700円のベアを回答。日産は組合側の要求通りに3500円の満額回答だった。電機業界でも、日立製作所など大手6社が2000円のベアで足並みをそろえた。鉄鋼では最大手の新日鉄住金が14年ぶりのベア実施。今の円安局面が恩恵にならない小売りや外食業界の大手でもベア回答が相次いだ。これまで安倍首相は「経済を好循環させるには賃上げが必要」と繰り返し、労働組合の中央組織・連合がベア要求を決め、経営側も応じた形だ。今後は中小企業で賃上げの動きが広がるかが焦点だ。

就活アドバイス

 ベア、春闘とその背景、日本経済の大きな流れについては、昨年10月18日の「ベアってなんだ? アベノミクス成功のカギ」と、今年2月6日の「『春闘』『ベア』を企業研究の参考に」でも書いているので、まだの人は読んでみてください。基本的なことを書いてあるので勉強になると思います。賃上げによる好循環が実現するかどうかは、今の日本経済にとっての最重要課題の一つです。みなさんが面接で話をする企業の人たちは、そのど真ん中で経済を支えている人たち。基本的な構図を理解しておかないと、話が通じない場面があるかもしれませんよ。この機会に学んでおきましょう。

 2面の記事に「大手渋々」という見出しがあるように、今回大手企業がそろってベアを実施したのは、安倍政権の政治的な圧力があったからです。企業にはありがたい復興法人税廃止など「取引」もあってのことですが、もうけが出ても社員の給料は上げず、いざというときのために貯め込み内部留保に回す企業が多い中、働きを社員に還元するベアに踏み切らせたのは、安倍首相の功績と言っていいと思います。

 2面の「安倍政権がめざす経済の好循環」の図にもありますが、安倍首相がめざすのは、
◆企業が賃上げ➡個人消費が増える➡モノが売れる➡企業が潤う➡企業が賃上げ
という好循環です。

 これまで続いたデフレの時代は、
◆賃金が下がる(上がらない)➡消費が冷え込む➡モノが売れない(売れないから物価が下がる)➡企業のもうけが減る➡賃金が下がる(上がらない)
という悪循環でした。
 これを「デフレスパイラル」と呼びます。デフレ脱却と持続的な経済成長を掲げるアベノミクスがうまくいくには「賃上げ」は欠かせないのです。

 好循環を実現するための課題は、①賃上げが、中小企業と、働き手の4割を占める非正社員にも広がるか②今回の賃上げで、4月からの消費増税による消費の冷え込みを乗り越えられるか――です。今後の動向も注視してください。

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