ニュースのポイント
東京―名古屋を40分で結ぶリニア中央新幹線の建設が今年10月にも始まります。開通予定は2027年で、2045年には大阪まで延びる予定です。経済効果は10.7兆円との試算もあり、日本の経済に大きなインパクトを与えるのは間違いありません。さまざまな業界や企業にとってはビジネスチャンスです。みなさんの働き方も変わるかもしれません。
今日取り上げるのは、オピニオン面(8面)の「私の視点/JR東海副社長・金子慎/リニア新幹線 地域の活力にもつながる」です。
この記事は、昨年12月に朝日新聞の論説委員が「リニアが必要だとは、私には思えない」と書いた記事への反論です。金子氏の主張をまとめると――。
・今年開業50年を迎える東海道新幹線の経年劣化と大規模災害への抜本的な備えとして建設する。
・論説委員は災害への備えは高速道路や飛行機など他の輸送手段があるため不要と言うが、東海道新幹線は1日約41万人、年間約1億5000万人を運び、日本の経済と国民生活の大動脈を担うインフラ。他の輸送機関では代替できない。
・リニアで東京~大阪間を67分で結ぶことはライフスタイルの変革を生み出し、経済活性化にもつながる。
・中央新幹線は国家プロジェクトであり、一企業の利益のために建設するわけではない。お客様、沿線地域の便益拡大につながり、時代に日本に不可欠なインフラだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
アイドルグループSKE48の松井玲奈さんは元日の朝日新聞名古屋版の記事で「名古屋―東京が40分になると、アイドルも大変。日帰りで仕事ができちゃう。今でも新幹線で行き来しながらの仕事は大変なのに、移動時間が短くなると、仕事の密度が濃くなって忙しくなりそう。幸せなことですけどね。一方で、東京ファンも来やすくなり、名古屋が近いと思ってもらえるとうれしいです」と語りました。高度経済成長のころ「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」という標語がはやりました。多くのビジネスパーソンも、松井さんと同じように「移動が便利になるのはいいことだけど、今より忙しくなりそうだなあ」と思っているのではないでしょうか。賛否両論があるリニア建設ですが、今日は、開通したらどんな効果、変化があるのかを考えてみます。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)の試算によると、リニア開業による全国の経済効果は10.7兆円。建設事業に加え、開業後には鉄道旅客、観光客などが大きく増えると見込んでいます。沿線の地域振興の起爆剤としても期待されています。名古屋が東京の郊外のような位置づけになって一つの都市圏のような連携が可能になるため、名古屋圏に集積する製造業が活性化して商談や調達、研究開発などで生産性が向上。名古屋の製造業の力で東京の機能も補強されるとの見方があり、経済が活発になると言われています。新たなビジネスも生まれるでしょう。一方で、いま東京に本社がある会社は、すぐに行けるからと名古屋支社を廃止するかもしれないし、逆に東京よりコストが安い名古屋に本社を移す会社も出るかもしれません。運輸・運送、観光、不動産、製造業をはじめ、東京―名古屋(いずれは大阪)間を社員が行き来するすべての会社に影響が及びます。
東京―名古屋間が開通するころ、みなさんは30代前半の若手・中堅社員。大阪まで伸びるころには50代前半の働き盛り。そのころの自分を想像しながら、志望企業がリニア開通で受ける影響やビジネスチャンスを考えてみてください。ESや面接のネタになるかもしれませんよ。
(下記リンク、「特集:リニア中央新幹線」には関連記事がたくさん載っています)
※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。ぜひ登録してください。