2013年12月09日

【号外】伝統工芸守る社長の逆境体験をESの参考に

テーマ:文化

ニュースのポイント

 日本には世界に誇るべき伝統工芸があります。その多くは企業経営としての基盤は弱いのが実情です。そんな中、欧米の商品ばかりだった雑貨市場に挑んで「おしゃれ和雑貨ブーム」を巻き起こした13代目の社長がいます。中川政七商店社長の中川淳さん(39)。中川さんの歩みには、中小企業が今の時代に生きていくためのヒントや、モノづくり、流通販売業の極意が詰まっています。

 今日は朝刊の発行がお休みのため、7日(土)発行の別刷り「be」の「フロントランナー/日本の工芸を元気にする」を取り上げます。
 記事の内容は――中川社長が展開する「遊 中川」「粋更(きさら)」「中川政七商店」などの自社ブランドは、東京ミッドタウンや新丸ビルなどの商業施設で引っ張りだこだ。1716年創業の高級麻織物の老舗。富士通勤務後、2002年から家業に入った。価格決定権がない下請けメーカーを脱して店を持つ決意をし、価格、店の空間、接客の工夫などすべてをコントロールする。開店当初はうまくいかず、ビジネス書を読みあさり、要求水準の高さで知られる伊勢丹新宿本店で年下の担当者に教えを請うた。06年に射止めた東京・表参道ヒルズへの出店が起死回生となった。不況下でも直営店舗を3から34に、年間売り上げは12億円から31億円に飛躍させた。「目先の利益を追わず、ブランド力をいかに高めるかにこだわり抜く」と評される。各地で消えつつある「日本の工芸を元気にする」を社会的テーゼに掲げ、手助けもしている。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 be3面のインタビューを読むと、中小企業成功の秘訣がうかがえます。キーワードはブランディング。企業や商品の一番の強みを見極め、「情報を整理して正しく伝えること」なのだそうです。「商品やパッケージ、店舗、接客、メディア展開など、消費者と私たちがつながる『ぜんぶ』が大切。一部分だけ良くしてもダメ」とも。市場を分析するマーケティング力では大手に太刀打ちできないけれど、中小企業は市場で大きなパイを占める必要がない分、「ブランディングによって差別化することで、市場のどこかに居場所を作ることができる」と中小企業ならではの戦略を語ります。さらに、いま消費者は気になることはネットで調べてくれるため、いいモノをきちんと打ち出せば、「大きな広告費を使わずに、消費者にブランドの世界を伝えられる」。小さくても攻めていけるネット時代のメリットを強調しています。中川さんの発言は経営者ならではの部分もありますが、モノづくりの企業や消費者に対面販売する流通業界をめざすみなさんにも大いに参考になると思います。

 小さくても、自社製品への誇りと自信は誰にも負けない会社。以前、講演を聞いた吉田カバンの人事・採用担当者の言葉を思い出しました。多様な人材を求めているとしながらも、「モノへのこだわりがない人はやっていけません」と強調しました。メーカーを考えている人は、その会社のモノに自分がどれほど愛着を持てるかを考えてみてください。

 毎週土曜日発行の別刷りbe「フロントランナー」では、各界の旬な人を毎週取り上げており、企業の経営者らビジネスで成功した人も多く登場します。順風満帆で苦労せずに成功した人はいません。ビジネスや働き方だけでなく、生き方も、きっとみなさんの就活に刺激を与えてくれるはずです。彼らの苦労や難局を乗り越えた話は、エントリーシートによくある「今までで最も辛い体験は? どう乗り越えましたか」を書く際にも参考になりますよ。

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