2013年11月20日

電子書籍の「個人出版」で出版社はどうなる?

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 作家やマンガ家が出版社を通さずに電子書籍を出す「個人出版」の市場が広がりつつあります。作家と読者をつないできた出版社を「中抜き」する動きで、出版社の存在意義を揺るがしかねません。それでも、紙の出版物が消えることはないでしょうし、電子書籍時代にも果たす役割があるはずです。

 今日取り上げるのは、文化面(21面)の「電子で広がる『個人出版』/出版社『中抜き』存在意義は」です。
 記事の内容は――ネット大手アマゾンの電子書籍ストア「小説・文芸」部門で、新人作家・藤井太洋さんのSF小説が人気作家を抑えて年間1位になった。出版社を通さないアマゾンの個人出版支援サービスで配信した。個人出版サービスは現在、アマゾン、楽天コボ、アップルなどが手がける。アマゾンが昨年10月に始めた「キンドル・ダイレクト・パブリッシング」は、出版の手続きが5分で済み、48時間以内に販売が始まり、費用はかからない。作者の取り分である印税率は、販売価格の35%か、条件を満たせば70%も選べ、一般に10%とされる紙の本と比べ破格の高さ。出版社の存在意義はどうなるのか。米国では、個人出版全体を一つの出版社とみなすと、電子書籍の売れ行きは大手出版社に続いて4位の規模。個人出版で100万部以上売り上げる作家も登場している。専門家は「校閲を含む品質保証」を個人出版の課題として挙げつつ、市場が大きくなれば自然と解決する可能性もあると指摘する。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 人気作家の小説、いまやクールジャパンの代名詞となったマンガ、華やかな雑誌などをつくる出版業界は、昔から学生に人気です。ただ、スマートフォン、タブレット端末の普及で、大きな時代の変わり目を迎えています。かつて2兆5000億円規模だった出版物(書籍・雑誌合計)市場は、2009年に2兆円を割り込み、2012年には1兆7238億円にまで縮小しました。そこで各社が期待するのが電子書籍市場の拡大です。ところが、その電子書籍でも出版社「中抜き」の個人出版が広がり始めたというのが、今日の記事です。

 紙の本は出版社がないとできません。作家が出版社に持ち込んだ作品、あるいは出版社の編集者が作家にどんな本を書いてもらうかを企画して依頼した原稿、これを編集者が吟味し、読者が読みやすいようにレイアウトし、装丁を決め、印刷して製本します。本というモノをつくるのですから、手間もコストもかかります。ところが、アマゾンの個人出版サービスは、時間もコストもほとんどかかりません。作家が出したいと思えば、すぐに配信できるのです。

 一方、記事の中で作家の藤井さんは「マンガを除く、日本の電子書籍の市場規模では、新人作家が個人出版だけで食べていくのは難しい。出版社からの本も出したい」と、紙の本へのこだわりを語っています。マンガ家の鈴木みそさんも「作品を描いている最中は真っ暗闇で舟をこいでいるようなもの。客観的に助言してくれる編集者は必要」と話しました。ここには出版社の存在意義が間違いなくあります。

 出版社はどこも電子書籍時代をどう生き残っていくか模索しています。面接でも話題に出るでしょう。出版業界を志す人は、こうした記事などで出版界の最新動向を抑えて、自分なりに考えをめぐらしてください。

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