2013年10月24日

地方銀行が日本のものづくりを救う

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「ものづくりの国」と言われてきた日本ですが、中国の台頭などで、大手電機メーカーから小さな部品工場まで経営は厳しさを増し、工場の海外移転も続きます。そんな中、地方銀行が地元の中小メーカーの経営改善、販路拡大を支援する新たな動きが始まりました。地元の大学と連携して改善指導するケースも。お金の貸し借りだけが銀行の仕事ではありません。中小企業のものづくりを支えることが地銀の生き残る道でもあるのです。

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「けいざい進話/再考ものづくり②/中小の再生 地銀の生き残る道」です。
 記事の内容は――松山市の地方銀行・伊予銀行本店に「ものづくり支援チーム」が誕生した。メーカーから転職してきた行員がもつノウハウを、伊予銀の取引先である中小企業の販路開拓や経営改善に役立てることをめざす。他の銀行員も東大ものづくり経営研究センターで改善指導の基本を学ぶ。中小企業と金融機関の関係は「天気の時は傘をさし、土砂降りになると取り上げる」と皮肉られるが、地方経済が厳しい時代にこれまでのやり方は通用しない。金融庁が地域金融機関に中小への相談機能の強化を求める監督指針を出したのも同じ認識からだ。このほか、山形県の米沢信用金庫(本店・米沢市)や荘内銀行(鶴岡市)も山形大と連携して中小企業の経営改善に乗り出す。米沢信金の理事長は「現場改善に関わらないと、取引先がどんどんなくなる」という。地方のものづくりを強くすることは、地域金融機関が生き残る道でもある。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 大ブームになったTBSのドラマ「半沢直樹」では、小さなネジ工場を営む半沢の父が東京中央銀行からの融資を打ち切られて自殺、これが全体のストーリーの伏線になっていました。まさに「天気の時は傘をさし……」を地でいく展開。その後、半沢はいいモノを作っている中小企業を助け、ネイルサロンを出すという女性の夢を応援し、傾いた老舗ホテルを救うために奔走します。銀行から電機メーカーに出向した半沢の同期が、経営改善に取り組むシーンもありました。

 あるとき半沢はこう言います。「親父を殺したのも銀行なら、うちの工場を救ってくれたのも銀行だったんだ。地元の小さな信金が俺とお袋を助けてくれた。たった一つのネジに可能性を感じて。親父は、いつも言ってた。こんなちっぽけなネジが日本を支えてる。あの小さな明かりの一つ一つの中に人がいる。俺はそういう人たちの力になれる銀行員になりたい」

 泣かせるセリフじゃないですか。銀行は、企業や個人から預かったお金を、必要としている企業などに貸して、その利子をもらうことで成り立っている金貸し業ですが、それだけではないんですね。放って置いてもきちんと利子を払える会社ばかりではありません。貸した相手がつぶれてしまっては元も子もないのですから、二人三脚で経営に関わり、時には厳しく改善を迫ることも必要です。昨日の朝刊に載った連載記事の第1回では、ものづくりをする中小企業には、まだまだ改善の余地があるという実例が書かれています。こうした日本の産業の構造や実態を知ることも、銀行志望を考えるときの一つの材料になるはずです。

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