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(写真はPIXTA)
人事担当「学生はいやかもしれないが、オヤカクしたくなる」
オヤカク、オヤオリという言葉は10年ほどまえに登場しましたが、記事によると同種の行為はバブル期からあったそうです。1989年発行の企業向け雑誌に「採用担当者が保護者にアプローチしていた」という記述がある、というマイナビのコメントを記事では紹介しています。当時といまの就活に共通するのは、学生有利の「売り手市場」だったこと。採用や内定者の囲い込みに企業が苦労したバブル期に保護者へのアプローチという手法が生まれ、コロナ禍を経て人手不足が顕在化しているいま、再び脚光を浴びているとみられます。
記事では「学生からしたらいやかもしれないが、オヤカクをしたくなる」という人事担当の20代女性のコメントも紹介されていました。人事採用歴2年目だそうですが、「(オヤカクをしたくなる)くらいみんな内定辞退するし、辞退されると社内の各所に頭を下げないといけない。学生を信じたいからこそ聞く『承諾するの?』には正直に答えてほしいと思う」といいます。手間もお金もかけて採用活動をしている企業からしたら、学生に逃げられてしまうのは痛手です。常見さんは記事で、内定辞退や早期離職を防ぐために「深い関係にある『親』は押さえるべきポイントの一つになっているのではないでしょうか」と語っています。
保護者世代は就活で苦労
また、常見さんは記事中で、保護者が子どもの就活に対し高い関心を持つようになっているとも指摘しています。
「いまの大学生の親はおおよそ50代で日本経済の酸いも甘いも経験している。僕もロスジェネ世代なので、10代後半でバブルがはじけ、信じていたものが崩れた経験を共有しています。就活で苦労した原体験のある人たちが親になっているので、余計に気になるのかもしれません」(記事より)
いまの大学生の保護者世代は、日本の景気が低迷し、労働問題が顕在化する過程を体験してきた世代です。バブル崩壊後、規制緩和がすすんで非正規雇用が増え、就職氷河期に社会に出た世代を指す「ロスジェネ(ロストジェネレーション)」という言葉も2007年に誕生します。2013年には「ブラック企業」という言葉が流行語大賞にノミネートされ、賃金や福利厚生が不十分にもかかわらず「やりがい」だけで仕事をさせる「やりがい搾取」という言葉も一般化しました。2000年には長時間労働のすえ電通の若手社員が自殺した事件で、最高裁がはじめて企業側の責任を認定し、「過労自殺」というキーワードが注目されるようになりました。2015年には同じく電通の新入女性社員が長時間労働のすえ自殺するなど、いまも過労死、過労自殺のニュースは絶えることはありません。保護者が子どもの就職先はどんなところか心配するのは、当然のこととも思います。
第二新卒でも「オヤカク」の動き
記事にあわせ、朝日新聞デジタルではオヤカクについて読者アンケートをしています(結果はこちらから)。「オヤカク」「オヤオリ」にどういう印象を持っていますか、という質問に対し(3つまで回答可)一番多かった答えは「子の就活に親がかかわるのは過保護だ」(49.9%)、ついで「成人しても親から自立していない若者が増えた」(36.5%)でしたが、「子の就職先を確認できて親としても安心できる」という回答も20.5%ありました。ある業界関係者は、オヤカクの動きは新卒採用だけでなく、いわゆる第二新卒市場でも起きているといいます。一度社会人を経験した人の転職でも、保護者からストップがかかることがあるのです。これも、保護者世代が働き方に対して敏感になってきている現れと感じます。
情報開示 足りていないからオヤカク広がる
常見陽平さんは、オヤカクが広がっている背景には人手不足にくわえ、企業側の情報開示が足りていないことも原因ではないかと指摘します。
「(オヤカクは本当に必要か、と問うことも必要でしょう。)学生が『ここで働きたい』とイメージでき、親も安心できるくらいの情報開示が、企業からなされていればいい話だからです。働き方改革関連法で長時間労働の是正やハラスメント防止などが様々な形で進み、労働環境の健全化は進んでいるはずなのですから」(記事より常見さんのコメント)
ただ、公開情報を見るだけである程度そこで働く実像が理解できるようになるのが本当の理想でしょうが、一朝一夕には実現はしないでしょう。企業の採用ウェブサイトや公式な情報で伝えられることには限りがあります。だからこそ、インターンシップや企業説明会で企業の本当の雰囲気をつかむことが大切になっているのです。そういう意味で現時点では、オヤオリを開いて学生だけでなく保護者にも自社の雰囲気を見せる姿勢のある企業は、ある意味で信頼度が高い、とも言えそうです。そう考えると、オヤオリやオヤカクが求められる流れは当面、続きそうです。
就活ニュースペーパーでも繰り返し言っていますが、就職について最終的に判断するのは自分です。保護者世代が最新の就活事情について詳しい可能性は低いでしょうし、企業の雰囲気、自分とマッチするかどうかという判断は、最終的には自分の感覚を信じるべきです。就職氷河期で苦労してきたであろう保護者が心配する理由も理解し、アドバイスは聞いたうえで、最後は自分でなるべく悔いのない判断をしてください。
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