2024年05月29日

「配属ガチャ」対応する企業続々、どんな動きがある?【就活イチ押しニュース】

テーマ:就活

 配属先や勤務先で会社人生が大きく変わってしまう「配属ガチャ」。売り手市場を背景に、希望する配属にならないと早期離職を選択する学生も増えているようで、学生とのミスマッチをなくすべくさまざまな取り組みをする企業が出てきています。最新の事情をチェックして、企業を選ぶ際の参考にしてください。(編集部・福井洋平)
(イラストはPIXTA)

住友商事、三井物産、丸紅が事前に配属先確約

 朝日新聞デジタルの「どうする『配属ガチャ』 総合商社の就職戦線に異変あり」(5月24日掲載)という記事では、就職先として人気が高い総合商社での配属ガチャ対策をまとめています。記事の概要を説明します。

・幅広い事業を手がける総合商社では、入社後に配属された分野で長く勤め、その道のプロになることが求められてきました。会社員人生を左右する最初の配属は、会社が適性をみて決めてきました。ただ、近年は事前に配属先を確約し、採用する動きが広がっています。

住友商事……2025卒採用から、配属先を採用時に確約する「WILL選考」を導入。採用予定約100人のうち3割程度を対象とする予定で、約30部署から選べます。大学などでの専攻分野と関係なく、その配属先で働きたいという意志(WILL)があれば応募可能です。住友商事ウェブサイトを見ると、「エネルギー鋼管」「自動車製造・エンジニアリング」「航空」「不動産」といった部署名がならんでいます。

三井物産……今年春入社の新卒採用から、志望する分野を選べる「部門別選考」を、通常選考と併用する形で導入。応募者には志望する分野でのインターンシップ(就業体験)を必須にして、仕事への理解を深めてもらいます。三井物産の2025卒新卒採用サイト(募集はすでに終了)を見ると、初期配属先のセグメント・部門が決められる分野別インターンシップとして、「DX Internship」「Legal Internship」「CFO Internship」などが設定されていました。

丸紅……2021年度入社から、事前に配属先を決める「キャリアビジョン採用」を続けています。丸紅の2025卒新卒採用サイト(募集はすでに終了)では、「フォレストプロダクツ本部」「化学品本部」「経理部」など約20の部署名があげられています。

(写真・入社式で新入社員にあいさつする住友商事の上野真吾社長=2024年4月1日/朝日新聞社)

伊藤忠商事、三菱商事は確約なし

 一方で、こういった配属先確約をしない採用をしている総合商社もあります。

伊藤忠商事……1998年度から事前に配属部門を決める「先決め採用」をしてきたが、応募者が減少傾向だったため、2020年度入社から通常選考だけに戻しました。学生からは「商社の仕事は多岐にわたるため、希望部門を絞りきれない」「配属は会社が自分の適性を見て決めてほしい」といった声もあったそうです。

三菱商事……通常選考のみを続けています。採用担当者は「入社前にやりたいことが明確であればいいが、学生の段階ではまだ見えていないことも多い」と説明しています。入社後一定の経験を積んでからであれば、以前よりも希望する他部署に移りやすくなっているそうです。

日立は10年以上かけてジョブ型制度浸透させる

 総合商社以外でも、「配属ガチャ」対策をすすめている企業が出てきています。たとえば三菱電機は2024年卒採用から、入社時の配属先職種をあらかじめ決める「職種確約コース」を新設しました。キリンHDは、2024年卒採用からコース別採用の選択肢を増やし、2025卒では10コースを用意するなど、入社後のキャリアをよりクリアにして学生に訴求しようしています。

 配属ガチャは、日本の企業の多くが採用する「メンバーシップ型雇用」特有の問題です。いわゆる「人に仕事をつける」制度で、定年まで一つの企業で働く終身雇用制が一般的だったときは大きなメリットもありました。いま終身雇用制は少しずつ崩れ、転職も一般的になりつつあります。そのため、仕事内容を明確にして人を割り当て、内容等に応じて待遇も決める「ジョブ型」雇用の導入検討を経団連は求めています。ジョブ型では、配属ガチャはほぼ起きないでしょう。

 ただ、ジョブ型雇用が浸透するにはまさに今みなさんが直面している「新卒一括採用」や、多くの会社が採用している定年制など、日本で一般的な人事制度をすべて見直していく必要があります。日立製作所は「ジョブ型人材マネジメント」を掲げて人事制度を改革し、新卒採用に関してもほぼ職種が決まった形で入社するようになっています。ただ、日立製作所の人事制度改革は10年以上かけて進められてきたものです。ジョブ型が一般化し、配属ガチャという言葉がなくなるのは日本では当面先と考えたほうがよさそうです。その過渡期として、上記のように自分のファーストキャリアを採用時に選択できる会社が今後増えていくかもしれません。
(写真・日立製作所の看板=東京都千代田区/朝日新聞社)

変化に対応できるスキルも今後重要に

 在学中に研究にうちこんだり、法律や財務を学んで高い専門知識を身につけたりした場合は、社会人になってからの職種を絞り込みやすいし、全く畑違いの部署にいくような配属ガチャは避けられるなら避けたいでしょう。ただ、そこまで高い専門性をもっていない場合、就活時は無理やりに職種を狭めず仕事についてから自分のすすみたい道をみつけていくことも十分合理的だと思います。自分の希望と現状の自分が持っているスキルに応じて、会社の制度をチェックしていく必要があります。

 配属によって会社員人生が変わることはあります。ただ、その変化はほとんどが見通せないものです。会社の花形と思った部署でも経済状況が一変してリストラ筆頭部署になることもありますし、その逆のケースもあります。そもそも、職場環境は上司や同僚によっても大きく左右されるものです。入社前から配属ガチャを過剰に恐れるよりは、意に沿わない配属だったとしても自分の幅を広げるチャンスと思って会社に飛び込むほうが、変化の激しい時代を生き残るスキルが身につくかもしれません。自分がやりたいことは何なのか就活のなかでしっかり考えて、よりよい選択につなげてください。

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