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そのなかでも、選考が進んでいる段階で企業側が大学推薦状をつけるように要求する「後付け推薦」は、昨年立教大学がウェブサイトに(理系の学校推薦選考の応募者以外は)「学生の『職業選択の自由』を妨げるおそれがあるため、発行いたしません」と明記し、後付け推薦を拒否したことで話題となりました。ですがその後も後付け推薦を求める企業はなくならず、さらに別の手口も登場しているようです。対策を考えました。(編集部・福井洋平)
(写真はPIXTA)
「後付け推薦」断る大学も
就活ニュースペーパーは3月にも、オワハラと後付け推薦についてとりあげています(「内定もらっても「オワハラ」が心配…… どう対応するのが正解?【就活イチ押しニュース】」)。改めて後付け推薦について説明します。就活での推薦状は、選考を受ける企業に対して学校や教授から出してもらうものです。理系の就活では企業が専門的な人材を確保するため、学校や研究室に対して枠を割り当て、そこから学生を推薦してもらうことが一般的に行われています。いま問題となっている「後付け推薦」は文系や理系を問わず、選考がすすみ内定(内々定)が出たあとで企業が学生に推薦状を提出させることです。
大学や教授から学生の学業への取り組みなどについてお墨付きをもらう、と考えれば悪い話ではないようにも思いますが、内定が出た「後」に推薦状を出させるのはそもそも意味があるのでしょうか。またゼミでかなり教授と学生に密接な関係ができる理系と違い、文系の場合は学生数も多く、推薦できるほどきめ細かく学生を指導できていないケースもあります。結局のところ、後付け推薦は学生の内定辞退を防ぐためのツールとなっているのです。「内定(内々定)辞退の抑止力として使用されていることもあり」後付け推薦は出さないと宣言した立教大学のほか、中央大学も自校のウェブサイトで「自由応募の学生に対して学校推薦書(学長名)の発行は行わないこととする」と後付け推薦拒否の姿勢を見せています。
(写真・立教大学/朝日新聞社)
推薦状に学生拘束する力なくなっている
では、今年(2025年卒対象)の就活では後付け推薦はなくなっているでしょうか。立教大学キャリアセンターによると、いまでも後付け推薦は「大幅には減っていない印象」といいます。
「学生も推薦状を求められるのが当たり前のようになっていて、キャリアセンターに『知っている先生がいないけど、どうしたらいいでしょうか』と聞いてくる学生もいます。一般的になりすぎて、学生を拘束する力も弱まっているように感じます」
推薦状を提出した企業でも、気にせず辞退する学生が出てきている、といいます。大学側から推薦状は出さないと通告すると引き下がる企業もあります。
「引き下がるくらいなら、最初から要求しなければいいと思います」(立教大)
内々定の前提は「他企業の内々定を持っていない」こと
ただ、いまは昨年話題になったこともあってあからさまに「推薦状」を求めるのではなく、別の方法で学生を拘束しようとする企業が出てきているといいます。「内定辞退も増えているので、手をかえ品をかえ学生を確保する手法が巧妙化していると感じます」(立教大)
たとえば、内定承諾書を書かせる際にあわせて「雇用契約書」を結ばせる、という手法です。さすがに雇用契約書を結ぶのは不安に思い、キャリアセンターに相談にくる学生もいると立教大学はいいます。
「以前は年間1件程度の相談でしたが、今年は3~5件くらい相談があります」(立教大)
推薦状や内定承諾書の最後の一文に「今後は他社の選考は一切受けないことを誓います」「辞退した場合は大学に報告します」といったおどしのような文言をつけてくる企業もあります。
「大手食品メーカーで、内々定通知書の最後に『選考中の企業、あるいは他企業の内々定をお持ちでないことが、内々定の前提となります』という記載がありました。人気のコンサルタントで、ほかの企業を受けないように入社誓約書を出させるところもあります」(立教大)
(写真はPIXTA)
ESに大学職員の名前を書かせる
さらにはエントリーシートの段階で、大学のキャリアセンター職員の名前を書かせる、という企業もあったそうです。これも辞退をしにくくするための方策なのでしょうが、
「何の意味があるのか、本当に狡猾だなと思いました」(立教大)
ある大手企業は、選考の段階で「一般応募」か「推薦応募」を選ばせているそうです。そのため推薦状を求める学生がキャリアセンターにたくさんやってきて、しかも内定したら断りづらいという、大学にしてみれば大変迷惑なやり方といいます。
「こんなやり方を全部の企業がやってきたら、大学はパンクしてしまいます。学生には、その企業が第一志望でなければ一般応募で選考するように言っています」(立教大)
日本独特の「内定」制度でオワハラなくならず
千葉商科大准教授で働き方評論家の常見陽平さんによると、ある大手企業は推薦状をテンプレート化し、学生が名前の欄を埋めればいいという書類を渡してくるそうです。「さすがにそのパターンは初耳でした。内定を防止するために推薦状を出させているとしか思えないですよね」(常見さん)
常見さんが勤める大学では推薦状を要求するという露骨なケースは減っているようですが、オワハラそのものはなくなっていないといいます。
「内定承諾書を早く出してほしいとプレッシャーをかけたり、あとは内定者インターンや内定者アルバイトなどをすすめて、会社につなぎとめようとしたり、内定者へのグリップが巧妙になっている気がします。また、採用をしている会社ではなく、選考事務の一部を請け負っている会社が事務的に選考辞退を学生に求めるケースもあるようです」
オワハラが起こる背景には、日本独特の「内定」という仕組みもあると常見さんは言います。学生側は辞退が実質的に自由にできる一方で会社側は取り消しが非常に難しいため、会社側は学生に逃げられないよういろいろ算段する必要が出てきてしまうのです。そのうえいまは売り手市場化が加速し、就活の早期化で内定者をつなぎとめる期間も長くなり、内定者へのグリップが熾烈になっています。
(写真はPIXTA)
内定承諾書に拘束力はなし
対策はどのようにすればいいでしょうか。以前の記事でも強調しましたが、まず、知識を得ることです。・オワハラは政府が防止を徹底するよう呼びかけている
・内々定を出すかわりに他社の就活をやめるよう強要することは、オワハラにあたる
・「後付け推薦」の要求は、オワハラにあたる
・「内定承諾書」の要求は、オワハラにあたる
・「内定承諾書」には、拘束力はない
・「雇用契約書」を結んだ場合も、入社する2週間前までは破棄できる
そうはいっても、内定を出す際に「ほかの企業は断ってね」とプレッシャーをかけられたときに、「まだ断れません」と伝えるのは簡単ではないでしょう。
「正直に自分の就活状況を話し、いついつの時期まで承諾するのを待って下さいというのが理想ですが、プレッシャーをかけてくる人事もいます。志望度が高い企業の場合、状況によっては本当のことが言えないということもしょうがない、と思いますね」(立教大)
(写真はPIXTA)
内定企業をホールドするのはなるべく1社に
一方で、企業も思いを込めて内定(内々定)を出しているということを、忘れないようにしてください。立教大でも、学生が内々定を辞退する連絡がいやで企業からの連絡を全部無視し、大学が企業側から問い合わせを受けるケースがままあります。
「学生には職業選択の自由があり、企業の言いなりになる必要はありません。一方で、傲慢な態度になってもいけません。対応は誠実にしてください」(立教大)
特に、内々定をホールドするのは1社だけにしたほうがいい、とも伝えているそうです。
「断るのは早いほうがいいので、2社以上ホールドせず、つねにどちらか一方に決めてほしいとガイダンスで伝えています」(立教大)
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