ニュースのポイント
福島の原発事故後、ソフトバンクの孫正義社長が打ち出した「アジアスーパーグリッド」が動き始めました。モンゴルの風力や太陽光、ロシアの水力といった再生可能エネルギーを、国境を越えた送電線で日本に持ってこようという壮大な構想です。ただ中国、韓国との信頼関係や、電力会社による国内送電網の独占体制などハードルは多く、実現は容易ではなさそうです。
今日取り上げるのは、経済面(6面)の「けいざい新話/孫正義の3・11/電力の風 モンゴルから/アジア送電網 実現への野望」です。
記事の内容は――「アジアスーパーグリッド」の具体化に向けて、ソフトバンク子会社とモンゴルの投資会社がつくった合弁会社が、ゴビ砂漠で風や日照量の調査を進める。合弁会社は、ゴビ砂漠で、東京都の面積をしのぐ約22万ヘクタールの遊休地の賃借権を政府から取得した。ここで1000万~700万キロワット、原発10~7基分の発電ができるという。だが、最大のネックは送電網の整備。モンゴルで発電した電気を中国、韓国を経由して九州北部に送る想定のため、中韓両国との信頼関係が必要だ。国内の送電網が地域ごとに電力会社が独占していることも「壁」だ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
孫社長は、朝日新聞のインタビューに「原発に死ぬまで反対という気持ちは、いまも変わらない」としたうえで、「事故により『安全・安心・安定』という原発の神話が崩れた。代わりの発電手段として、再生可能エネルギーを増やさないといけない。我々はその一翼を担うべきだ、と考えた」と語りました。再生可能エネルギーに対する強い思いが伝わってきます。原発再稼働にも反対するなど、経済界では異端の存在です。言うだけでなく、すぐに行動に移すのが孫社長のすごいところです。「自然エネルギー財団」をつくり、全国各地でメガソーラー設置を進めています。アジアスーパーグリッド構想は壮大すぎて実現可能性を疑問視する見方もありますが、政界に、中韓両国政府に、精力的に働きかけを続けています。孫社長の思いと行動を、この連載記事で知ってください。
再生可能エネルギーを電力会社に一定の価格で買い取ってもらえる新制度が昨年始まり、今年5月までの11カ月間に全国で計2200万キロワット分の事業が認定されました。メガソーラーなどの「非住宅太陽光発電」が1900万キロワット余りを占めます。まだ稼働は1割未満ですし、再生可能エネルギーの普及は容易ではありませんが、後戻りさせてはいけません。新しい成長産業でもあります。事業に取り組んでいる企業を調べてみましょう。
「発送電分離」に向け電力システム改革を進める電気事業法改正案の行方からも目を離せません。先の通常国会でいったん廃案になった法案は秋の臨時国会にも再提出される見通しですが、分離に慎重な電力会社や自民党内の抵抗も予想されます。法案関連の記事に注目してください。
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