2013年09月05日

朝日の「手抜き除染」に新聞協会賞 調査報道ってなに?

テーマ:社会

ニュースのポイント

 朝日新聞の「手抜き除染」のスクープ報道が、今年度の新聞協会賞を受賞しました。この報道は、福島第一原発周辺の除染現場で手抜き作業が横行している実態を、記者が張り込んで報じた調査報道です。調査報道は、新聞が報じなければ埋もれたままの事件や社会事象を独自に取材して報道することで、ジャーナリズムの原点とも言えます。

 今日取り上げるのは、1面の「本社に新聞協会賞/『手抜き除染』調査報道」と17面の「現場に張り込み130時間」です。
 記事の内容は――日本新聞協会は2013年度の新聞協会賞を発表、朝日新聞の「手抜き除染」が編集部門で受賞した。このスクープは、記者4人が計130時間、福島第一原発周辺の除染現場に張り込み、作業員が汚染された草や水を回収せずに捨てる様子を11カ所で撮影、作業員の証言も集めて1月4日付朝刊を皮切りに報道した。「政府が復興の柱と位置づける公共事業の実態と、本来の在り方を社会に問いかけた優れた調査報道」と評価された。編集部門ではほかに、共同通信社の「柔道女子代表の暴力・パワーハラスメント問題のスクープ」などが受賞した。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 スクープや特ダネと呼ばれる報道は、大きく二つに分けられます。一つは、政府や企業などがいずれ発表する情報を、いち早く報じるもの。大臣や社長の人事や、新たな政策、方針などを世の中に知らせます。もう一つは、記者がつかんだ情報や問題意識をもとに、ある事象を深く掘り下げて独自に調査し、報道機関の責任で公表するもので、これを調査報道といいます。報道しなければ闇に葬り去られていたことを表に出すものです。調査報道には、人手も時間もかかりますし、報じる側の責任も重大ですが、その分、意義深い報道とも言えます。

 新聞協会賞を2012年度に受賞した長期連載企画「プロメテウスの罠(わな)」(今も3面で連載中)、2010年度に受賞した「大阪地検特捜部の主任検事による押収資料改ざん事件の特報及び関連報道」も、調査報道によるものでした。古くは、1988年に発覚した「リクルート事件」も、朝日新聞による調査報道によって明らかになりました。この事件は、川崎市の助役がリクルート社関連の未公開株を創業者の江副浩正社長から受け取っていたもので、その後、政界に広がり、竹下内閣の退陣にもつながった大疑獄事件です。警察が立件困難として捜査をあきらめた事件を、横浜支局の若い記者たちが「濡れ手で粟(あわ)はおかしい」として、独自に取材しました。「調査報道の金字塔(きんじとう)」とも称されます。

 ネット時代になり、役所などの発表内容は、誰でもホームページで見られるようになりました。これからは、発表されない事象を報じる調査報道がますます求められます。朝日新聞は、調査報道のための「特別報道部」という部署を設けるなど、とても力を入れています。これからも埋もれている様々な問題を掘り起こして伝えていきます。報道機関をめざす人はもちろん、そうでないみなさんも、朝日新聞の調査報道に注目してください。

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