ニュースのポイント
コンプライアンス、ガバナンス、コンテンツ……。外来語の多用の是非が話題になっています。「美しい日本語を守れ」との主張はもっともですが、就活でみなさんが話す相手は、ビジネスで日々外来語を多用している企業です。相手の言葉を理解できなくては会話も成り立ちません。知らないカタカナ語に出合ったら、まずはその言葉を調べ、その企業にとってどんな意味があるのか考えてみてください。
今日取り上げるのは、オピニオン面(13面)の「耕論/カタカナ語の増殖」です。
記事の内容は――NHKで分かりにくい外来語が多用されたとして、精神的苦痛を訴えた男性がいた。世にあふれる外来語について、3人の論客が語った。「フランス語の未来」協会長のアルベール・サロンさんは、米国主導で英語が世界の言語の覇権を握ることに反対する活動をしており、過剰な英語化が進むと考え方も単一になり無味乾燥になると主張。筑波大教授の津田幸男さんは、日本語防衛論を唱えている。氾濫(はんらん)の元凶は、企業、官公庁、知識人・学者、報道機関の4者。言い換えを奨励し、それでもだめなら「日本語保護法」などの法律が必要と訴える。クリエーティブディレクターの岡康道さんは、広告業界には英語に由来する言葉があふれているが、出自は外国語でも「僕にとっては純然たる日本語の一部」と言う。「freedom」を訳した「自由」がずっと使われているように言葉は日々ふるいにかけられる。ダメなものは消え魅力的なものは残るのであり、権力や権威で言葉の使い方を統制するのはよくない。カタカナ語も新しい日本語表現として面白がって使えばいいと語った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
津田さんから「猛省すべきだ」と指摘された報道機関の一員として、安易に外来語を使わず、美しい日本語を守る立場にあることを心していかなければと思いました。
ただ、就活となると話は別です。みなさんが目指すのは、「元凶」の一つに挙げられた企業です。津田さんは「商品名や社名、宣伝、看板に外来語が多すぎる」と批判しますが、ここではそれが良いことかどうかは置きましょう。大事なのは、企業は日々外来語を多用していて、みなさんが就活で話をする相手は企業人であるということです。企業が外来語を多用する理由は、ビジネスは国境を越えて行われ、欧米発のビジネスが多いことなどいくつも考えられますが、常に新しい事業、商品、サービスの展開を考えるのがビジネスの本質である以上、当然のことなのかもしれません。経済、交通、電話、郵便、鉄道、商業、銀行、保険……。いずれも明治期に福沢諭吉や森鷗外ら知識人が知恵を絞って生み出した日本語です。しかし、新しい日本語を生み出さないとビジネスに踏み出せないとしたら、きっと商機を逃してしまうでしょう。
「ユニバーサルデザイン」を売りにする企業、「ダイバーシティー」を理念に掲げる企業があったとします。言葉の意味を知らなければ、その企業のことはわかりませんよね。こうした外来語が、企業の本質を表しているかもしれません。ある業界、企業について調べていて、あるいはOB・OG訪問などで聞き慣れない外来語を耳にしたら、朝日新聞社が運営する用語解説サイト「コトバンク」で調べてみましょう。そして、岡さんが言うように、外来語を新しい日本語として面白がって使ってみてください。知ったかぶりをしたり、誤った意味で使ったりすると、恥をかきますよ。
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