(写真は、1兆円を超す純利益を見込むと発表した三菱商事の中西勝也社長=11月8日、東京・丸の内)
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(写真は、1兆円を超す純利益を見込むと発表した三菱商事の中西勝也社長=11月8日、東京・丸の内)
円安の恩恵
【総合商社】資源・エネルギー高に円安が加わり、過去最高益を更新する企業が続出。中間決算では大手7社のうち、伊藤忠商事を除く6社が純利益で過去最高を更新し、2023年3月期も最高益を見込んでいます。中でも三菱商事は、通期で純利益が1兆円を超える見通しを明らかにしました。商社は海外で手広くビジネスを展開しているため、外貨で稼いだお金が円換算で膨らみました。権益を確保する原料炭や鉄鉱石などの資源、ウクライナ危機で拍車がかかったエネルギーの価格高騰も業績を押し上げました。
コロナ禍の打撃から改善
【航空】ANAホールディングスは純損益が195億円の黒字。中間決算としては3年ぶりに黒字に転換しました。水際対策の緩和や国内でのレジャー客の回復で、旅客数は国際線が前年同期の約5.1倍、国内線が約2.1倍に増えました。国際線は当初の想定を上回るペースで回復し、2023年3月期末にはコロナ前の60%まで戻るとみています。日本航空(JAL)は純損益の赤字を前年同期の約1000億円から21億円へと大きく改善しました。急速に進む円安は訪日客の増加につながる一方、燃油費が上がるデメリットもあります。
【JR】JR東日本、JR東海、JR西日本の3社の純損益は271億~969億円の黒字で、こちらも3年ぶりです。JR東の鉄道事業での収入はコロナ前の7割の水準まで戻りました。各社が運営する駅周辺の商業施設やホテルなどの業績も持ち直してきています。国の観光支援策「全国旅行支援」などが追い風ですが、先行きは感染状況次第の面も。
(写真は、ANAホールディングス傘下の全日本空輸〈右〉と日本航空の機体=羽田空港)
自動車はまだら模様
【自動車】これまで円安の恩恵を大きく受けてきた代表格の自動車業界の業績はまだら模様です。トヨタ自動車は増収減益。円安の利益を、鉄やアルミなど原材料価格の高騰が打ち消しました。日産自動車は、ロシア市場からの撤退による当別損失が響き、純利益が6割減りましたが、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比12.6%増えました。米国が主力のスバルは純利益が7割増、インドでの販売が回復したスズキも14.5%増でした。三菱自動車の純利益は過去最高を記録しました。2023年3月期については、国内生産比率が高いマツダが純利益予想を500億円引き上げるなど6社が上方修正しましたが、トヨタは円安による原材料高が重しになり引き上げませんでした。今後の焦点は半導体不足で鈍った生産ペースを回復できるか。トヨタは2023年3月期の世界生産計画を従来の970万台から920万台に。日産は世界販売見通しを30万台、ホンダも10万台引き下げました。
【電気】ソニーグループは、売上高と営業利益がいずれも過去最高に。コロナ禍の巣ごもり需要で伸びてきたゲーム事業が減速する一方、音楽や半導体事業は業績が好調で円安の追い風も受けました。音楽事業はネットのストリーミング配信、半導体事業はスマートフォンのカメラに使う半導体の売り上げが好調でした。三菱電機の売上高は中間決算で過去最高でしたが、純利益は28.6%減。電子部品の不足や物流費、素材の高騰などで費用が増えたためです。
内需産業はコスト高で収益悪化
【電力】国際的な資源高と円安による燃料の輸入価格の上昇が直撃し、大手10社のうち四国電力を除く9社で純損益が赤字で、東日本大震災後の原発停止で8社が赤字となった2012年9月中間決算を上回りました。各社は電気料金の値上げを急ぎ、燃料高の負担を利用者に転嫁する方針です。ウクライナ危機や急速な円安で燃料コストは高止まりしており、2023年3月期の業績予想は東京・九州電を除く8社が公表しましたが、全社が赤字です。
【食品】業績予想の下方修正が相次いでいます。ハウス食品グループ本社は原材料価格の高騰に円安が重しとなり、2023年3月期の営業利益の見通しを下げました。8月に値上げしましたが、浦上博史社長は「価格改定では、価格高騰をすべて吸収することはできない」と語っています。
【建設】鉄骨などの建設資材の高騰に円安が拍車をかけています。大林組は2023年3月期の業績予想で、5月の公表分から純利益を50億円(6.6%)下方修正しました。
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